TORQUEトーク

2026/04/23 11:47

【 TORQUE文学:頭文字Torque ③ 】

【 TORQUE文学:頭文字Torque ② 】より続き
https://torque.kyocera.co.jp/chats/wsvs33qwgnqylc5j

僕がはじめての愛車『トヨタ86』に乗りはじめてから、やっと半年が過ぎようとしていた。
『やっと…』と言っていいのか『はやくも…』と言っいいのか、チョッと微妙な気持ちもある。
なにせ、予算を大幅に超えた個体を購入してしまったから、毎月のローンの返済もまだまだ残っている。
そのことだけで見れば『やっと6回分の返済ができた。』とうことになる。
だが、僕の『スポティーカー乗り』のキャリアとしては、半年というのは『キャリアゼロ』に限りなく等しい。
僕のお父さんたちが免許を取った頃は、わざわざ『スポーティーカー乗り』などと大袈裟な言い方しなくても、男子が普通自動車の免許を取れば、スポーティーな車に乗るのは当たり前だったようだ。
しかし今では、ほとんどの男子も免許は『オートマチック限定』を選ぶ。
それでも免許を取る者はまだイイほうで、僕の友人たちの中には、普通免許を取っていない者が少なくない。
自動車というものに対する価値観が、お父さんたちと僕の世代では、大きく違っているからだ。
僕はお父さんたちの影響で、車に対しては『古い価値観』の人間だろう。
それもかなりの…。
まぁ そんな僕でも、お父さんの車仲間たちの間では『期待の新人』として、皆さんには凄く可愛がれている。
もともと小さな頃から、お父さんのガレージを遊び場にしていた僕だ。
車に関する様々な知識や雑学なんかも、同世代の男子とは比べものにならないほど豊富だ…と自分では思っている。
もちろん、18歳になるまで普通自動の免許は取れなかったから、一般道で車を運転するはできなかった。
漫画『頭文字D』の主人公みたいに、毎朝無免許で豆腐の配達なんてのは、どだい無理な話しだ。
バイクにも興味はあったが、通っている高校では自動二輪の免許を取ることを禁止していた。
そしてなにより、お母さんの許可も下りなかった。
「車なら何してもかまわないけど、バイクは絶対乗っちゃダメ。免許もダメっ!」
だから、バイクは乗らなかった。と言うより、乗れなかった。
でも、週末になると集まって来る、車好きのオジサンたちと過ごしていると、バイクに乗れないこともそんなに気にはならなかった。
今の僕には愛車のトヨタ86がある。
長い間、想像でしかなかったドライビングの世界だけど、今はリアルに体感できることがとても嬉しい。
そう言えば、最近少し気になっていることがある。
それは、お父さんのガレージに集まる、車好きのオジサンたちから、言われるこんなことだ。
「せっかく水平エンジンの車に乗ってんだから、ボクサーサウンドさせなくっちゃなっ!」
オジサンたちの言っている『ボクサー』というのは、スポーツの拳闘の選手のことではない。
僕の愛車トヨタ86に搭載されているエンジンの、シリンダーレイアウトのことだ。
普通の直列型が縦にいくつかシリンダーが並んでいるのに対して、水平エンジンはそれが左右に振り分けたデザインになっている。
重いシリンダーやヘッドが水平に設置さるので、重心が下がり運動性能が向上するのが特徴だ。
僕のトヨタ86は車体はトヨタ製だが、エンジンはスバル社製だ。
日本自動車メーカーで水平エンジンを作っているのは、現在はスバル社だけらしい。
水平エンジンは製造にとてもコストがかかるそうで、普通は一部の高級スポーツカーにしか採用されない。
しかしスバル社は、一般的な車種にも水平エンジンを搭載している珍しいメーカーだ。
その昔、水平エンジンは独特の『ドロドロ~』という排気音をさせて走っていたそうで、車好きの人たちはその排気音を『ボクサーサウンド』と呼んでいたそうだ。
しかし、僕の愛車のトヨタ86からは、そんな『ドロドロ~』なんて音はしない。
水平エンジンが載っているのにだ。
僕がインターネットで調べた限りでは、どうやら水平エンジンの『ドロドロ~』という音は、4本ある排気管の長さが全て揃っていないために発生していたようだ。
そのために、特にその部分のパーツは『不等長エキゾーストマニーホールド』という名称が付いていた。
僕の86が『ドロドロ~』といった音がしないのは、この『不等長』のエキマニが付いていないからだ。
( 水平エンジンなら、不等長のエキマニを付けて、ドロドロした音を鳴らしたほうがイイのか?)
当然ながら、僕にはそんな疑問が湧いて来る。
そのことをオジサンたち言ってみると、
「まぁなっ、それが水平エンジンの味ってヤツだからねっ!」
と誰もが同じような回答を僕に返してくれる。
実際にどんな音がするものなのか?
運よくこのガレージに遊びに来るオジサンの中に、隣の県で『インプレッサ』というスバル車に乗っている知り合いがいる人が居た。
そのインプレッサには『不等長エキマニ』が付いているらしく、オーナーに頼んでここまで来てもらい、独特の『ボクサーサウンド』を聴かせてもらえることになった。
ガレージを訪れたスバル・インプレッサのオーナーは、僕が挨拶をするとすぐにエンジンをかけ、排気音を聴かせてくれた。
はじめて聴く不等長エキマニによって奏でられる『ボクサーサウンド』。
それは、僕には『ドロドロ~』というよりも『ボロボロ~』という感じで聴こえた。
「やっぱイイよねっ、水平エンジンはこの音しないとねっ!」
ガレージに集まっていたオジサンたちは、皆 口々にそんな感想を漏らしていた。
「この音が好きだから、スバル車から離れられないんですよ。私はっ!」
インプレッサのオーナーのかたも、皆からの言葉に、嬉しそうにエンジンを吹かしていた。
「どうも、わざわざ僕のためにこんな遠くまで来て下さり、ありがとうございます。」
僕はキチンとお礼を言った。
「そんなこと別にかまわないよ。それよりも、このお父さんのガレージ凄いねぇ、とても趣味でやってる人の設備とは思えないよっ!」
と言って驚いていた。
インプレッサのオーナーさんは、この後にガレージの車仲間の一員になり、1ヶ月に一度くらいの割合でここに訪れるようになった。
その日その場に居たオジサンたちのほどんどは、僕に向かってこんなことを言った。
「どうだいっ、不等長はイイ音すんだろっ。付けちゃいなよ、不等長エキマニっ!」
肝心の僕ほうはと言えば…。
皆さんからそんな風に言われても、それほど興味は沸かなかったというのが、正直な感想だ。
「…そうですねぇ…今後のカスタムメニューとして、検討はしてみますが(笑)」
と、イエスともノーとも取られない返答を、とりあえず誰にもしている。今は。
ちなみに、お父さんはというと、その件に関しては僕には何も意見はしなかった。
でも、僕は知っている。
お父さんが何も言わない本当の意味を。

【 TORQUE文学:頭文字Torque ④ 】へ続く。
https://torque.kyocera.co.jp/chats/g8nlswwkgbteniol

1件のコメント (新着順)
にしもん@50s pro バッジ画像
2026/04/23 17:56

ここの「にせもん」さんとは違いますが、私も基本的に個人の判断に任せてます😀🍺✨
私の経験を語っても子供達は理解出来ないだろうし、子供から何かの疑問が出た時に答えるようにしています🔧😀🍺

頭文字TORQUEは面白いですね😀👍🍺
メカ好きの親世代の気持ちが反映されています‼️

TORQUE G06
2023年10月発売。TORQUE初の3眼カメラ搭載。29項目の耐久試験にクリアしつつ、小型・軽量化を実現。