【 TORQUE文学:湾岸トルクナイト ① 】
真夜中の阪神高速道路・湾岸線。
ここは昔、車好きの飛ばし屋達がレースコースに見立て、毎晩のように競争していた。
いわゆる『大阪湾岸族』などと呼ばれていた者達だが、今では警察の取り締まりもキツくなり、その数は日に日に激減している。
俺は自ら改造した愛車のイエローのスカイランで、つい先程この湾岸線に上がった。
猛スピードで一般車を縫うように抜き去り、あっと言う間に速度は200Km/hに達していた。
一般車から見たら、まるで飛んでいるのではと錯覚するくらいの速さで駆け抜けていく。
とは言え、俺にしたらまだまだ流しているというレベルのペースだ。
なにしろ本気で走る時は、平均スピードは250Km/h・最高時速300Km/ h オーバーという、普通のドライバーが生涯一度も体験する事の無い速度に達しているのだから。
そんなペースで走っている俺のスカイラインの背後に、その車は距離をドンドン詰め接近して来る。
そして、バックミラーで確認できる距離まで近づくと、絶妙な車間距離を保ち俺の車を追尾する。
(…やっぱりな、また現れやがった…)
その車は真っ白な『ポルシェ』だった。
ここ最近は湾岸線に上がると、必ずと言っていいほどすぐに現れ、俺の後ろを最後まで着いてくる。
俺はスマホのハンズフリー機能を使って『むっちゃ』に電話をかけた。
今夜 湾岸に上がることを、あらかじめ伝えてあった むっちゃ は、すぐに電話に出た。
「モシモシ、にせもんだけど。ついさっき上がったら、直ぐに白のポルシェが後ろについた。」
「お嬢のポルシェですかっ?」
少し興奮した様子で むっちゃは言った。
「あぁ、お嬢のポルシェだろ。間違いない。」
「了解。さっそく『TORQUE SMILE』に書き込みますね、くれぐれも事故しないで。」
俺はむっちゃとの通話をそのままの状態にして、再び運転に集中する。
『TORQUE SMILE』というのは、京セラのスマートフォン『TORQUE』のファンが集まるSNSサイトだ。
俺『にせもん』も、通話先の『むっちゃ』も、TORQUE SMILE会員のニックネームなのだ。
TORQUEという硬派なスマホのファンサイトなので、中高年の男性会員が多く、当然バイクや車好きがたくさんいる。
俺もむっちゃも、その中の一人なのだ。
ちなみに俺 にせもんは〈フラワーにしもん〉という花屋を営んでいる、バイクと車と猫が好きなお父さんだ。
でもそれは、あくまでも表向きの姿にすぎない。
俺の裏稼業は『バイク・車の改造屋』。
そして、TORQUE SMILEでは、そちらの活動を投稿することも多い。
車の改造を商売にすること自体は、なにも違法ではないのだが、俺が相手にする客は、非合法の『賭けレース』の出場者たちなのだ。
堅気の者達とは違う以上、大っぴらに商売にはできないので、ひっそりとその筋の者達だけを相手にしている。
むっちゃ は、もともとは俺の裏稼業の客として知り合った。
彼は若い時には、賭けレースに参加する反社会組織の『雇われライダー』だったのだ。
賭けレースへの参加はバイクでも可能だから、昔はプロライダー崩れや走り屋の若者が、裏組織に雇われて参加していた。
むっちゃは、自分のバイク・スズキ刀を持ち込みという形で雇われていた。
その刀を俺が改造したのが、彼との付き合いの始めだった。
今のむっちゃは普通のサラリーマンだが、バイク・車好きは相変わらずだから、またいつか彼のマシンを手掛ける日が来るだろうと俺は思っている。
今 深夜の湾岸で、俺の後ろをピタリとついてくる白いポルシェとは、まだひと月経たないくらい前に、同じく深夜のこの環状線ではじめて遭遇した。
その時も、200Km/h近くで走っていた俺に追いつき、そのまま離れず後ろを着いてきた。
そしてゴール付近で俺を追い抜きざまに、こちらを向いて「ニヤリ」と笑った。
その横顔から、その白いポルシェのドライバーが女だと分かった。
品の良さそうな若いお姉様だ。それもかなりの美人。
そして走り去る直前に女は左腕を横に伸ばし、手に持ったスマートフォンをコチラに向けた。
まるで水戸黄門の印籠を掲示するように。
そのスマホは、発売されたばかりの『TORQUE G07』だった。
カラーはブルー。
(このお姉様、TORQUE SMILEの読者か会員だな。)
すぐさま俺はそう確信した。
さしずめ会員の俺『にせもん』に、挨拶に来たってところだろうか。
その時の様子を翌日 TORQUE SMILEに投稿したら、それを読んだ むっちゃから、
「また今度そのポルシェに遭遇したら、現場から電話して下さい。俺がリアルタイムでTORQUE SMILEに書き込みますからっ!」
という提案があった。
まぁ、書き込まれた内容を信じるか信じないかは、読み手の自由だ。
SNSサイトには、ニックネームという匿名で投稿している以上、投稿された内容の信頼性は保証できない。
要は読んだ者が面白ければそれで良いのだ。
それに、むっちゃが書いてくれれば、俺が翌日投稿しなくても記録として残る。
なにせ、本業の花屋は朝が早い。
前日の深夜に起こった出来事など、夕方 仕事が終わってビールを飲み出してしまえば…。
もぅすでに、記憶の彼方のお話しになってしまう俺なのだ。
こうして、俺のスカイラインと白いポルシェの走行は〈実況中継〉という形で、毎回TORQUE SMILEへライブ投稿されるようになった。
その投稿はいつしか『湾岸トルクナイト』と呼ばれるようになっていた。
そして、白いポルシェを駆る美人お姉様には『お嬢』というニックネームがついていた。
【 TORQUE文学:湾岸トルクナイト ② 】へ続く。
https://torque.kyocera.co.jp/chats/xxugipp2pkzvhrfn
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投稿を表示よくできてます💮
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示新たな展開😀☕💦
大阪湾岸って一度神戸まで行って降りなきゃいけないのでお金が掛かるんですよね🥲💧
伊勢◯岸道は今でこそグルっと回れますが、昔は開通してなくて誰も走ってなかったので、それ系の車が路駐してレッツゴー🚗💨
首◯高は迷子に😀💦