【 TORQUE文学:頭文字Torque ⑤ 】
【 TORQUE文学:頭文字Torque ④ 】より続き。
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車好きのお父さんが経営する花屋『フラワーにしもん』の息子の僕は、半年前から愛車として『トヨタ86』に乗っている。
その86に搭載されている『水平対抗エンジン』は、かつては『ボクサーサンウンド』と呼ばれた独特の『ドロドロ~』という排気音をさせて走っていたらしいが、今はそんな音はしない。
お父さんの車仲間のオジサンたちは『ドロドロ~』の音こそ〈水平エンジンらしい〉と評価していて、僕の86から『ボクサーサウンド』がしないのを残念だと言っている。
『ボクサーサウンド』とその発生源である『不等長エキゾーストマニーホールド』のことについては、僕なりに調査をした結果、走行性能に関してはメリットは無いようだ。
僕のお父さんは、水平エンジンのボクサーサウンドに関しては、今まで一切自らの意見を口にしなかった。
とうとう、お父さんの考えを聞く時がやって来たのだ。
お父さんは、家業の花屋が休日の前日の夜は、『大阪湾岸線』に愛車のスカイランを走らせに行くことが多い。
今日はちょうどその日にあたるのだが、あいにく天気は午後から雨。
たぶん今夜は湾岸線に上がることは無いだろう。
僕が仕事終えて帰宅すると、家の中にはお父さんの姿は見えなかった。
お母さんに聞いてみると、夕飯を食べてからガレージに行ったと言う。
「お酒は?」
と聞いてみると、案の定 すでに飲んでいるらしい。
やはり今夜走らないようだ。
僕は自分も夕飯を済ませ、冷蔵庫からペットボトルのコーラを持って、お父さんの居いるガレージに向かった。
家のすぐ裏にあるガレージで、お父さんは缶ビールを飲みながら、今月発売されたクルマ雑誌を読んでいた。
テーブルの上には、すでにビール缶が2本空になっていて、3本目を飲んでいるところだった。
家から持ってきたと思われる、スナック菓子の袋がいくつかある。
このガレージは、税務署の人には修理屋さんに間違われるくらい立派ものなので、設備もかなり充実している。
自動車の整備の工具は言うに及ばず、TVや冷蔵庫などの生活用品も一通り揃っている。
冷蔵庫の中身はほとんどが缶ビールだが、僕が飲むジュースのペットボトルの2・3本だけ入っている
自動車系の書籍やインターネットに繋がったノートパソコンもあるので、この数日間は僕も夜になると『ボクサーサウンド』のことをココに来て調べていた。
僕はお父さんの向かいに座って、ペットボトルのキャップを開けた。
「お父さん、僕ね 最近は毎晩ここで調べものしていたんだ。」
「うん、知ってるよ。夕食の後に姿が見えないから、お母さんに聞いた。」
お父さんは雑誌から目を離さずに、そう言った。
「水平対抗エンジンの『ボクサーサウンド』のことを調べていたんだ。」
「そうだとは思っていたけどね。ここに来る人たちは、よく話題にするからね。あの音。」
「この前は、隣の県の『スバル・インプレッサ』のオーナーさんも呼んでくれたしね。」
あのインプレッサの排気音はしっかりと覚えていた、せっかくなのでスマホで動画も撮っておいた。
「どうだった、あの音?」
お父さんは、今 初めてその音について、僕に感想を尋ねた。
今日はあの日から、10日くらい経っているだろう。
「うん、僕は別にそれほど良い音だとは思わなかったけどね。」
「ふぅーん、そうか。音は好みがあるからな。」
お父さんはそぅ言って、ビールをグイッと飲み、続けて言った。
「良いと思わなかったら、それは〈お前にとって〉は良い音じゃないんだ。」
「うん、そうだね。僕とっては良い音じゃなかった。」
音に関しては、お父さんとはこれ以上何も話すことは無い気がした。
だけど、せっかくなので昨夜までに僕が調べたことを、お父さんに聞いてもらいたかった。
「水平対抗エンジンのボクサーサウンドって、スバルは最初からそんな音を出そうと設計したワケじゃないみたいだね。」
「そうみたいだな。水平エンジンで排気管を全部同じ長さにするのは大変だから、諦めて不等長のまま市販したら、その音が結果的に車好きにウケたみたいだ。」
やはり、お父さんはスバルの水平エンジンのこともよく知っている。
「排気管の長さが揃っていない不等長のエキマニは、性能的には劣っているから今は採用してないみたいだね。」
「うん。お前の86のエンジンは水平対抗だけど、等長エキマニが付いてるからな。ドロドロなんて音はしない。」
「競技での記録を調べたら、WRC(世界ラリー選手権)でも2000年代前半までだね。インプレッサが不等長エキマニで、ボクサーサウンドを奏でていたのは。」
僕は書籍で調べた内容をお父さんに話した。
「くくく…よく調べたな、そこまで(笑) 」
お父さんは、大好きな漫画『湾岸ミッドナイト』に出てくる〈地獄のチューナー・北見淳〉の口マネをしてそう言った。
「WRCでは2000年中盤からは、効率の良い『等長エキマニ』へ移行してるね。」
漫画の口マネにツッコミを入れると、その後が長くなるので僕はそれには触れなかった。
「エキマニは、ノーマル車は生産コストを重視して不等長なのが一般的で、等長エキマニはチューニングパーツとして社外品で売ってるよな。」
「うん。だから僕の車みたいに、等長エキマニが最初から付いてるのに、それを高いお金を出して不等長に付け替えるって、凄く『ナンセンス』だなって気がするんだ。僕は。」
僕はここまで言って、ペットボトルのコーラを一口飲む。
「効率が悪くなっても、あの音が好きって人なら、付け替えるかもしれないけどな。」
「うん。お父さんの車仲間のオジサンたちが86やBRZを買ったら、社外品の不等長エキマニに交換すると思うな。」
「くくく…そうだな、一人残らず替えちまうだろうな(笑) 」
お父さんは、また北見淳の口マネをしてそう言った。
一人でやっててもかなり楽しそうだから、よっほど好きなんだろうな『湾岸ミッドナイト』。
そして、ビールを飲みスナック菓子を口に入れる。
僕もコーラを飲みスナックに手を出す。
…さてと。
今夜のお父さんとのお話しの『導入』は、このあたりでもぅ充分だろう。
そろそろ本題に入らなければならない。
僕は意を決し、お父さんに向かいこう切り出す。
「ねぇ、もし お父さんが僕の86のオーナーだったらさぁ、不等長エキマニに交換する?」
ネットや書籍に書いてあることは、あくまでも一般論だ。
人と人との会話で大事なのは『自分ならどうする・貴方ならどうする』という、お互いの考えや思いを相手に公開することだ。
僕は今の愛車86を探している時から、そういうことをお父さんから学んだ気がする。
だからこそお父さんも、僕が知識や情報を整理するまで、何も語らずにいてくれたのだと思う。
僕は『等長から不調長へのエキマニ交換はナンセンス』と言う結論をお父さんに話した。
次はお父さん個人の考えを、僕が聞く番なのだ。
【 TORQUE文学:頭文字Torque ⑥ 】へ続く。
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投稿を表示全く思いませんね💥😀🍺💦そんなお金があるならスーパーチャージャーとかターボ化‼️
私が86買ったら最初にやることは、、、何だろう💥😀⁉️
ある意味考えさせられる良いお話です💥😀👍🍺
シートポジションかも知れませんね。
運転する姿が綺麗な人は本当に上手いです🚗💨