「嘘が付けないサラリーマン」 第146話~第155話
✦ 第146話
「翌朝、恋人として十二度目の朝」
✦ ① 目覚めた瞬間、“昨日の深まり”が胸に静かに残っている
朝。
薄い光がカーテン越しに差し込み、
部屋の空気をゆっくり温めていく。
秋川は目を開けた瞬間、
胸の奥がふっと震えた。
――昨日……
丘の上で寄り添って……
未来の話までして……
手を離したくないって……
お互いに思って……
その温度が、
まだ指先にも胸にも残っている。
十一度目の朝よりも、
胸の奥の温度が深い。
「……十二度目の朝……なんだ……」
その呟きが、
静かに胸に沈んでいく。
✦ ② 鏡の前――“恋人の顔”がさらに自然に浮かぶ
洗面台の鏡に映る自分は、
昨日よりも柔らかい表情をしていた。
目元が穏やかで、
頬が少し赤くて、
胸の奥が静かに高鳴っている。
――北見さん……
今日も……会える……
その事実だけで、
鏡の中の自分が
ほんの少しだけ恋人らしく見えた。
秋川は、
鏡の前でそっと微笑んだ。
「……会いたいな……」
その一言が、
朝の光に静かに溶けていった。
✦ ③ 通勤の準備――肩に残る“昨日の寄り添い”
服を選ぶ手が、
いつもより慎重になる。
派手じゃないけれど、
少しだけ綺麗に見える服。
「……これ……かな……」
着替えながら、
ふと肩に触れる。
そこに――
昨日寄り添った温度が
まだ残っている気がした。
秋川は、
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
「……恋人って……
こんなふうに……残るんだ……」
その呟きが、
朝の静けさに溶けていく。
✦ ④ 電車の中――名前を見るだけで胸が揺れる
通勤電車に揺られながら、
秋川はスマホを開いた。
北見からのメッセージはまだない。
でも、
それが逆に胸をくすぐる。
名前を見るだけで、
胸の奥がふっと震える。
――今日……
どんな顔で……見てくれるんだろう……
恋人として会う朝が、
もう十二度目。
その事実だけで、
胸が静かに高鳴る。
秋川は、
窓に映る自分の顔を見つめながら
そっと呟いた。
「……早く……会いたい……」
その一言が、
朝の光に静かに溶けていった。
✦ 第147話
「仕事終わり、さらに自然に距離を縮める」
✦ ① オフィス前――“待っていた”が言葉より先に伝わる
定時を過ぎ、
オフィスのざわめきがゆっくり薄れていく。
秋川がエレベーターを降りた瞬間、
北見がこちらを見つけた。
驚きではなく、
探していた人を見つけたような、
静かな安堵の目。
柔らかくて、
深くて、
“今日も一緒に帰る” ことを
当然のように受け止めている目。
「……お疲れさまです、秋川さん」
その声は、
完全に恋人の声だった。
秋川の胸が、
ふっと熱くなる。
「……お疲れさまです……」
その一言で、
二人の帰り道の空気が決まった。
✦ ② 歩き出す――距離が“意識しなくても”近い
オフィスを出て、
駅へ向かう道を並んで歩く。
今日はもう、
肩が触れそうで触れない距離じゃない。
気づけば、
自然に近い。
秋川は、
その自然さに胸がふっと揺れた。
――もう……
意識しなくても……
近くにいられるんだ……
北見は、
その揺れに気づいたように
歩幅を合わせてくる。
その優しさが、
恋人としての距離をさらに深くする。
✦ ③ 信号待ち――秋川が“無意識に”寄り添う
夕暮れの交差点。
信号が赤に変わり、二人は立ち止まる。
秋川は、
胸の奥の温度に背中を押されるように
そっと北見のほうへ身体を寄せた。
意識していない。
ただ、
自然にそうなった。
触れた瞬間、
胸が跳ねる。
北見は驚いたように目を瞬いたが、
すぐにその距離を
静かに受け止めた。
「……秋川さん……」
その声は、
喜びを抑えきれないほど柔らかかった。
秋川は、
小さく囁いた。
「……今日……
なんか……近くにいたくて……」
その一言で、
北見の目が静かにほどけた。
✦ ④ 駅へ向かう道――手が触れた瞬間、迷いが消える
歩き出すと、
風がふっと吹いて
秋川の手が揺れた。
その揺れに合わせるように、
北見の手がそっと触れた。
触れた瞬間、
胸がふっと震える。
昨日より自然で、
昨日より迷いがなくて、
昨日より深い。
北見は、
その手をそっと包み込みながら言った。
「……秋川さん。
今日……会えてよかったです」
秋川は、
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じながら
静かに返した。
「……私も……
北見さんに……会いたかったです……」
その一言で、
二人の距離はまたひとつ深まった。
✦ ⑤ 改札前――“離れたくない”が自然に滲む
駅の灯りが近づく。
改札の前で立ち止まると、
北見は秋川の手を
もう一度だけ強く握った。
「……またすぐ会いましょう」
その“すぐ”が、
胸の奥に静かに灯る。
指が離れる瞬間、
胸がきゅっと痛む。
でもその痛みは、
恋人としての距離が
確かに深まった証だった。
秋川は、
改札を通りながら
そっと呟いた。
「……もっと……近くにいたい……」
その言葉が、
夜の風に静かに溶けていった。
✦ 第148話
「翌朝、恋人として十三度目の朝」
✦ ① 目覚めた瞬間、“昨日の温度”が胸に静かに残っている
朝。
薄い光がカーテン越しに差し込み、
部屋の空気をゆっくり温めていく。
秋川は目を開けた瞬間、
胸の奥がふっと震えた。
――昨日……
自然に寄り添って……
手を繋いで……
離れたくないって……
お互いに思って……
その温度が、
まだ指先にも胸にも残っている。
十二度目の朝よりも、
胸の奥の温度が深い。
「……十三度目の朝……なんだ……」
その呟きが、
静かに胸に沈んでいく。
✦ ② 鏡の前――“恋人の顔”がさらに自然に浮かぶ
洗面台の鏡に映る自分は、
昨日よりも柔らかい表情をしていた。
目元が穏やかで、
頬が少し赤くて、
胸の奥が静かに高鳴っている。
――北見さん……
今日も……会える……
その事実だけで、
鏡の中の自分が
ほんの少しだけ恋人らしく見えた。
秋川は、
鏡の前でそっと微笑んだ。
「……会いたいな……」
その一言が、
朝の光に静かに溶けていった。
✦ ③ 通勤の準備――肩に残る“昨日の寄り添い”
服を選ぶ手が、
いつもより慎重になる。
派手じゃないけれど、
少しだけ綺麗に見える服。
「……これ……かな……」
着替えながら、
ふと肩に触れる。
そこに――
昨日寄り添った温度が
まだ残っている気がした。
秋川は、
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
「……恋人って……
こんなふうに……残るんだ……」
その呟きが、
朝の静けさに溶けていく。
✦ ④ 電車の中――名前を見るだけで胸が揺れる
通勤電車に揺られながら、
秋川はスマホを開いた。
北見からのメッセージはまだない。
でも、
それが逆に胸をくすぐる。
名前を見るだけで、
胸の奥がふっと震える。
――今日……
どんな顔で……見てくれるんだろう……
恋人として会う朝が、
もう十三度目。
その事実だけで、
胸が静かに高鳴る。
秋川は、
窓に映る自分の顔を見つめながら
そっと呟いた。
「……早く……会いたい……」
その一言が、
朝の光に静かに溶けていった。
✦ 第149話
「秋川の一言──『両親と……』 北見の動揺と胸の揺らぎ」
✦ ① 仕事終わりの帰り道──いつもより静かな秋川
夕暮れの道を並んで歩く二人。
いつもなら、
秋川は少し照れながらも
自然に寄り添ってくる。
でも今日は、
どこか言い出せないことを抱えているように
歩幅がほんの少しだけ小さい。
北見は気づいていた。
「……秋川さん、どうかしましたか」
その声は、
恋人としての優しさそのもの。
秋川は、
一度だけ深く息を吸ってから言った。
「……あの……
北見さん……
両親と……」
その瞬間、
北見の足が止まった。
✦ ② 北見の胸に走る“予想していなかった重さ”
「……両親と……?」
北見の声は、
いつもよりわずかに低く、
かすかに震えていた。
胸の奥に、
予想していなかった重さが落ちてくる。
“両親”
その言葉は、
恋人としての関係が
次の段階に進む可能性 を含んでいる。
秋川が、
自分の家族の話を
自分に向けて切り出そうとしている。
それだけで、
北見の心臓は静かに跳ねた。
✦ ③ 動揺──でも逃げたくない気持ち
北見は、
自分の胸の奥がざわつくのを感じた。
驚き。
期待。
不安。
喜び。
そして、
“自分でいいのか” という小さな怖さ。
全部が一度に押し寄せてくる。
でも──
逃げたいとは思わなかった。
むしろ、
秋川が自分にその話をしようとしてくれたことが
胸の奥で温かく広がっていく。
「……秋川さん……
その……続きを……聞かせてください」
声は震えていたが、
目はまっすぐだった。
✦ ④ 秋川の言葉──そして北見の胸の揺らぎ
秋川は、
少しだけ視線を落としながら言った。
「……両親と……
今度……会ってほしいって……
言われて……」
北見の呼吸が止まった。
胸の奥が、
一瞬で熱くなる。
“会ってほしい”
“両親が”
“自分に”
その意味を理解した瞬間、
北見の心臓は大きく跳ねた。
驚きと、
嬉しさと、
責任の重さと、
未来の気配。
全部が胸の奥で混ざり合い、
静かに揺れ続ける。
「……秋川さん……
本当に……僕で……いいんですか……?」
その声は、
今までで一番素直だった。
✦ ⑤ 秋川の答え──北見の動揺が“確信”に変わる
秋川は、
ゆっくり顔を上げて
北見を見つめた。
「……北見さんじゃなきゃ……
嫌です……」
その一言で、
北見の胸の揺らぎは
静かに、確かな形に変わった。
動揺はまだ残っている。
怖さもある。
でも、
それ以上に──
秋川の言葉が
胸の奥を強く、温かく満たしていく。
北見は、
震える声で言った。
「……僕も……
秋川さんの大事な人たちに……
ちゃんと……会いたいです……」
その言葉が、
夕暮れの風に静かに溶けていった。
✦ 第150話
「北見、家で動揺を噛みしめる」
✦ ① 帰宅──玄関で立ち尽くす
家に帰り、
靴を脱いだところで北見は動けなくなった。
玄関の静けさが、
さっきの言葉をそのまま反響させる。
「……両親と……会ってほしいって……」
胸の奥が、
ふっと熱くなる。
驚き。
喜び。
不安。
責任。
未来の気配。
全部が一度に押し寄せてきて、
呼吸が浅くなる。
北見は、
壁に手をつきながら小さく呟いた。
「……秋川さん……
本気で……僕を……」
その言葉が、
玄関の静けさに吸い込まれていく。
✦ ② リビング──ソファに沈み込む
ソファに座った瞬間、
身体の力が抜けた。
秋川の顔が浮かぶ。
あの、少し不安そうで、
でも決意を秘めた目。
“北見さんじゃなきゃ嫌です”
その言葉が胸の奥で何度も反響する。
北見は、
両手で顔を覆った。
「……そんなふうに……
言われたら……」
声が震える。
嬉しさが大きすぎて、
怖い。
怖さが大きすぎて、
嬉しい。
その矛盾が胸の奥で渦を巻く。
✦ ③ キッチンの灯り──自分の弱さと向き合う
水を飲もうと立ち上がり、
キッチンの灯りをつけた瞬間、
北見はふと立ち止まった。
自分の手が、
わずかに震えている。
「……僕なんかが……
秋川さんの……ご両親に……」
言いかけて、
首を振る。
“僕なんか”
その言葉を使いたくない。
でも、
胸の奥にずっとあった劣等感が
静かに顔を出す。
30年同じ部署。
昇進もない。
地味で、
不器用で、
人付き合いも得意じゃない。
そんな自分が、
秋川の両親に会う。
その重さが、
胸にずしりと落ちる。
✦ ④ それでも──逃げたくない理由
北見は、
ゆっくり息を吸った。
逃げたい気持ちはある。
怖い気持ちもある。
でも──
逃げたくない。
なぜなら、
秋川が自分を選んでくれたから。
「……秋川さんが……
僕を……選んでくれたんだ……」
その事実だけで、
胸の奥がじんわり熱くなる。
怖さよりも、
嬉しさが勝つ。
不安よりも、
守りたい気持ちが勝つ。
北見は、
小さく呟いた。
「……会おう……
ちゃんと……向き合おう……
秋川さんの……大事な人たちに……」
その言葉は、
誰に聞かせるでもなく、
自分の胸に刻むためのものだった。
✦ ⑤ 夜の静けさ──揺らぎが“覚悟”に変わる
ベッドに横になっても、
胸の奥の揺らぎは消えない。
でも、
その揺らぎはもう “不安” ではなかった。
“覚悟” に変わりつつある。
秋川の笑顔。
秋川の声。
秋川の手の温度。
全部が、
北見の背中を静かに押してくれる。
「……秋川さん……
僕……ちゃんと……あなたを守りたい……」
その呟きが、
夜の静けさに溶けていった。
✦ 第151話
「秋川、両親の話をした後の夜」
✦ ① 帰宅──玄関で息を吐く
家に帰り、
鍵を閉めた瞬間、
秋川はそっと壁にもたれた。
胸の奥が、
まだ少し震えている。
「……北見さん……
両親と……会ってほしいって……」
自分の口から出たその言葉が、
頭の中で何度も反響する。
言えた。
でも、怖かった。
そして──
北見の目が、
驚きと戸惑いと、
それでも逃げない強さで揺れていた。
その表情が、
胸の奥に深く残っている。
✦ ② リビング──ソファに座ると、静かに涙が滲む
ソファに座った瞬間、
秋川の肩から力が抜けた。
緊張がほどけたせいか、
目の奥がじんわり熱くなる。
「……言っちゃった……
ついに……言っちゃった……」
声は震えていた。
両親の話をするというのは、
自分の人生の深い部分を
北見に差し出すこと。
それが怖くなかったわけじゃない。
でも──
北見のことを
“家族に紹介したい”
そう思ってしまった自分がいた。
その気持ちが、
胸の奥で静かに膨らんでいく。
✦ ③ キッチンの灯り──自分の気持ちを確かめる
水を飲もうと立ち上がり、
キッチンの灯りをつけた瞬間、
秋川はふと立ち止まった。
自分の手が、
わずかに震えている。
「……北見さん……
本当に……大事なんだ……」
言葉にした瞬間、
胸の奥がふっと熱くなる。
両親に会わせたいと思ったのは、
義務でも、
形式でもなくて。
ただ──
北見を
“自分の大切な人たちに知ってほしい”
そう思ったから。
その気持ちが、
自分でも驚くほど自然だった。
✦ ④ ベッドの上──北見の表情が何度も浮かぶ
ベッドに横になると、
北見の顔が浮かぶ。
驚いた目。
戸惑った目。
でも逃げなかった目。
そして──
最後に見せた、
あの真剣な表情。
「……僕で……いいんですか……?」
その言葉が胸に刺さる。
「……いいに決まってる……
北見さんじゃなきゃ……嫌……」
小さく呟いた声が、
夜の静けさに溶けていく。
✦ ⑤ 夜の深まり──“未来”が静かに形を持ち始める
目を閉じると、
未来の輪郭がぼんやり浮かぶ。
北見と並んで歩く姿。
両親と話す北見の姿。
笑っている自分。
怖さはある。
不安もある。
でも──
それ以上に、
胸の奥が温かい。
「……北見さんと……
ちゃんと……進みたい……」
その呟きが、
静かな夜にそっと沈んでいった。
✦ 第152話
「翌朝、両親の話を引きずる朝」
✦ ① 秋川──目覚めた瞬間、胸の奥がまだ熱い
朝。
薄い光がカーテン越しに差し込む。
目を開けた瞬間、
秋川は胸の奥がふっと熱くなるのを感じた。
――言っちゃったんだ……
両親のこと……
北見さんに……
昨日の帰り道の光景が、
そのまま胸に蘇る。
北見の驚いた目。
戸惑い。
でも逃げなかった強さ。
思い出すだけで、
胸がじんわり温かくなる。
けれど同時に、
小さな不安が喉の奥に残っている。
「……大丈夫……だったかな……」
その呟きが、
朝の静けさに溶けていく。
✦ ② 北見──鏡の前で深呼吸する
洗面台の鏡に映る自分を見つめながら、
北見はゆっくり深呼吸した。
目の奥に、
昨夜の揺らぎがまだ残っている。
“僕で……いいんですか……?”
自分の声が頭の中で反響する。
秋川の答え。
あの真っ直ぐな目。
“北見さんじゃなきゃ……嫌です……”
その言葉が胸の奥に静かに沈んでいく。
嬉しさと、
責任と、
未来の気配。
全部が混ざり合って、
胸の奥がまだ落ち着かない。
「……ちゃんと……向き合わないと……」
鏡の中の自分に、
小さく言い聞かせた。
✦ ③ 秋川──通勤の準備がいつもより慎重になる
服を選ぶ手が、
いつもよりゆっくり動く。
派手じゃないけれど、
少しだけ綺麗に見える服。
「……今日……
北見さん……どんな顔してるかな……」
不安ではない。
でも、
昨日の話が二人の間に
静かな余韻を残しているのは確か。
肩に触れたときの温度も、
手を握ったときの強さも、
全部が胸に残っている。
✦ ④ 北見──電車の中で秋川の名前を見るだけで胸が揺れる
通勤電車の揺れの中、
北見はスマホを開いた。
秋川からのメッセージはまだない。
でも、
名前を見るだけで胸がふっと揺れる。
昨日の言葉が、
まだ胸の奥で温かく残っている。
――秋川さんの……
大事な人たちに……会う……
その現実が、
静かに重く、
でも確かに嬉しい。
「……今日……
ちゃんと……話そう……」
北見は、
小さく呟いた。
✦ ⑤ 二人──同じ想いを抱えたまま、同じ朝を迎えている
秋川は、
「大丈夫だったかな……」
という不安を胸に。
北見は、
「ちゃんと向き合わないと……」
という覚悟を胸に。
二人は別々の場所で、
同じ朝の光を浴びている。
そして──
同じ人のことを想っている。
その静かな重なりが、
二人の関係をまたひとつ深くする。
✦ 第153話
「次の休日、両親に会う日程を決める」
✦ ① 待ち合わせ──昨日とは違う“静かな緊張”
休日の午後。
駅前の広場に現れた北見は、
秋川を見つけた瞬間、
ふっと表情を緩めた。
でもその目には、
昨日までとは違う
静かな緊張 が宿っている。
秋川も、
その空気を感じ取って
胸がふっと揺れた。
「……北見さん……」
「……秋川さん……」
声は柔らかいのに、
どこか慎重で、
大切な話を抱えている二人の声だった。
✦ ② 並んで歩く──沈黙が“話したいこと”を示す
駅から少し歩いたところの
静かなカフェへ向かう道。
二人とも、
いつもより言葉が少ない。
でも、
沈黙が気まずいわけじゃない。
むしろ──
“話したいことがある”
その気配が、
二人の間に静かに満ちている。
秋川は、
胸の奥でそっと息を吸った。
「……北見さん……
昨日の……あの話……」
北見は、
歩みを少しだけ緩めた。
「……はい……
僕も……話したいと思っていました」
その声は、
揺れているのに、
逃げる気配がまったくない。
✦ ③ カフェの席──秋川が切り出す
窓際の席に座り、
飲み物が運ばれてきたあと。
秋川は、
両手を膝の上でそっと重ねて
静かに言った。
「……両親が……
北見さんに……会いたいって……
言っていて……」
北見は、
ゆっくり頷いた。
胸の奥が、
また静かに跳ねる。
「……はい……
僕も……ちゃんと……会いたいです」
その言葉は、
昨日よりずっと強くて、
ずっと優しかった。
秋川の胸が、
ふっと温かくなる。
✦ ④ 日程を決める──“未来”が静かに形になる瞬間
秋川は、
スマホを取り出しながら言った。
「……来月の……
この日曜日……
どうですか……?」
北見は、
その日付を見つめて
小さく息を吸った。
覚悟と、
緊張と、
嬉しさが混ざった呼吸。
「……大丈夫です……
その日……伺わせてください」
その瞬間、
秋川の胸の奥が
じんわり熱くなる。
日程が決まっただけなのに、
未来がひとつ形になった気がした。
✦ ⑤ 帰り道──手を繋ぐ温度が“決意”に変わる
カフェを出て、
夕暮れの道を並んで歩く。
自然に、
迷いなく、
指が絡む。
いつもより、
少しだけ強く。
秋川は、
その温度に胸が震えた。
「……北見さん……
ありがとう……」
北見は、
手を握り返しながら言った。
「……僕のほうこそ……
秋川さんの大事な人たちに……
会わせてくれて……
ありがとうございます」
その言葉が、
夕暮れの風に静かに溶けていった。
✦ 第154話
「両親に会う前夜、秋川の想い」
✦ ① 帰宅──玄関でそっと息を吐く
家に帰り、
鍵を閉めた瞬間、
秋川は小さく息を吐いた。
胸の奥が、
ずっと静かに高鳴っている。
明日──
北見が、
自分の両親に会う。
その事実が、
現実として胸に落ちてくる。
「……いよいよ……なんだ……」
呟いた声は、
少し震えていた。
✦ ② リビング──ソファに座ると胸が熱くなる
ソファに腰を下ろした瞬間、
今日の北見の表情が浮かぶ。
慎重で、
でも逃げなくて、
まっすぐで。
“その日……伺わせてください”
あの言葉が、
胸の奥で何度も反響する。
秋川は、
両手を胸の前でそっと重ねた。
「……北見さん……
本当に……来てくれるんだ……」
その実感が、
胸の奥をじんわり温めていく。
✦ ③ キッチンの灯り──自分の気持ちを確かめる
水を飲もうと立ち上がり、
キッチンの灯りをつけた瞬間、
秋川はふと立ち止まった。
自分の手が、
わずかに震えている。
緊張ではない。
怖さでもない。
これは──
大切な人を家族に紹介する前夜の、特別な震え。
「……北見さんを……
ちゃんと……家族に見てほしい……」
言葉にした瞬間、
胸の奥がふっと熱くなる。
✦ ④ ベッドの上──北見の姿を思い浮かべる
ベッドに横になると、
北見の姿が浮かぶ。
少し不器用で、
真面目で、
優しくて、
自分の言葉に真剣に向き合ってくれる人。
両親に会うと言ったときの、
あの揺れた目。
そして、
その揺れを押し越えて
自分の手を握ってくれた温度。
秋川は、
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
「……北見さん……
明日……大丈夫かな……
緊張してるかな……」
心配と、
愛しさが混ざった声が
夜の静けさに溶けていく。
✦ ⑤ 夜の深まり──“未来”が静かに形を持ち始める
目を閉じると、
未来の輪郭がぼんやり浮かぶ。
北見が家の玄関に立つ姿。
両親と話す姿。
笑っている自分。
怖さはある。
不安もある。
でも──
それ以上に、
胸の奥が温かい。
「……北見さんと……
ちゃんと……進みたい……」
その呟きが、
静かな夜にそっと沈んでいった。
✦ 第155話
「当日、秋川の家の前に立つ」
✦ ① 家の前に立った瞬間、呼吸が止まる
北見は、
秋川の家の前に立った。
玄関の白いドア。
整えられた植木。
静かな住宅街の空気。
そのすべてが、
胸の奥にずしりと落ちてくる。
“ここに……入るんだ……”
その現実が、
呼吸を浅くする。
手に持った紙袋が、
わずかに震えている。
中には、
秋川の母が好きだと聞いた和菓子。
選ぶのに30分かかった。
✦ ② 逃げたい気持ちと、進みたい気持ち
北見は、
玄関の前で立ち尽くしたまま
小さく息を吸った。
逃げたい気持ちがある。
怖い気持ちもある。
“自分なんかが”
という言葉が、
胸の奥で静かに顔を出す。
でも──
それ以上に強い気持ちがある。
秋川のために、ちゃんと向き合いたい。
その想いが、
足を前に押し出す。
✦ ③ インターホンに手を伸ばすが、触れられない
インターホンに手を伸ばす。
でも、
指先がボタンに触れる直前で止まる。
胸の奥が、
ぎゅっと縮む。
「……秋川さん……
本当に……僕で……いいんですか……」
昨夜の自分の言葉が、
頭の中で反響する。
秋川の答えも。
“北見さんじゃなきゃ……嫌です……”
その言葉が、
胸の奥を静かに温める。
震えが、
少しだけ収まる。
✦ ④ 深呼吸──秋川の笑顔を思い出す
北見は、
ゆっくり深呼吸した。
昨日の秋川の笑顔。
手を握ってくれた温度。
「ありがとう」と言った声。
全部が、
背中を押してくれる。
「……行こう……
逃げないって……決めたんだ……」
小さく呟いた声が、
玄関前の静けさに溶けていく。
✦ ⑤ インターホンを押す瞬間、胸が跳ねる
北見は、
もう一度インターホンに手を伸ばした。
今度は、
迷わなかった。
指先がボタンに触れた瞬間、
胸が大きく跳ねる。
ピンポーン。
その音が、
人生の節目のように響いた。
数秒後──
ドアの向こうから
秋川の足音が近づいてくる。
北見の胸は、
今までで一番強く震えていた。
2026/05/22 18:27
2件のコメント
(新着順)
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示北見くん、ついに秋川さんの家に‼️でも、でも、両親が会いたいと言ってくださったのだから、きっと大丈夫👍️
粗相がないよう、頼むよひとつ💦
今日のイチオシフレーズ
「北見の目が静かにほどけた」
「洗面台の鏡に映る自分は、昨日よりも柔らかい表情をしていた」
ワイの曇った眼もほどけました。
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示🌏ぺた
🦊ぴと