TORQUEトーク

2026/04/12 13:20

【 TORQUE文学:湾岸トルクナイト ③ 】

【 TORQUE文学:湾岸トルクナイト ② 】より続き。
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深夜の大阪湾岸線。
俺『にせもん』の黄色いスカイラインと『お嬢』と呼ばれる美人お姉様の白いポルシェのランデブー走行は、今日で4回目になっていた。
2回目の走行から俺達の走りの様子は、ハンズフリーで通話状態にした俺のスマホから、知人の『むっちゃ』に向かって送話されている。
俺がしゃべったことは、むっちゃによってリアルタイムでSNSサイト・TORQUE SMILEに投稿され、いつしかそれは『湾岸トルクナイト』と呼ばれるようになっていた。
約200Km/h前後で走る俺のスカイラインの後ろを、お嬢の白いポルシェが追尾するというのが、はじめて遭遇してから今まで変わらない、いつもの走行パターンだ。
今日も俺が湾岸線に上がってすぐに現れたということは、俺がいつココを走るのかを正確に知っていることに他ならない。
お嬢がその情報を、TORQUE SMILEから入手しているのは明らかだ。
俺とむっちゃが発信する『湾岸トルクナイト』の投稿には〈 お嬢の目的は何なのだろうか? 〉というコメントも数多く寄せられていた。
だが当の本人の俺には、そのあたりのことにはまるで関心が無かった。
お嬢にどんな理由があれ、俺と彼女が同じ時間・同じ場所・同じ速度を共有して走っているという現実は、何も変わらない。
俺はそのこと自体が十分意味のあることだと感じている。
こういう感情を、他の人間に口で説明するのはとても難しい。
俺の語彙力では不可能なので、最初から口にしないことにしている。
俺とお嬢のランデブー走行はいつも、湾岸5号線の中島本線料金所から4号線の出島ICまでの約16Kmの区間だ。
この区間をガチでタイムアタックをしている連中の中でも、トップクラスの者達は4分弱で駆け抜けてしまう。
彼らのアベレージスピードは250Km/hということになる。
俺がお嬢と走るペースでは、同じ区間を走るのに約5分弱だから、平均時速は200Km/hを下回る。
それでも、制限速度の2倍近いスピードで走り続けている俺達2台は、一般車から見れば競争しているように見えるのは間違い無いだろう。
俺はそのことに対しても、どうでもイイと思っている。
どこの誰にどう見られようと、やっている事は二人とも最高速度違反なのだ。
だいの2名の大人が法規を破り、深夜の高速道路で車を猛スピードで走らせている。
その暴走行為という事実があるだけなのだ。
どこにも正当化できる理由は無い。
ランデブー走行4回目の今夜も、お嬢のポルシェは俺のスカイラインの後ろを、付かず離れず着いて来る。
今夜もこのまま、俺がゴールにしている出島IC手前で俺を抜き去り、そのまま湾岸線を走り続けるのだろう。
(このまま出島ICを降りずに、お嬢の後ろを追ってみようか…)
実は前回3回目のランデブー走行の終了時に、俺は一瞬だけそう思ったが実行しなかった。
やめた理由は特に無いが、その先を知るのが怖いような気がしたのだ。
(いったい俺は何を恐れたのか?)
今 お嬢とニ台で深夜の湾岸線を200Km/hで走りながら、自問自答してみる。
すぐに答えは見つかった。
自分が決めたゴールを通り過ぎてまで彼女を追ってしまえば、お嬢は二度と俺の側に現れなくなる気がしたのだ。
俺が自分が決めた区間しか走らないと安心しているからこそ、お嬢はいつも俺をゴール手前で抜き去って行くのだろう。
ならば…。
俺はむっちゃと通話状態になったTORQUEに接続してある、ヘッドセットのマイクに向かってこう言った。
「今からお嬢に前を走らせる。」
俺の言葉を聞いたまっちゃは、さっそくTORQUE SMILEにそう投稿しているだろう。
俺は踏み込んでいたアクセルを緩め、わずかに減速して自分のスカイラインを大きく路肩側に寄せる。
〈 今からオマエが前を走れ。 〉
という俺からお嬢への指示だ。
お嬢は右に車線を変更してポルシェを加速させ、俺の隣に車を並べる。
スカイラインの真横でポルシェを並走させながら、うかがうような表情をこちら側を向けた。
〈 イイのね?〉
と言う心の声が聞こえた。
俺がコクリと頷くと、お嬢はスルスルと車を進めた。
「ポルシェが前に出たっ!」
そぅ むっちゃに伝えたその刹那っ、
「ギュアァーーーーーーーッ!!!」
という凄まじい轟音とともにグンと車体を沈めたポルシェは猛然と加速をはじめる。
その姿はカタパルトから発射されたジエット戦闘機を想像させた。
(なんて加速しやがるっ、どんだけパワー出てんだあのポルシェっ!)
とても200Km/h近くからのダッシュとは思えない勢いで、爆音だけを残し俺のスカイラインを置き去りにする。
「はじめやがったっ、アッという間に離されたっ!」
俺も一瞬遅れて車線の中央に戻り、スカイラインのアクセルを床まで踏みつけ、お嬢のポルシェを追撃体制に入る。
「やっぱり三味線ひいてやがったぜ、お嬢の野郎っ!」
そうむっちゃに言い放なった俺は、久しぶりの興奮を覚える自分を懐かしく思った。
「あっ!にせもんさん、あんまり熱くなっちゃダメですからねっ!」
そう言う むっちゃの声にも熱がこもっているのが分かる。
「あぁ、十分気をつけるさ。どっちが事故ってもイヤだしな。」
むっちゃからの返事は無いが、俺の言葉をキーボードでタイプする、カタカタという音が聞こえた。
(さぁ、お嬢さん。今からその白い尻、タップリ拝がませてもらうぜっ!)
俺の前を行くお嬢のポルシェは、一般車を右に左にかわしながら踊るように疾走する。
見事なライン取りだと感心する。ステアリング捌きに迷いが無い。
車もしっかり仕上がっているのが、後ろから見ているとよく分かる。
とは言え、お嬢の尻ばかりに見惚れているわけにはいかない。
スカイラインのスピードメーターは230Km/hを指している。
この速度を保ったまま走り続けるには、一瞬も気を抜けない。
俺は一般車を巻き込まない事を最優先にして、先行するお嬢を全力で追う。
長い直線区間に入り、お嬢の白いポルシェはさらに加速する。
俺とお嬢の2台の距離はジワジワと開いていく。
「クワァーーーーーーーーッ!!!」
聞いたこともないほどの甲高いエキゾーストノートを響かせながら、白いポルシェは独走態勢に入る。
「ストレート、アクセル全開250Km/ h。ダメだ、ドンドン離されてくっ! 」
「えぇっ! ストレートで離されてくって?にせもんさんのスカイラインが…」
むっちゃの声からは、信じられないというような響きを受ける。
そんな会話をしているうちにも2台の距離は開き続け、とうとうお嬢のポルシェは俺の視界から消えた。
「今 コッチは280Km/h、お嬢はだいぶ前に行かれた。もぅ追いつけそうにない、スローダウンに入る。」
「…了解…お疲れ様です…。」
声とともにキーボードを叩く音がした。
俺はアクセルを緩め、200Km/h以下に速度を落とし走行を続けた。
(途中から追ってこなくなった俺のことを、お嬢は心配しているだろうか?)
そんな考えが頭をよぎったが、今夜の事は全てむっちゃが『湾岸トルクナイト』に投稿している。
だから俺が事故を起こしたのでは無いという情報は、すぐに彼女に伝わるだろう。
「アハハッ…フフフッ…ヘへヘッ…ハハハッ…。」
緊張が解けると、なぜだか途端に笑いが込み上げて来た。
(コイツは傑作だ。俺も車もまるで歯が立たない、完敗だ。)
なんだか少し嬉しいような、そんな不思議な気持ちにもなっていた。
「フフッ…ハハッ…ヘヘッ…」
俺は深夜の大阪湾岸線で独り、笑ったまま愛車をゴールまで走らせた。

【 TORQUE文学:湾岸トルクナイト ④ 】へ続く。
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1件のコメント (新着順)
にしもん@50s pro バッジ画像
2026/04/12 19:02

面白い💥😀🍺✨
このまま単行本にして売っても売れるかも知れません😀💥👍

非日常な世界観が出ています‼️

福井からからの北陸道ではノーマルの180リミッターで走ってる🚗が多数いて初めて行ったときは驚きました😀😀💦が、2回目からはそれが普通とわかったので全開です

きっと地元民以外は信じてもらえないと思いますが、、前の車も後ろの車も数分間リミッターに当たったまま離れずに走ってるのです‼️

その辺りはSYさんや、親分さんが詳しいかも😀💥


S.Y バッジ画像
2026/04/13 16:43

確かに北陸道はアベレージ高いかも!?🤔
付かず離れずが続くとスピード感覚が麻痺しがちです。😆
でも油断してるとオービス📸や覆面🚔がいるので要注意!
今回の北陸遠征でも捕まってるのを目撃しました…。😰

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