「ここにいるよ」 第9話三男は、家族の声を聞きながらゆっくり階段を降りる。父の低い声。母の明るい声。長男の適当な声。そして――真帆の、静かで落ち着いた声。三男(心の声)(ああ、今日も“いつもの朝”だ)真帆はトーストをかじりながら、母の天然発言に淡々とツッコミを入れている。三男はその横顔を見ながら思う。(姉ちゃんって、家族の中心にいるのに、中心にいるって気づかれにくいよな)父は厳格だが、真帆には甘い。母は天然だが、真帆には頼る。長男は楽天家だが、真帆には懐く。三男は――ただ、静かに見ている。(俺は、姉ちゃんの“影”を見てるだけだ)友人たちが騒いでいる。三男は弁当を食べながら、ふとスマホを見る。《今日、帰り遅くなる》真帆からの短いメッセージ。三男(心の声)(こういう連絡だけは忘れないんだよな)友人A「三男ってさ、姉ちゃんのこと好きすぎじゃね?」三男「普通」友人B「いや普通じゃないだろ」三男「普通」友人たちは笑うが、三男は本気でそう思っている。(姉ちゃんは、俺の“基準”なんだよ)真帆が出てくるのを、三男は自転車に寄りかかって待っている。理由は聞かれたら困る。ただ、待ってしまう。真帆「……また来てる」三男「迎えに行くって言った」真帆「言ってないよ」三男「俺の中で言った」真帆は呆れたようにため息をつく。でも、その目は少しだけ柔らかい。(ああ、今日も“いつもの姉ちゃん”だ)二人の影が長く伸びる。重なったり、離れたり。三男は、真帆の歩幅に合わせて歩く。真帆「ねぇ、三男」三男「ん」真帆「私って……存在感薄い?」三男「薄くない」即答だった。真帆「……なんでそんなに言い切れるの」三男「俺には、ちゃんと見えるから」真帆は少しだけ黙る。三男(心の声)(姉ちゃんは、“気づく人にだけ届く存在感”なんだよ)でも、それを言葉にすると照れくさい。だから三男は、ただ静かに歩く。真帆が、自分の横にいることを確かめるように。机の上には、真帆が昔描いた“家族の似顔絵”。三男だけ、妙に丁寧に描かれている。三男(心の声)(姉ちゃんは、俺を見てくれてた。だから今度は、俺が姉ちゃんを見る番なんだ)窓の外、真帆の部屋の灯りが静かに揺れている。三男はふっと笑う。(姉ちゃん。俺はずっと、ここにいるよ)声にはしない。でも、確かにそう思っていた。父が咳払いをして、厳かに宣言する。父「これより第二回家族会議を始める」母「はじまるのね〜」長男「議題は?」三男「姉ちゃんの忘れ物?」真帆「なんで毎回私が原因前提なの」父は腕を組んで言う。父「議題は……特にない」真帆「ないの!?」長男「父さん、会議の意味とは」母「まぁまぁ、集まることに意味があるのよ〜」三男「母さんの言葉、今日ちょっと深い」父「真帆。最近どうだ」真帆「ざっくりしすぎ」母「元気?ちゃんと食べてる?」長男「恋してる?」真帆「なんで恋の話になるの」三男「姉ちゃんは恋愛興味あるよ」真帆「お前は黙れ」父がうんうんと頷く。父「真帆はもっと自己主張していい」母「そうそう〜、もっと“ここにいるよ”って言っていいのよ」長男「でも真帆って、静かにいるのが似合うよね」三男「うん。静かだけど、ちゃんと見える」真帆「……なんか褒められてるのかよくわからない」長男「じゃあさ、家族の改善点とか話す?」母「私は天然を直した方がいい?」父「直らん」母「即答」三男「兄ちゃんはもっと計画性を」長男「それは無理」真帆「開き直るな」父がふと真面目な顔になる。父「……実は、私にも改善点がある」家族「えっ」父「真帆に甘すぎると言われた」真帆「言ってないよ!?」長男「父さん、甘いよ」母「甘いわね〜」三男「甘い」父「全会一致か……」真帆「なんで私のせいみたいになってるの」母「ところで今日の夕飯どうする?」長男「鍋がいい」父「肉がいい」三男「魚がいい」真帆「意見バラバラすぎ」父「よし、投票だ」長男「民主主義」母「私はデザートがいい」真帆「議題から離れないで」結局――三男が静かに言う。三男「姉ちゃんの食べたいものでいいよ」父「それが良い」母「それが良いわ〜」長男「それが良いね」真帆「なんで急に私に丸投げなの」三男「姉ちゃんが決めると、なんか落ち着くから」父「うむ」母「わかる〜」長男「わかる」真帆「……そんな理由?」でも、悪い気はしない。父「では、第二回家族会議を締める」母「結局、何も決まってないわね〜」長男「まぁ、家族会議ってそんなもんでしょ」三男「姉ちゃんが笑ってたから、それでいい」真帆「……っ、なんでそういうこと言うの」父が最後に静かに言う。父「真帆。お前がここにいるだけで、家族はまとまる」母「そうそう〜」長男「空気清浄機だからね」真帆「最後の一言いらない」家族の笑い声が、夜のリビングにまた広がった。真帆が靴を履いていると、同じクラスの男子・佐伯(さえき)が声をかけてくる。佐伯「小川さん、今日ちょっと話せる?」真帆「え、私?」佐伯「うん。あの……最近、よく笑うようになったよね」真帆「……そうかな」佐伯「うん。なんか、いいなって思って」真帆は一瞬だけ固まる。(……え、これって)佐伯「また話したいな。じゃあね」軽く手を振って去っていく佐伯。真帆は胸の奥が少しだけ熱くなる。(……なんか、変な感じ)その様子を、校門の外から三男が見ていた。三男(心の声)(……誰だ、あいつ)真帆が佐伯と話しているのを見た瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。(姉ちゃんが笑ってた。でも……なんか、違う)真帆が三男の方へ歩いてくる。真帆「ごめん、待った?」三男「……ううん」声が少しだけ硬い。自分でも気づく。真帆「どうしたの?」三男「別に」(別に、じゃない)三男は自分の中に生まれた“正体不明の感情”に戸惑っていた。玄関を開けた瞬間、父の声が響く。父「第三回家族会議を始める!」真帆「また!?」長男「今日は議題あるの?」母「あるのよ〜」三男「嫌な予感しかしない」母が紙を掲げる。母「議題:真帆ちゃんの恋愛について」真帆「やめて!!」三男「……っ」三男の心臓が跳ねる。父「真帆。誰か気になる相手はいるのか」真帆「いないってば!」長男「今日、男子と話してたよね?」真帆「なんで知ってるの!?」母「三男くんが言ってたわよ〜」真帆「三男!?」三男「……いや、別に……」真帆「なんで言うの!」三男「……なんとなく」父が腕を組む。父「その男子はどんなやつだ」真帆「普通の人だよ!」長男「普通って一番怪しい」母「真帆ちゃん、顔赤い〜」真帆「うるさい!」三男は黙っている。でも、手が少しだけ握られている。父「三男。お前はどう思う」三男「……俺?」真帆も三男を見る。三男は目をそらす。三男「……姉ちゃんは……」言葉が喉で止まる。(言いたくない。でも、言わないと苦しい)三男「……姉ちゃんは、誰かに雑に扱われるような人じゃない」家族が静かになる。三男「ちゃんと見てくれる人じゃないと、……嫌だ」真帆「……三男?」三男は続ける。三男「今日の人がどうとかじゃなくて……姉ちゃんが笑ってるの、俺は……ちゃんと見てたいから」真帆の胸が熱くなる。父「……三男」母「……あら〜」長男「……これは、恋だね」真帆「黙れ!!」三男の顔が真っ赤になる。三男「ち、違う……違わないけど……違う……」真帆「どっちなの!?」父「結論。真帆の恋愛は――」母「家族全員で見守る!」長男「監視する!」真帆「監視はやめて!」三男「……俺は、見守る」真帆は三男を見る。真帆「……ありがと」三男「……うん」二人の間に、家族には見えない“静かな線”が生まれた。真帆がリビングに入ると、家族全員が妙にニヤニヤしている。真帆「……何その顔」母「真帆ちゃん、昨日の男の子〜」真帆「やめて」長男「佐伯くんだっけ?爽やか系だったね」真帆「なんで知ってるの」父「三男が報告した」真帆「三男!!」三男は目をそらす。三男「……別に、言うつもりじゃなかったけど……」長男「顔に全部書いてあったよ」母「三男くん、わかりやすい〜」父「三男、お前はもっとポーカーフェイスを学べ」真帆「なんで私の恋愛で三男が怒られてるの」教室に入った瞬間、ゆかりが飛んでくる。ゆかり「真帆!!昨日の男子誰!!」真帆「なんで知ってるの!?」姫「三男くんの表情が“恋の気配”を示していた」真帆「三男の表情で判断するな!」ゆかりは机を叩く。ゆかり「真帆、ついに恋愛フラグ立ったんだね!!」真帆「立ってない!」姫「立っている」真帆「姫まで!」ゆかりがスマホを構える。ゆかり「で、どんな人?どこが好き?いつから?」真帆「質問攻めやめて!!」姫は冷静にメモを取り始める。姫「真帆の恋愛傾向、データ化しておく」真帆「やめろ!!」真帆が校門を出ると、三男が待っている。でも今日は、いつもより少し距離がある。真帆「……迎えに来たの?」三男「……うん」歩き出す二人。沈黙が、いつもより重い。真帆「三男、なんか変だよ」三男「……別に」(別に、じゃない)真帆「昨日のこと、怒ってる?」三男「怒ってない」(怒ってないけど……苦しい)三男「……姉ちゃんが誰と話してもいいけど」真帆「うん」三男「……なんか、嫌だった」真帆は足を止める。真帆「……三男?」三男「わかんない。でも……姉ちゃんが誰かに笑ってるの、見たくない時がある」真帆の胸が少しだけ熱くなる。家に帰ると、父が立っていた。父「第三回家族会議・恋愛特化編を始める!」真帆「また!?」母「今日は“真帆ちゃんの恋愛を応援する会”よ〜」長男「俺は情報収集担当」三男「……やめて」父が真帆に向き直る。父「真帆。あの男子はどんなやつだ」真帆「普通の人だよ!」長男「普通って一番怪しい」母「真帆ちゃん、顔赤い〜」真帆「うるさい!」三男は黙っている。でも、拳がぎゅっと握られている。父「三男。お前はどう思う」三男「……姉ちゃんが笑ってるなら……いいと思う」真帆「三男……」長男「でも顔は“嫌です”って言ってる」三男「言ってない」母「言ってる〜」父「言っているな」三男「……っ」ピンポーン。真帆「え、誰?」ゆかり「真帆〜!恋愛会議してるって聞いた!」姫「参加する」真帆「なんで来るの!!」父「よし、拡大会議だ」長男「戦力増えた」母「賑やか〜」三男「……最悪だ」ゆかり「真帆、佐伯くんのどこが好きなの?」真帆「好きじゃない!!」姫「では、三男くんの反応はどう分析する?」三男「分析するな!!」家族+友人の圧が真帆に襲いかかる。真帆「もうやめて!!」騒ぎの中、三男がぽつりと言う。三男「……姉ちゃんが誰を好きでもいいけど」真帆「……うん」三男「俺は……姉ちゃんの一番近くにいたい」一瞬、空気が止まる。ゆかり「……え」姫「……これは」長男「……恋だね」母「恋ね〜」父「恋だな」真帆「ちょ、ちょっと待って!!」三男は真っ赤になって俯く。三男「違う……違わないけど……違う……」真帆「どっちなの!!」家族と友人の笑い声が、夜の小川家に響いた。教室に残っていた真帆がカバンを閉じると、廊下から佐伯が顔をのぞかせた。佐伯「小川さん、帰る?」真帆「あ、うん。今から」佐伯「よかったら……少し歩かない?」真帆は一瞬だけ迷う。でも、断る理由もない。真帆「……いいよ」佐伯はほっとしたように笑う。その笑顔が、真帆の胸に小さく刺さる。夕方の光が、桜の枝を透かして落ちてくる。二人の影が並んで伸びる。佐伯「小川さんってさ、いつも誰かの話をちゃんと聞いてるよね」真帆「そうかな」佐伯「うん。俺、そういうとこ好きだよ」真帆「……っ」言葉が喉に引っかかる。“好き”という単語が、思ったより重く響いた。佐伯は続ける。佐伯「この前さ、ゆかりさんと姫さんと話してる時の小川さん、すごく楽しそうだった」真帆「……あの二人は、騒がしいだけだよ」佐伯「でも、小川さんの笑い方、なんか……いいなって思った」真帆は目をそらす。(……なんでこんなにまっすぐ言えるんだろ)二人の間に、夕暮れの風が通り抜ける。佐伯「小川さんってさ、誰かに“見つけられたい”って思うことある?」真帆「……あるよ。最近、ちょっとだけ」佐伯「そっか。じゃあ……俺は、小川さんをちゃんと見つけたい」真帆「……っ」胸が、少しだけ熱くなる。三男は、校門の柱にもたれていた。真帆が出てくるのを、いつものように待っていた。でも――今日は来ない。三男(心の声)(……遅いな)ふと、遠くの桜並木に真帆と佐伯の姿が見える。二人の影が、重なったり、離れたりしている。三男(心の声)(……あ)胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。理由は、まだ言葉にならない。佐伯「今日はありがとう。また……話したいな」真帆「……うん」佐伯は軽く手を振って去っていく。真帆はしばらくその背中を見つめていた。(……なんか、変な感じ)でも、嫌じゃない。三男が立っていた。夕暮れの光の中で、いつもより影が長い。真帆「あ、三男……ごめん、待った?」三男「……ううん」声が少しだけ硬い。真帆は気づく。真帆「どうしたの?」三男「……別に」(別に、じゃない)三男は真帆の荷物を受け取りながら、静かに歩き出す。真帆は横顔を見つめる。(……なんか、変だ)夕暮れの風が、二人の間をそっとすり抜けていった。教室のざわめきの中、佐伯はふと視線を向けた。真帆が、ゆかりと姫の話を聞いて笑っていた。その笑い方は、声を張り上げるわけでもなく、大げさでもない。ただ、“そこに静かに灯る光”みたいだった。佐伯(心の声)(……あれ、こんな顔するんだ)気づいたら、目で追っていた。真帆が帰り支度をしている。佐伯は廊下で、何度も深呼吸をしていた。佐伯(心の声)(話したい。でも、どう言えばいいんだろ)真帆はクラスの中で目立つタイプじゃない。でも、“気づくとそこにいる”不思議な存在感があった。佐伯(心の声)(あの静けさ、なんか……好きだな)勇気を出して声をかけた。佐伯「小川さん、帰る?」真帆「あ、うん」佐伯「よかったら……少し歩かない?」真帆が少しだけ驚いて、でも断らなかった。その瞬間、胸の奥がふっと軽くなった。夕暮れの光が、二人の影を長く伸ばす。佐伯はゆっくり話し始めた。佐伯「小川さんってさ、誰かの話をちゃんと聞くよね」真帆は少しだけ照れたように笑った。その“間”が、佐伯にはたまらなく心地よかった。佐伯(心の声)(この人、言葉より沈黙の方が伝わるんだ)だから、つい言ってしまった。佐伯「俺、そういうとこ好きだよ」真帆の肩が小さく揺れた。その反応が、なんだか嬉しかった。佐伯は前から気になっていたことを聞いた。佐伯「小川さんってさ、誰かに“見つけられたい”って思うことある?」真帆は少し考えてから言った。真帆「……あるよ。最近、ちょっとだけ」その言葉が、胸に静かに落ちた。佐伯(心の声)(じゃあ……俺が見つけたい)自然と、そう思った。帰り際、真帆がふっと振り返った。その表情は、少しだけ揺れていて、でも前を向こうとしていた。佐伯(心の声)(……この人、誰かに大事にされてる顔してる)その“誰か”が誰なのか、佐伯はまだ知らない。ただ、校門の影に立つ三男の存在に、この時はまだ気づいていなかった。佐伯はひとり歩きながら、夕暮れの空を見上げた。佐伯(心の声)(また話したいな)でも同時に、胸の奥に小さな不安が生まれていた。佐伯(心の声)(……小川さんの隣には、もう誰かいるのかもしれない)その“誰か”の影が、夕暮れの中で静かに揺れていた。真帆がリビングに入ると、家族全員が妙にソワソワしている。真帆「……何その空気」母「真帆ちゃん、デートいつ?」真帆「は?」長男「佐伯くんとでしょ」真帆「なんで知ってるの」父「三男が報告した」真帆「三男!!」三男は目をそらす。三男「……別に、言うつもりじゃなかったけど……」長男「顔に全部書いてあった」母「三男くん、わかりやすい〜」父「三男、お前はもっと無表情を学べ」真帆「なんで私の恋愛で三男が怒られてるの」父「まずは昼食だ。落ち着いた店が良い」母「いや〜若い子はカフェよ〜」長男「映画でしょ。暗いし距離近いし」真帆「やめて!!」三男は黙っている。でも、拳がぎゅっと握られている。母「真帆ちゃん、ワンピース着る?」真帆「着ない!!」長男「髪巻く?」真帆「巻かない!!」父「では私が送り迎えを――」真帆「来ないで!!」三男は静かに言う。三男「……姉ちゃんが嫌なら、やめた方がいい」父「三男、甘い」母「甘い〜」長男「甘い」真帆「そこは甘くていい!」教室に入った瞬間、ゆかりが飛んでくる。ゆかり「真帆!!デートするって本当!?」真帆「してない!!」姫「家族が騒いでいた」真帆「なんで知ってるの!?」ゆかりは机を叩く。ゆかり「真帆、ついに恋愛イベント発生じゃん!!」姫「佐伯くんは好印象。表情筋の動きが誠実」真帆「表情筋で判断するな!」ゆかり「で、どこ行くの?服は?髪は?」真帆「行かないってば!!」姫は冷静にメモを取る。姫「真帆の恋愛傾向、更新しておく」真帆「更新するな!!」真帆「……迎えに来たの?」三男「……うん」歩き出す二人。沈黙が、いつもより重い。真帆「三男、なんか変だよ」三男「……別に」(別に、じゃない)真帆「家族のこと怒ってる?」三男「怒ってない」(怒ってないけど……苦しい)三男「……姉ちゃんが誰とデートしてもいいけど」真帆「うん」三男「……考えるだけで、胸が痛い」真帆は足を止める。真帆「……三男?」三男「わかんない。でも……姉ちゃんが誰かに笑ってるの、見たくない時がある」真帆の胸が少しだけ熱くなる。家に帰ると、父が立っていた。父「デート計画、第二案を作った」真帆「作るな!!」母「真帆ちゃん、可愛い服買いに行こ〜」真帆「行かない!!」長男「佐伯くんのSNS調べた」真帆「調べるな!!」三男は黙っている。でも、目が少し赤い。父「三男。お前はどう思う」三男「……姉ちゃんが笑ってるなら……いいと思う」真帆「三男……」長男「でも顔は“嫌です”って言ってる」母「言ってる〜」父「言っているな」三男「……っ」真帆「三男」三男「……なに」真帆「私は……まだデートとか、よくわかんないよ」三男は顔を上げる。真帆「でも、三男がそんな顔するなら……ちょっと考える」三男「……っ」父・母・長男「(聞こえてるぞ)」真帆「聞くな!!」真帆がリビングに入ると、家族全員が“何かを察した顔”で三男を見ている。真帆「……何その空気」母「三男くん、昨日ずっと元気なかったのよ〜」長男「恋だね」父「恋だな」三男「違う」真帆「何の話?」父・母・長男「(三男の恋の話)」三男「やめて」三男は珍しく、本気で怒っているように見えた。母がそっと三男の肩に手を置く。母「三男くん……真帆ちゃんのこと、好きなの?」三男「……っ」三男の耳が一瞬で赤くなる。長男「図星だ」父「図星だな」母「図星ね〜」三男「違う……違わないけど……違う……」真帆「どっちなの!?」三男は真帆を見られない。(※この時点で家族全員、確信する)教室に入った瞬間、ゆかりが叫ぶ。ゆかり「真帆!!三男くん、絶対好きでしょ!!」真帆「なんで知ってるの!?」姫「家族の表情筋が“確信”を示していた」真帆「表情筋で判断するな!」ゆかりは机を叩く。ゆかり「真帆、どうするの!?佐伯くんもいるし、三男くんもいるし!」真帆「そんな三角関係みたいに言うな!」姫は冷静にメモを取る。姫「真帆の恋愛状況、混沌」真帆「書くな!!」真帆が校門を出ると、佐伯が待っていた。佐伯「あ、小川さん。今日も少し歩かない?」真帆「え、あ……」その瞬間――三男が歩いてくる。三男「……姉ちゃん、帰るよ」真帆「三男……?」佐伯「三男くん、こんにちは」三男「……こんにちは」声が低い。いつもの三男じゃない。佐伯「小川さん、どうする?」真帆「えっと……」三男「……俺と帰る」真帆「え?」三男「今日は……俺と帰る」佐伯は少し驚き、でも優しく笑った。佐伯「じゃあまたね、小川さん」去っていく佐伯。真帆は三男を見る。真帆「三男、どうしたの?」三男「……嫌だった」真帆「何が?」三男「姉ちゃんが……誰かと笑ってるの、見たくなかった」真帆は息をのむ。真帆と三男だけが残る。静かな夜。時計の音だけが響く。真帆「……三男、今日のこと、怒ってる?」三男「怒ってない」真帆「じゃあ……悲しかった?」三男「……わかんない」三男は真帆を見られない。三男「姉ちゃんが誰かに笑ってるの、胸が痛くなる。理由は……わかんない」真帆はそっと三男の横に座る。真帆「三男」三男「……なに」真帆「私ね、三男がそんな顔するなら……ちゃんと考えるよ」三男はゆっくり顔を上げる。真帆「三男の気持ち、無視したくないから」三男の目が揺れる。三男「……姉ちゃん」真帆「うん」三男「俺……姉ちゃんの一番近くにいたい」真帆は少しだけ笑う。真帆「……それ、ずるいよ」三男「事実」二人の間に、静かで深い夜が落ちた。でもその夜は、どこか温かかった。目が覚めた瞬間、昨日の三男の言葉がふっと蘇る。「俺……姉ちゃんの一番近くにいたい」真帆(心の声)(……なんで、こんなに残ってるんだろ)胸の奥が、じんわり熱い。真帆が階段を降りると、家族全員が妙に優しい。母「真帆ちゃん、お味噌汁多めにしといたわよ〜」父「真帆、椅子引いてやろう」長男「今日の真帆、可愛いね」真帆「なんでそんなに優しいの?」三男は、真帆の顔を見られない。母は小声で父と長男に囁く。母「三男くんの恋、応援しましょうね〜」父「うむ」長男「任せろ」真帆「聞こえてるから!!」三男「……やめて」ゆかりと姫が近づいてくる。ゆかり「真帆、なんか今日ぼーっとしてない?」真帆「してない」姫「心拍数がいつもより高い」真帆「測るな!!」ゆかりはニヤニヤしながら言う。ゆかり「三男くんのこと、考えてたでしょ」真帆「……っ、違う」姫「反応速度が“図星”」真帆「やめて!!」でも、否定しながらも胸の奥がまた熱くなる。(……なんで三男の顔が浮かぶの)校門を出ると、三男が待っていた。昨日より少しだけ距離が近い。真帆「……迎えに来たの?」三男「うん」二人は並んで歩く。沈黙はあるけれど、昨日より柔らかい。真帆「三男、昨日のこと……」三男「忘れていいよ」真帆「……忘れたくないよ」三男は足を止める。三男「……え?」真帆「昨日、三男が言ったこと……なんか、ずっと残ってる」三男の目が揺れる。三男「……姉ちゃん」真帆「うん」三男「俺、また変なこと言うかもしれない」真帆「いいよ。聞くから」二人の距離が、ほんの少し縮まった。家に帰ると、家族が待ち構えていた。父「三男、今日こそ言え」三男「言わない」母「真帆ちゃん、三男くんの隣座って〜」真帆「なんで!?」長男「距離を縮める作戦だよ」真帆「作戦にするな!!」三男は真っ赤になって俯く。父「三男。お前の気持ちは家族全員知っている」母「応援してるわよ〜」長男「頑張れ」三男「……やめて……ほんとに……」真帆は三男を見る。(……こんなに顔赤くして、こんなに困ってるのに)胸がまた、じんわり熱くなる。家族が気を利かせて(?)「二人で話しなさい」と言って部屋を出る。真帆と三男だけが残る。静かな夜。時計の音だけが響く。真帆「三男」三男「……なに」真帆「私ね、最近……三男のこと考える時間が増えた」三男は息をのむ。真帆「なんでかわかんないけど……三男が誰かに取られたら嫌だって思った」三男「……っ」真帆「これって……どういう気持ちなんだろ」三男はゆっくり、真帆の方へ向き直る。三男「……姉ちゃん」真帆「うん」三男「それは……俺と同じ気持ちだと思う」真帆は目を伏せる。でも、口元は少しだけ緩んでいた。真帆「……そうかもね」二人の間に、静かで深い夜が落ちた。でもその夜は、昨日よりずっと温かかった。佐伯は校門で真帆を待っていた。昨日の会話が、まだ胸に残っている。佐伯(心の声)(今日も……少し話せたらいいな)真帆が校舎から出てくる。その瞬間、佐伯は声をかけようと一歩踏み出した。だが――真帆の横に、ひとりの男子が歩み寄る。三男だった。三男は真帆の荷物を受け取り、何も言わずに歩き出す。真帆も、何も言わずに隣に並ぶ。その距離は、近すぎず、遠すぎず、でも“他人ではありえない距離”だった。佐伯(心の声)(……あれ?)二人の影が、夕暮れの道で重なったり離れたりしている。佐伯は思わず立ち止まった。佐伯(心の声)(小川さん……あんな顔、俺には見せてない)真帆の横顔は、どこか安心していて、どこか甘えていて、どこか“帰る場所”みたいだった。佐伯「小川さん!」真帆が振り返る。三男も振り返る。佐伯「今日……少し、歩かない?」真帆は一瞬迷う。その一瞬の間に、三男の表情がわずかに揺れた。真帆「……ごめん。今日は……」三男「俺と帰る」佐伯はその言葉に、胸の奥がざわつく。佐伯(心の声)(……“俺と帰る”?そんな言い方、普通しない)真帆は困ったように笑い、三男の方へ歩き出す。佐伯はその背中を見つめながら、ゆっくり息を吐いた。佐伯(心の声)(小川さんの隣には……もう誰かがいるんだ)それは恋人ではない。でも、“誰より近い誰か”だ。佐伯(心の声)(あの距離……俺が入れる隙間じゃない)夕暮れの光の中、真帆と三男の影は自然に寄り添っていた。佐伯はその光景を見ながら、胸の奥が静かに痛むのを感じた。佐伯(心の声)(でも……話したい。もっと知りたい)真帆の笑顔が、昨日より遠く感じる。佐伯(心の声)(三男くん……君は、どんな気持ちで隣にいるんだろう)夕暮れの風が吹き抜ける。佐伯はひとり、その場に立ち尽くした。
「ここにいるよ」 第9話三男は、家族の声を聞きながらゆっくり階段を降りる。父の低い声。母の明るい声。長男の適当な声。そして――真帆の、静かで落ち着いた声。三男(心の声)(ああ、今日も“いつもの朝”だ)真帆はトーストをかじりながら、母の天然発言に淡々とツッコミを入れている。三男はその横顔を見ながら思う。(姉ちゃんって、家族の中心にいるのに、中心にいるって気づかれにくいよな)父は厳格だが、真帆には甘い。母は天然だが、真帆には頼る。長男は楽天家だが、真帆には懐く。三男は――ただ、静かに見ている。(俺は、姉ちゃんの“影”を見てるだけだ)友人たちが騒いでいる。三男は弁当を食べながら、ふとスマホを見る。《今日、帰り遅くなる》真帆からの短いメッセージ。三男(心の声)(こういう連絡だけは忘れないんだよな)友人A「三男ってさ、姉ちゃんのこと好きすぎじゃね?」三男「普通」友人B「いや普通じゃないだろ」三男「普通」友人たちは笑うが、三男は本気でそう思っている。(姉ちゃんは、俺の“基準”なんだよ)真帆が出てくるのを、三男は自転車に寄りかかって待っている。理由は聞かれたら困る。ただ、待ってしまう。真帆「……また来てる」三男「迎えに行くって言った」真帆「言ってないよ」三男「俺の中で言った」真帆は呆れたようにため息をつく。でも、その目は少しだけ柔らかい。(ああ、今日も“いつもの姉ちゃん”だ)二人の影が長く伸びる。重なったり、離れたり。三男は、真帆の歩幅に合わせて歩く。真帆「ねぇ、三男」三男「ん」真帆「私って……存在感薄い?」三男「薄くない」即答だった。真帆「……なんでそんなに言い切れるの」三男「俺には、ちゃんと見えるから」真帆は少しだけ黙る。三男(心の声)(姉ちゃんは、“気づく人にだけ届く存在感”なんだよ)でも、それを言葉にすると照れくさい。だから三男は、ただ静かに歩く。真帆が、自分の横にいることを確かめるように。机の上には、真帆が昔描いた“家族の似顔絵”。三男だけ、妙に丁寧に描かれている。三男(心の声)(姉ちゃんは、俺を見てくれてた。だから今度は、俺が姉ちゃんを見る番なんだ)窓の外、真帆の部屋の灯りが静かに揺れている。三男はふっと笑う。(姉ちゃん。俺はずっと、ここにいるよ)声にはしない。でも、確かにそう思っていた。父が咳払いをして、厳かに宣言する。父「これより第二回家族会議を始める」母「はじまるのね〜」長男「議題は?」三男「姉ちゃんの忘れ物?」真帆「なんで毎回私が原因前提なの」父は腕を組んで言う。父「議題は……特にない」真帆「ないの!?」長男「父さん、会議の意味とは」母「まぁまぁ、集まることに意味があるのよ〜」三男「母さんの言葉、今日ちょっと深い」父「真帆。最近どうだ」真帆「ざっくりしすぎ」母「元気?ちゃんと食べてる?」長男「恋してる?」真帆「なんで恋の話になるの」三男「姉ちゃんは恋愛興味あるよ」真帆「お前は黙れ」父がうんうんと頷く。父「真帆はもっと自己主張していい」母「そうそう〜、もっと“ここにいるよ”って言っていいのよ」長男「でも真帆って、静かにいるのが似合うよね」三男「うん。静かだけど、ちゃんと見える」真帆「……なんか褒められてるのかよくわからない」長男「じゃあさ、家族の改善点とか話す?」母「私は天然を直した方がいい?」父「直らん」母「即答」三男「兄ちゃんはもっと計画性を」長男「それは無理」真帆「開き直るな」父がふと真面目な顔になる。父「……実は、私にも改善点がある」家族「えっ」父「真帆に甘すぎると言われた」真帆「言ってないよ!?」長男「父さん、甘いよ」母「甘いわね〜」三男「甘い」父「全会一致か……」真帆「なんで私のせいみたいになってるの」母「ところで今日の夕飯どうする?」長男「鍋がいい」父「肉がいい」三男「魚がいい」真帆「意見バラバラすぎ」父「よし、投票だ」長男「民主主義」母「私はデザートがいい」真帆「議題から離れないで」結局――三男が静かに言う。三男「姉ちゃんの食べたいものでいいよ」父「それが良い」母「それが良いわ〜」長男「それが良いね」真帆「なんで急に私に丸投げなの」三男「姉ちゃんが決めると、なんか落ち着くから」父「うむ」母「わかる〜」長男「わかる」真帆「……そんな理由?」でも、悪い気はしない。父「では、第二回家族会議を締める」母「結局、何も決まってないわね〜」長男「まぁ、家族会議ってそんなもんでしょ」三男「姉ちゃんが笑ってたから、それでいい」真帆「……っ、なんでそういうこと言うの」父が最後に静かに言う。父「真帆。お前がここにいるだけで、家族はまとまる」母「そうそう〜」長男「空気清浄機だからね」真帆「最後の一言いらない」家族の笑い声が、夜のリビングにまた広がった。真帆が靴を履いていると、同じクラスの男子・佐伯(さえき)が声をかけてくる。佐伯「小川さん、今日ちょっと話せる?」真帆「え、私?」佐伯「うん。あの……最近、よく笑うようになったよね」真帆「……そうかな」佐伯「うん。なんか、いいなって思って」真帆は一瞬だけ固まる。(……え、これって)佐伯「また話したいな。じゃあね」軽く手を振って去っていく佐伯。真帆は胸の奥が少しだけ熱くなる。(……なんか、変な感じ)その様子を、校門の外から三男が見ていた。三男(心の声)(……誰だ、あいつ)真帆が佐伯と話しているのを見た瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。(姉ちゃんが笑ってた。でも……なんか、違う)真帆が三男の方へ歩いてくる。真帆「ごめん、待った?」三男「……ううん」声が少しだけ硬い。自分でも気づく。真帆「どうしたの?」三男「別に」(別に、じゃない)三男は自分の中に生まれた“正体不明の感情”に戸惑っていた。玄関を開けた瞬間、父の声が響く。父「第三回家族会議を始める!」真帆「また!?」長男「今日は議題あるの?」母「あるのよ〜」三男「嫌な予感しかしない」母が紙を掲げる。母「議題:真帆ちゃんの恋愛について」真帆「やめて!!」三男「……っ」三男の心臓が跳ねる。父「真帆。誰か気になる相手はいるのか」真帆「いないってば!」長男「今日、男子と話してたよね?」真帆「なんで知ってるの!?」母「三男くんが言ってたわよ〜」真帆「三男!?」三男「……いや、別に……」真帆「なんで言うの!」三男「……なんとなく」父が腕を組む。父「その男子はどんなやつだ」真帆「普通の人だよ!」長男「普通って一番怪しい」母「真帆ちゃん、顔赤い〜」真帆「うるさい!」三男は黙っている。でも、手が少しだけ握られている。父「三男。お前はどう思う」三男「……俺?」真帆も三男を見る。三男は目をそらす。三男「……姉ちゃんは……」言葉が喉で止まる。(言いたくない。でも、言わないと苦しい)三男「……姉ちゃんは、誰かに雑に扱われるような人じゃない」家族が静かになる。三男「ちゃんと見てくれる人じゃないと、……嫌だ」真帆「……三男?」三男は続ける。三男「今日の人がどうとかじゃなくて……姉ちゃんが笑ってるの、俺は……ちゃんと見てたいから」真帆の胸が熱くなる。父「……三男」母「……あら〜」長男「……これは、恋だね」真帆「黙れ!!」三男の顔が真っ赤になる。三男「ち、違う……違わないけど……違う……」真帆「どっちなの!?」父「結論。真帆の恋愛は――」母「家族全員で見守る!」長男「監視する!」真帆「監視はやめて!」三男「……俺は、見守る」真帆は三男を見る。真帆「……ありがと」三男「……うん」二人の間に、家族には見えない“静かな線”が生まれた。真帆がリビングに入ると、家族全員が妙にニヤニヤしている。真帆「……何その顔」母「真帆ちゃん、昨日の男の子〜」真帆「やめて」長男「佐伯くんだっけ?爽やか系だったね」真帆「なんで知ってるの」父「三男が報告した」真帆「三男!!」三男は目をそらす。三男「……別に、言うつもりじゃなかったけど……」長男「顔に全部書いてあったよ」母「三男くん、わかりやすい〜」父「三男、お前はもっとポーカーフェイスを学べ」真帆「なんで私の恋愛で三男が怒られてるの」教室に入った瞬間、ゆかりが飛んでくる。ゆかり「真帆!!昨日の男子誰!!」真帆「なんで知ってるの!?」姫「三男くんの表情が“恋の気配”を示していた」真帆「三男の表情で判断するな!」ゆかりは机を叩く。ゆかり「真帆、ついに恋愛フラグ立ったんだね!!」真帆「立ってない!」姫「立っている」真帆「姫まで!」ゆかりがスマホを構える。ゆかり「で、どんな人?どこが好き?いつから?」真帆「質問攻めやめて!!」姫は冷静にメモを取り始める。姫「真帆の恋愛傾向、データ化しておく」真帆「やめろ!!」真帆が校門を出ると、三男が待っている。でも今日は、いつもより少し距離がある。真帆「……迎えに来たの?」三男「……うん」歩き出す二人。沈黙が、いつもより重い。真帆「三男、なんか変だよ」三男「……別に」(別に、じゃない)真帆「昨日のこと、怒ってる?」三男「怒ってない」(怒ってないけど……苦しい)三男「……姉ちゃんが誰と話してもいいけど」真帆「うん」三男「……なんか、嫌だった」真帆は足を止める。真帆「……三男?」三男「わかんない。でも……姉ちゃんが誰かに笑ってるの、見たくない時がある」真帆の胸が少しだけ熱くなる。家に帰ると、父が立っていた。父「第三回家族会議・恋愛特化編を始める!」真帆「また!?」母「今日は“真帆ちゃんの恋愛を応援する会”よ〜」長男「俺は情報収集担当」三男「……やめて」父が真帆に向き直る。父「真帆。あの男子はどんなやつだ」真帆「普通の人だよ!」長男「普通って一番怪しい」母「真帆ちゃん、顔赤い〜」真帆「うるさい!」三男は黙っている。でも、拳がぎゅっと握られている。父「三男。お前はどう思う」三男「……姉ちゃんが笑ってるなら……いいと思う」真帆「三男……」長男「でも顔は“嫌です”って言ってる」三男「言ってない」母「言ってる〜」父「言っているな」三男「……っ」ピンポーン。真帆「え、誰?」ゆかり「真帆〜!恋愛会議してるって聞いた!」姫「参加する」真帆「なんで来るの!!」父「よし、拡大会議だ」長男「戦力増えた」母「賑やか〜」三男「……最悪だ」ゆかり「真帆、佐伯くんのどこが好きなの?」真帆「好きじゃない!!」姫「では、三男くんの反応はどう分析する?」三男「分析するな!!」家族+友人の圧が真帆に襲いかかる。真帆「もうやめて!!」騒ぎの中、三男がぽつりと言う。三男「……姉ちゃんが誰を好きでもいいけど」真帆「……うん」三男「俺は……姉ちゃんの一番近くにいたい」一瞬、空気が止まる。ゆかり「……え」姫「……これは」長男「……恋だね」母「恋ね〜」父「恋だな」真帆「ちょ、ちょっと待って!!」三男は真っ赤になって俯く。三男「違う……違わないけど……違う……」真帆「どっちなの!!」家族と友人の笑い声が、夜の小川家に響いた。教室に残っていた真帆がカバンを閉じると、廊下から佐伯が顔をのぞかせた。佐伯「小川さん、帰る?」真帆「あ、うん。今から」佐伯「よかったら……少し歩かない?」真帆は一瞬だけ迷う。でも、断る理由もない。真帆「……いいよ」佐伯はほっとしたように笑う。その笑顔が、真帆の胸に小さく刺さる。夕方の光が、桜の枝を透かして落ちてくる。二人の影が並んで伸びる。佐伯「小川さんってさ、いつも誰かの話をちゃんと聞いてるよね」真帆「そうかな」佐伯「うん。俺、そういうとこ好きだよ」真帆「……っ」言葉が喉に引っかかる。“好き”という単語が、思ったより重く響いた。佐伯は続ける。佐伯「この前さ、ゆかりさんと姫さんと話してる時の小川さん、すごく楽しそうだった」真帆「……あの二人は、騒がしいだけだよ」佐伯「でも、小川さんの笑い方、なんか……いいなって思った」真帆は目をそらす。(……なんでこんなにまっすぐ言えるんだろ)二人の間に、夕暮れの風が通り抜ける。佐伯「小川さんってさ、誰かに“見つけられたい”って思うことある?」真帆「……あるよ。最近、ちょっとだけ」佐伯「そっか。じゃあ……俺は、小川さんをちゃんと見つけたい」真帆「……っ」胸が、少しだけ熱くなる。三男は、校門の柱にもたれていた。真帆が出てくるのを、いつものように待っていた。でも――今日は来ない。三男(心の声)(……遅いな)ふと、遠くの桜並木に真帆と佐伯の姿が見える。二人の影が、重なったり、離れたりしている。三男(心の声)(……あ)胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。理由は、まだ言葉にならない。佐伯「今日はありがとう。また……話したいな」真帆「……うん」佐伯は軽く手を振って去っていく。真帆はしばらくその背中を見つめていた。(……なんか、変な感じ)でも、嫌じゃない。三男が立っていた。夕暮れの光の中で、いつもより影が長い。真帆「あ、三男……ごめん、待った?」三男「……ううん」声が少しだけ硬い。真帆は気づく。真帆「どうしたの?」三男「……別に」(別に、じゃない)三男は真帆の荷物を受け取りながら、静かに歩き出す。真帆は横顔を見つめる。(……なんか、変だ)夕暮れの風が、二人の間をそっとすり抜けていった。教室のざわめきの中、佐伯はふと視線を向けた。真帆が、ゆかりと姫の話を聞いて笑っていた。その笑い方は、声を張り上げるわけでもなく、大げさでもない。ただ、“そこに静かに灯る光”みたいだった。佐伯(心の声)(……あれ、こんな顔するんだ)気づいたら、目で追っていた。真帆が帰り支度をしている。佐伯は廊下で、何度も深呼吸をしていた。佐伯(心の声)(話したい。でも、どう言えばいいんだろ)真帆はクラスの中で目立つタイプじゃない。でも、“気づくとそこにいる”不思議な存在感があった。佐伯(心の声)(あの静けさ、なんか……好きだな)勇気を出して声をかけた。佐伯「小川さん、帰る?」真帆「あ、うん」佐伯「よかったら……少し歩かない?」真帆が少しだけ驚いて、でも断らなかった。その瞬間、胸の奥がふっと軽くなった。夕暮れの光が、二人の影を長く伸ばす。佐伯はゆっくり話し始めた。佐伯「小川さんってさ、誰かの話をちゃんと聞くよね」真帆は少しだけ照れたように笑った。その“間”が、佐伯にはたまらなく心地よかった。佐伯(心の声)(この人、言葉より沈黙の方が伝わるんだ)だから、つい言ってしまった。佐伯「俺、そういうとこ好きだよ」真帆の肩が小さく揺れた。その反応が、なんだか嬉しかった。佐伯は前から気になっていたことを聞いた。佐伯「小川さんってさ、誰かに“見つけられたい”って思うことある?」真帆は少し考えてから言った。真帆「……あるよ。最近、ちょっとだけ」その言葉が、胸に静かに落ちた。佐伯(心の声)(じゃあ……俺が見つけたい)自然と、そう思った。帰り際、真帆がふっと振り返った。その表情は、少しだけ揺れていて、でも前を向こうとしていた。佐伯(心の声)(……この人、誰かに大事にされてる顔してる)その“誰か”が誰なのか、佐伯はまだ知らない。ただ、校門の影に立つ三男の存在に、この時はまだ気づいていなかった。佐伯はひとり歩きながら、夕暮れの空を見上げた。佐伯(心の声)(また話したいな)でも同時に、胸の奥に小さな不安が生まれていた。佐伯(心の声)(……小川さんの隣には、もう誰かいるのかもしれない)その“誰か”の影が、夕暮れの中で静かに揺れていた。真帆がリビングに入ると、家族全員が妙にソワソワしている。真帆「……何その空気」母「真帆ちゃん、デートいつ?」真帆「は?」長男「佐伯くんとでしょ」真帆「なんで知ってるの」父「三男が報告した」真帆「三男!!」三男は目をそらす。三男「……別に、言うつもりじゃなかったけど……」長男「顔に全部書いてあった」母「三男くん、わかりやすい〜」父「三男、お前はもっと無表情を学べ」真帆「なんで私の恋愛で三男が怒られてるの」父「まずは昼食だ。落ち着いた店が良い」母「いや〜若い子はカフェよ〜」長男「映画でしょ。暗いし距離近いし」真帆「やめて!!」三男は黙っている。でも、拳がぎゅっと握られている。母「真帆ちゃん、ワンピース着る?」真帆「着ない!!」長男「髪巻く?」真帆「巻かない!!」父「では私が送り迎えを――」真帆「来ないで!!」三男は静かに言う。三男「……姉ちゃんが嫌なら、やめた方がいい」父「三男、甘い」母「甘い〜」長男「甘い」真帆「そこは甘くていい!」教室に入った瞬間、ゆかりが飛んでくる。ゆかり「真帆!!デートするって本当!?」真帆「してない!!」姫「家族が騒いでいた」真帆「なんで知ってるの!?」ゆかりは机を叩く。ゆかり「真帆、ついに恋愛イベント発生じゃん!!」姫「佐伯くんは好印象。表情筋の動きが誠実」真帆「表情筋で判断するな!」ゆかり「で、どこ行くの?服は?髪は?」真帆「行かないってば!!」姫は冷静にメモを取る。姫「真帆の恋愛傾向、更新しておく」真帆「更新するな!!」真帆「……迎えに来たの?」三男「……うん」歩き出す二人。沈黙が、いつもより重い。真帆「三男、なんか変だよ」三男「……別に」(別に、じゃない)真帆「家族のこと怒ってる?」三男「怒ってない」(怒ってないけど……苦しい)三男「……姉ちゃんが誰とデートしてもいいけど」真帆「うん」三男「……考えるだけで、胸が痛い」真帆は足を止める。真帆「……三男?」三男「わかんない。でも……姉ちゃんが誰かに笑ってるの、見たくない時がある」真帆の胸が少しだけ熱くなる。家に帰ると、父が立っていた。父「デート計画、第二案を作った」真帆「作るな!!」母「真帆ちゃん、可愛い服買いに行こ〜」真帆「行かない!!」長男「佐伯くんのSNS調べた」真帆「調べるな!!」三男は黙っている。でも、目が少し赤い。父「三男。お前はどう思う」三男「……姉ちゃんが笑ってるなら……いいと思う」真帆「三男……」長男「でも顔は“嫌です”って言ってる」母「言ってる〜」父「言っているな」三男「……っ」真帆「三男」三男「……なに」真帆「私は……まだデートとか、よくわかんないよ」三男は顔を上げる。真帆「でも、三男がそんな顔するなら……ちょっと考える」三男「……っ」父・母・長男「(聞こえてるぞ)」真帆「聞くな!!」真帆がリビングに入ると、家族全員が“何かを察した顔”で三男を見ている。真帆「……何その空気」母「三男くん、昨日ずっと元気なかったのよ〜」長男「恋だね」父「恋だな」三男「違う」真帆「何の話?」父・母・長男「(三男の恋の話)」三男「やめて」三男は珍しく、本気で怒っているように見えた。母がそっと三男の肩に手を置く。母「三男くん……真帆ちゃんのこと、好きなの?」三男「……っ」三男の耳が一瞬で赤くなる。長男「図星だ」父「図星だな」母「図星ね〜」三男「違う……違わないけど……違う……」真帆「どっちなの!?」三男は真帆を見られない。(※この時点で家族全員、確信する)教室に入った瞬間、ゆかりが叫ぶ。ゆかり「真帆!!三男くん、絶対好きでしょ!!」真帆「なんで知ってるの!?」姫「家族の表情筋が“確信”を示していた」真帆「表情筋で判断するな!」ゆかりは机を叩く。ゆかり「真帆、どうするの!?佐伯くんもいるし、三男くんもいるし!」真帆「そんな三角関係みたいに言うな!」姫は冷静にメモを取る。姫「真帆の恋愛状況、混沌」真帆「書くな!!」真帆が校門を出ると、佐伯が待っていた。佐伯「あ、小川さん。今日も少し歩かない?」真帆「え、あ……」その瞬間――三男が歩いてくる。三男「……姉ちゃん、帰るよ」真帆「三男……?」佐伯「三男くん、こんにちは」三男「……こんにちは」声が低い。いつもの三男じゃない。佐伯「小川さん、どうする?」真帆「えっと……」三男「……俺と帰る」真帆「え?」三男「今日は……俺と帰る」佐伯は少し驚き、でも優しく笑った。佐伯「じゃあまたね、小川さん」去っていく佐伯。真帆は三男を見る。真帆「三男、どうしたの?」三男「……嫌だった」真帆「何が?」三男「姉ちゃんが……誰かと笑ってるの、見たくなかった」真帆は息をのむ。真帆と三男だけが残る。静かな夜。時計の音だけが響く。真帆「……三男、今日のこと、怒ってる?」三男「怒ってない」真帆「じゃあ……悲しかった?」三男「……わかんない」三男は真帆を見られない。三男「姉ちゃんが誰かに笑ってるの、胸が痛くなる。理由は……わかんない」真帆はそっと三男の横に座る。真帆「三男」三男「……なに」真帆「私ね、三男がそんな顔するなら……ちゃんと考えるよ」三男はゆっくり顔を上げる。真帆「三男の気持ち、無視したくないから」三男の目が揺れる。三男「……姉ちゃん」真帆「うん」三男「俺……姉ちゃんの一番近くにいたい」真帆は少しだけ笑う。真帆「……それ、ずるいよ」三男「事実」二人の間に、静かで深い夜が落ちた。でもその夜は、どこか温かかった。目が覚めた瞬間、昨日の三男の言葉がふっと蘇る。「俺……姉ちゃんの一番近くにいたい」真帆(心の声)(……なんで、こんなに残ってるんだろ)胸の奥が、じんわり熱い。真帆が階段を降りると、家族全員が妙に優しい。母「真帆ちゃん、お味噌汁多めにしといたわよ〜」父「真帆、椅子引いてやろう」長男「今日の真帆、可愛いね」真帆「なんでそんなに優しいの?」三男は、真帆の顔を見られない。母は小声で父と長男に囁く。母「三男くんの恋、応援しましょうね〜」父「うむ」長男「任せろ」真帆「聞こえてるから!!」三男「……やめて」ゆかりと姫が近づいてくる。ゆかり「真帆、なんか今日ぼーっとしてない?」真帆「してない」姫「心拍数がいつもより高い」真帆「測るな!!」ゆかりはニヤニヤしながら言う。ゆかり「三男くんのこと、考えてたでしょ」真帆「……っ、違う」姫「反応速度が“図星”」真帆「やめて!!」でも、否定しながらも胸の奥がまた熱くなる。(……なんで三男の顔が浮かぶの)校門を出ると、三男が待っていた。昨日より少しだけ距離が近い。真帆「……迎えに来たの?」三男「うん」二人は並んで歩く。沈黙はあるけれど、昨日より柔らかい。真帆「三男、昨日のこと……」三男「忘れていいよ」真帆「……忘れたくないよ」三男は足を止める。三男「……え?」真帆「昨日、三男が言ったこと……なんか、ずっと残ってる」三男の目が揺れる。三男「……姉ちゃん」真帆「うん」三男「俺、また変なこと言うかもしれない」真帆「いいよ。聞くから」二人の距離が、ほんの少し縮まった。家に帰ると、家族が待ち構えていた。父「三男、今日こそ言え」三男「言わない」母「真帆ちゃん、三男くんの隣座って〜」真帆「なんで!?」長男「距離を縮める作戦だよ」真帆「作戦にするな!!」三男は真っ赤になって俯く。父「三男。お前の気持ちは家族全員知っている」母「応援してるわよ〜」長男「頑張れ」三男「……やめて……ほんとに……」真帆は三男を見る。(……こんなに顔赤くして、こんなに困ってるのに)胸がまた、じんわり熱くなる。家族が気を利かせて(?)「二人で話しなさい」と言って部屋を出る。真帆と三男だけが残る。静かな夜。時計の音だけが響く。真帆「三男」三男「……なに」真帆「私ね、最近……三男のこと考える時間が増えた」三男は息をのむ。真帆「なんでかわかんないけど……三男が誰かに取られたら嫌だって思った」三男「……っ」真帆「これって……どういう気持ちなんだろ」三男はゆっくり、真帆の方へ向き直る。三男「……姉ちゃん」真帆「うん」三男「それは……俺と同じ気持ちだと思う」真帆は目を伏せる。でも、口元は少しだけ緩んでいた。真帆「……そうかもね」二人の間に、静かで深い夜が落ちた。でもその夜は、昨日よりずっと温かかった。佐伯は校門で真帆を待っていた。昨日の会話が、まだ胸に残っている。佐伯(心の声)(今日も……少し話せたらいいな)真帆が校舎から出てくる。その瞬間、佐伯は声をかけようと一歩踏み出した。だが――真帆の横に、ひとりの男子が歩み寄る。三男だった。三男は真帆の荷物を受け取り、何も言わずに歩き出す。真帆も、何も言わずに隣に並ぶ。その距離は、近すぎず、遠すぎず、でも“他人ではありえない距離”だった。佐伯(心の声)(……あれ?)二人の影が、夕暮れの道で重なったり離れたりしている。佐伯は思わず立ち止まった。佐伯(心の声)(小川さん……あんな顔、俺には見せてない)真帆の横顔は、どこか安心していて、どこか甘えていて、どこか“帰る場所”みたいだった。佐伯「小川さん!」真帆が振り返る。三男も振り返る。佐伯「今日……少し、歩かない?」真帆は一瞬迷う。その一瞬の間に、三男の表情がわずかに揺れた。真帆「……ごめん。今日は……」三男「俺と帰る」佐伯はその言葉に、胸の奥がざわつく。佐伯(心の声)(……“俺と帰る”?そんな言い方、普通しない)真帆は困ったように笑い、三男の方へ歩き出す。佐伯はその背中を見つめながら、ゆっくり息を吐いた。佐伯(心の声)(小川さんの隣には……もう誰かがいるんだ)それは恋人ではない。でも、“誰より近い誰か”だ。佐伯(心の声)(あの距離……俺が入れる隙間じゃない)夕暮れの光の中、真帆と三男の影は自然に寄り添っていた。佐伯はその光景を見ながら、胸の奥が静かに痛むのを感じた。佐伯(心の声)(でも……話したい。もっと知りたい)真帆の笑顔が、昨日より遠く感じる。佐伯(心の声)(三男くん……君は、どんな気持ちで隣にいるんだろう)夕暮れの風が吹き抜ける。佐伯はひとり、その場に立ち尽くした。
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