TORQUEトーク

2026/04/15 12:52

【 TORQUE文学:湾岸トルクナイト ⑦ 】

【 TORQUE文学:湾岸トルクナイト ⑥ 】より続き。
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深夜の大阪湾岸線で繰り広げられる、俺『にせもん』の黄色いスカイラインと、『お嬢』の白いポルシェとのランデブー走行の様子は、俺の友人『むっちゃ』を通しSNSサイト・TORQUE SMILEにライブ投稿され、今では『湾岸トルクナイト』というタイトルの人気記事になっていた。
俺のスカイランがお嬢のポルシェに撃墜された翌々日の夕方。
家業の『フラワーにしもん』を閉店をさせた俺は、自分のガレージに来ていた。
俺がガレージに来る目的は2つある。
1つはへ深夜の大阪湾岸線で、愛車のスカイラインを走らせる前の整備をするとき。
主に平日の夕方、花屋を閉めてからだ。
もぅ1つは、俺の裏稼業であるバイク・車の改造屋の作業をするとき。
こちらは花屋の定休日、明るい時間帯が多い。
今夜は湾岸線に走りに行くわけではないが、ボンヤリ考えていたことが気になりガレージに足を運んでみたのだ。
それは昨夜、むっちゃから電話で言われた「…これから先のこと…」についてだ。
むっちゃが指している「先のこと」が、ポルシェのお嬢との勝負なのは間違いない。
その時はアルコールが入ってたこともあり、適当にふざけて「…お嬢にヤラれてヌカれる…」とか話したはずだ。
酔っていたので、多少記憶が曖昧だが…。
だが、そのあと独りきりでビールを飲んでいると、ある考えが俺の中に浮かび上がったのだ。
「とうとうアレを使う時が来たんじゃないか…」
むっちゃとの会話中にはまるで思いもしなかったし、彼からの提案も無かったのが、今になって不思議だと思う。
アレとは『湾SP3』と呼ばれるエンジンのことだ。
俺は裏稼業で改造屋をやっていることもあり、普段から車のエンジンの積み替えなど朝飯前の作業だ。
自分の愛車の黄色いスカイラインも、オーナーになって20年以上の間に、エンジンを何基も積み替えてきた。
積み替える理由はエンジンの調子が悪くなったり、新たな改造のメニューを試したりと様々だが、要は愛車を少しでも速くするためだ。
俗に言われる『エンジンチューン』と言うもので、その内容は目的により多岐に渡っており、とても一言で説明などできない。
今 このガレージの隅に、カバーが掛けられて保管してあるエンジンが一基ある。
もぅかなりの間、そのままの状態で眠っているそのエンジンは、俺のスカイラインに搭載するためのものだ。
完全に俺個人の私物であり、車仲間や賭けレースの客の為に用意したものではない。
『RB26改3.0LのGT3037SツインターボVカム仕様。』
俺のガレージにあつまる車仲間たちからは『大阪湾岸線スペシャル3.0L』、通称『湾SP3=ワンスペスリー』と呼ばれていた。
RB26エンジンの究極パワーチューンと言っても、過言ではないスペックだと俺は思っている。
常用ブースト1.25キロ、一発狙いで2.05キロまでかければ、出力は1000psの大台を突破するだろう。
トラストのGT3037Sボールベアリングタービンをツインで使用し、HKSのVカムシステムを導入することで、下から上までスムーズに加速し、超高速域までストレスなくパワーが伸びる特性を持たせている。
このエンジンは非常に高性能なパーツ構成なので、F-CON V Proなどの高性能フルコン(サブコン)等の高度なセッティング技術が必要となり、誰にでも扱えるモノではない。
だが、長年のエンジンチューンの経験がある俺なら、この超高性能エンジンに最大級のパワーを発揮させる事が可能だ。
今まで何人もの『闇の賭けレース』に出場する客たちから、このエンジンを自分のマシンに乗せて欲しいと依頼された。
だが、俺は一度も俺は首を縦に振らなかった。かなりの高額な報酬を提示されても。
(…このエンジンは俺にしか回せない…。)
俺にはそんな確信があったからだ。
一般的にバイクや車が好きな人間は、大きく分けて2つのタイプに分かれる。
運転が好きなタイプと改造が好きなタイプだ。
この2つはハッキリどちらかに分かれているワケではなく、どちらの配分が大きいかのバランスの問題だ。
俺は最初は運転好きが強いタイプだったが、後年は改造好きが占める割合が強くなってきた。
むっちゃはかなり運転好きなタイプで、改造は仕様だけ自分で決めて、作業自体は俺のようなプロに任せるほうだ。
チューンナップが進み、かなりのパワーを絞り出したエンジンほど、その扱いはドンドン難しくなってくる。
エンジン内部やセッティングに関する知識が、運転するドライバーにも要求されるのだ。
だから、ただ速く走るだけの車が欲しいなら、ポルシェなどの高額な輸入スポーツカーのほうが安心だ。
市販車はあくまでも『運転の素人』が乗ることも考えて作られている車だから、かなり雑に扱っても簡単には壊れない。
しかし、俺が作ったこの『RB26改3.0LのGT3037SツインターボVカム仕様』エンジンなど、一般ドライバーにはとても扱えない無い代物だ。
ハイチューンのマシンに乗り慣れている者でなければ、アッと言う間に壊すか事故を起こしてしまうだろう。
俺の改造屋としての知識と技術と経験をフルに投入して組み上げたエンジン。
それが『湾SP3=ワンスペスリー』なのだ。
( お嬢のポルシェとガチでヤルなら、コイツを使うしかないな。)
俺のスカイラインのような設計が古い車体でも、大パワーの強力なエンジンさえ積めば、とりあえず戦闘力は上がる。
お嬢のポルシェを相手にしても『長く全開にできる直線』が現れれば勝ちが狙える。
公道のレースにおいての『勝敗』とは、いったいどのように判定するのか?
その定義は時と場合によって異なる。
近年の大阪湾岸線などは、ある一定の区間を決め、その通過時間を競う『タイムアタック』が主流になっている。
複数台数が同時に走り、その中で一番先にゴールに達した者が勝ちという『スプリントレース』形式では、過去に大きな事故が多発した。
運悪く命を落とした者も少なくない。
どうしても直ぐ側に相手が存在する『スプリントレース』形式では、必要以上にドライバーがヒートアップしてしまい、冷静な判断を失うからだ。
そんな経験を多く積み重ねるうちに、現在の大阪湾岸線では『タイムアタック』という形式が定着していった。
ただ、公道での『タイムアタック』は、各自が記録したタイムの『自己申告』だ。
つまり「嘘を言えば仲間内の信用を失ない次回から相手にされなくなります。」という『紳士協定』の上に成り立つ記録なのだ。
モータースポーツのラリー競技のように、公平な立場の第三者が正確にタイムを計測するのは、アマチュアのが行う公道レースでは困難なのだ。
そんな組織的は運営は不可能に近い。
だから『紳士協定』に頼るしか仕方ないのだが、当然 申告されたタイムの信憑性は保証されてはいない。
もちろん、嘘のタイムの申告もいくらでも可能なのだが、それをしたところで、現在ではあまりメリットはない。
過去には改造車を扱うプロショップの多くが、公道でのタイムアタックに参加していた時代があった。
プロショップの『デモカー』が出したタイムが雑誌などで公開されたりして、とても盛り上がったものだ。
そんな中には『疑惑あり』と思えるような『捏造された記録』を公表するプロショップも散見された。
集客を狙った店の宣伝のためだ。
速い車を作ってもらえるショップには、大金を出してでも自分の愛車を改造してもらいたい者が、当時はたくさん集まった。
だが、そんなことをして一時的に客を集めたとして、店の技術力が判明してしまえば、すぐに客は離れてしまう。
長い時を経て自然淘汰された現在では、技術力が高くて料金設定に納得できる、質の良いショップだけが生き残ってる。
( 俺がお嬢のポルシェと勝負するなら、タイムアタックはありえないな。)
俺の走る深夜の大阪湾岸線は、中島本線料金所から4号線の出島ICまでの16km区間だ。
それ以上は走らない。
そのことは、今までの経験からお嬢も分かっているはずだ。
俺が愛車スカイラインのエンジンを『湾SP3』に積み替えてタイムアタックを行い、その記録を むっちゃが『湾岸トルクナイト』に随時投稿したとしても、肝心のお嬢のほうはどうだろうか?
なにしろ、むっちゃの毎回の呼びかけにすら、何一つもリアクションを起こさない彼女なのだから。
タイムアタックでは、永遠に俺の一人相撲で終わってしまうだろう。

【 TORQUE文学:湾岸トルクナイト ⑧ 】へ続く。 
https://torque.kyocera.co.jp/chats/5xaqnnmdpf04vbk3

3件のコメント (新着順)
まっちゃ
2026/04/16 00:15

大阪環状線だと小回りが利くシビックタイプRや古いシビックSiRあたりのシビック勢が幅を利かせてる気がしました。 

警察24時間によくできてます


まっちゃ
2026/04/16 00:30

読んでなかったです。

ろん
2026/04/15 20:26

おぉ!中島〜出島😄
湾岸繋がる迄、車種関係なく皆元気に走ってたそうな☺️

ポルシャて😏

にしもん@50s pro バッジ画像
2026/04/15 19:31

おお💥😀🍺✨Vカム仕様💪

美しいエンジンルームですね✨

ギャレットのタービンはなぜが水冷なので取り回しが複雑に、、🔧😀💦

話の結末は、!!どうなるのか😀💥⁉️

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