TORQUEトーク

2026/05/23 21:09

「嘘が付けないサラリーマン」  第166話~第175話


✦ 第166話
「秋川の母、追加の質問」
✦ ① 重くなった空気を、母がそっと和らげる
父の“未来”への問いが終わり、
北見の返答が静かに落ち着いたあと──

リビングには、
少しだけ重い沈黙が落ちた。

その沈黙を壊さないように、
しかし優しく空気を整えるように、
秋川の母が湯呑みをそっと持ち上げた。

そして、
柔らかい声で口を開く。

「北見さん……
 ひとつ、聞いてもいいですか」

その声は、
父の質問とは違う温度を持っていた。

✦ ② 母の視線──“人としての優しさ”を確かめる目
母は、
北見の目をまっすぐ見つめた。

その視線は優しい。
でも、
“娘を大切にしてくれる人かどうか”
を静かに見極める目。

秋川は、
母の質問の気配を感じ取り、
そっと北見の袖をつまんだ。

北見は、
その温度に支えられながら
母の言葉を待つ。

✦ ③ 母の質問──“娘の弱さ”に触れる一言
母は、
湯呑みを置き、
静かに言った。

「……あの子は……
 強いように見えて……
 本当は、とても繊細なところがあります」

秋川は、
思わず息を呑んだ。

母は続ける。

「仕事で無理をしたり、
 人に気を遣いすぎたり……
 自分のことを後回しにしてしまう子なんです」

その言葉は、
母としての“心配”そのもの。

そして──
核心に触れる。

「北見さん。
 そんなあの子を……
 どうやって支えていきたいと思っていますか」

父の質問よりも柔らかい。
でも、
娘の弱さを理解しているか
という、
母として最も大切な問い。

✦ ④ 北見の返答──震えながらも、深い想いが滲む
北見は、
一度だけ深く息を吸った。

そして、
ゆっくりと母の目を見る。

「……秋川さんが……
 無理をしているときは……
 気づける人間でいたいと思っています」

声は震えている。
でも、言葉は真っ直ぐ。

「……あの人は……
 人のために頑張りすぎるところがあって……
 自分のことを後回しにしてしまう……
 そんな姿を……
 僕は、何度も見てきました」

秋川は、
胸の奥が熱くなり、
そっと視線を落とした。

北見は続ける。

「……だから……
 無理をしないように……
 そばで支えられる人間でいたいです。
 あの人が……
 安心して弱さを見せられるような……
 そんな存在でいたいと思っています」

その言葉は、
震えているのに、
どこまでも優しくて、
どこまでも真剣だった。

✦ ⑤ 母の反応──“受け入れの最終段階”が始まる
母は、
北見の言葉を聞き終えたあと、
静かに目を細めた。

そして、
ゆっくりと微笑む。

「……そうですか。
 あの子のことを……
 そんなふうに見てくださって……
 本当に……ありがとうございます」

その声は、
ただの礼ではない。

“あなたを、娘の大切な人として
 受け入れ始めています”

という、
母としての静かな宣言。

秋川は、
その母の表情を見て
胸の奥がふっと温かくなる。

北見は、
深く頭を下げた。

「……こちらこそ……
 ありがとうございます……」

その声は、
震えているのに、
どこまでも誠実だった。

✦ 第167話
「秋川の母、娘の気持ちを確かめる」
✦ ① 母が湯呑みをそっと置き、空気が柔らかく変わる
父の質問が終わり、
北見の返答が静かに落ち着いたあと──

秋川の母は、
湯呑みをそっと置いた。

その仕草だけで、
リビングの空気が
少しだけ柔らかくなる。

母は、
娘の横顔を一度だけ見つめ、
静かに口を開いた。

「……ねえ、麗奈」

その声は、
優しくて、
でもどこか“確かめる”温度を持っていた。

✦ ② 母の視線──“娘の本心”を読む目
秋川の母は、
娘の目をまっすぐ見つめた。

その視線は、
責めるものではない。
問い詰めるものでもない。

ただ──
“あなたは、この人といて幸せなの?”
それを静かに確かめる目。

秋川は、
その視線を受けて
胸の奥がふっと熱くなる。

✦ ③ 母の質問──娘の心に触れる一言
母は、
柔らかく微笑みながら言った。

「麗奈……
 あなたは……
 北見さんと一緒にいて……
 どうなの?」

その問いは、
とてもシンプル。

でも、
娘の人生を左右する“本心”を問う質問。

秋川は、
一瞬だけ息を呑んだ。

北見は、
その問いが自分に向けられたものではないと理解し、
静かに秋川を見守る。

✦ ④ 秋川の返答──言葉より先に“表情”が語る
秋川は、
母の目を見つめたまま
ゆっくりと息を吸った。

そして──
言葉より先に、
表情が変わった。

頬が少し赤くなり、
目が柔らかく揺れ、
唇がかすかに震える。

その表情だけで、
母には十分だった。

でも秋川は、
静かに言葉を紡ぐ。

「……お母さん……
 私……北見さんといると……
 すごく……安心するの……」

その声は、
震えているのに、
どこまでも真っ直ぐ。

「……無理しなくていいって……
 思える人なの……」

その言葉を聞いた瞬間、
北見の胸が強く震えた。

✦ ⑤ 母の反応──“娘の幸せ”を確認した瞬間
秋川の母は、
娘の言葉を聞き終えたあと
ゆっくりと目を細めた。

そして、
静かに微笑んだ。

「……そう。
 それなら……よかった」

その一言は、
ただの返事ではない。

“あなたが幸せなら、それでいい”
という、
母としての深い安心。

秋川は、
その母の表情を見て
胸の奥がふっと温かくなる。

北見は、
その空気を感じ取り、
深く頭を下げた。

✦ ⑥ 母の心の中──“この人なら大丈夫かもしれない”
母は、
二人の表情を見比べながら
心の中でそっと呟く。

――麗奈……
 本当にこの人が好きなのね……

――そして……
 この人も……
 あの子を大切に思ってくれている……

その気づきが、
母の胸に静かに広がる。

“この人なら……
 あの子を任せてもいいかもしれない”

その“受け入れの最終段階”が、
母の中で静かに始まった。

✦ 第168話
「秋川の父、最後の確認」
✦ ① 母の微笑みのあと、空気が再び静かに締まる
母が娘の気持ちを確かめ、
優しく微笑んだあと──

リビングに、
短いけれど深い静寂が落ちた。

その静寂を破ったのは、
秋川の父が湯呑みを
コトリ、と置く音。

その小さな音だけで、
空気がわずかに締まる。

秋川は、
父が“最後の質問”に入るのを感じ取り、
そっと北見の袖をつまんだ。

✦ ② 父の視線──“覚悟の最終確認”をする目
秋川の父は、
北見をまっすぐ見つめた。

その目は厳しい。
でも、敵意ではない。

“この男は、本当に娘を大切にできるのか”
それを確かめるための、
父としての最後の視線。

北見は、
その視線から逃げなかった。

喉が乾く。
手が汗ばむ。
でも、目はそらさない。

✦ ③ 父の最後の質問──核心の一言
父は、
低く、静かに口を開いた。

「……北見さん」

一拍置いて。

「……娘を……
 本当に幸せにできると思っていますか」

その問いは、
重い。

でも、
威圧ではない。

“覚悟を言葉にしてほしい”
という、
父としての最後の願い。

秋川は、
息を呑んだまま北見を見つめる。

母は、
静かに見守る。

✦ ④ 北見の返答──震えながらも、逃げない言葉
北見は、
深く息を吸った。

そして、
父の目をまっすぐ見た。

声は震えていた。
でも、言葉は真っ直ぐだった。

「……幸せに“できる”と……
 言い切れるほど……
 自信のある人間ではありません」

その正直さに、
父の眉がわずかに動く。

北見は続ける。

「……でも……
 幸せに“したい”と……
 本気で思っています。
 そのために……
 できることは全部したいと……
 そう思っています」

震えているのに、
どこまでも誠実で、
どこまでも真剣な声。

秋川は、
胸の奥が熱くなり、
そっと視線を落とした。

✦ ⑤ 父の沈黙──“受け止める時間”
父は、
すぐには返事をしなかった。

沈黙が落ちる。

その沈黙は、
北見を試すためではなく、
言葉を受け止めている沈黙。

北見は、
その沈黙の中でも
目をそらさなかった。

秋川は、
その横顔を見つめながら
胸の奥でそっと呟く。

「……北見さん……ありがとう……」

✦ ⑥ 父の答え──短いけれど、重い一言
やがて父は、
ゆっくりと頷いた。

そして、
静かに言った。

「……その気持ちがあるなら……
 それでいい」

その一言は短い。

でも、
その短さの中に
“認めた”
という重さがあった。

秋川は、
その父の表情を見て
胸の奥がふっと温かくなる。

北見は、
その言葉に救われるように
深く頭を下げた。

✦ 第169話
「秋川、北見をフォローする」
✦ ① 父の「それでいい」のあと、北見の肩がわずかに落ちる
父の短い一言。

「……その気持ちがあるなら、それでいい」

その言葉を聞いた瞬間、
北見の肩がほんの少しだけ落ちた。

安堵。
緊張。
そして、まだ残る不安。

全部が混ざった呼吸が、
胸の奥で震えている。

秋川は、
その震えを誰よりも近くで感じ取った。

✦ ② 秋川がそっと北見の手に触れる──誰にも気づかれないように
父と母の視線が少し外れた瞬間、
秋川はそっと手を伸ばし、
北見の手の甲に
指先で軽く触れた。

ほんの一瞬。
でも、確かな温度。

“大丈夫。
 あなたはちゃんと伝えられたよ”

その温度が、
言葉よりも深く北見に届く。

北見は、
わずかに目を伏せて
その温度を受け止めた。

✦ ③ 秋川の言葉──父と母に向けて、でも北見を守るために
秋川は、
ゆっくりと顔を上げ、
父と母を見つめた。

そして、
静かに、でもはっきりと言った。

「……お父さん、お母さん。
 北見さんは……
 本当に、誠実な人なんです」

その声は震えていない。
娘としての覚悟が滲んでいる。

「私が……
 仕事で落ち込んだときも、
 無理して笑ってしまうときも……
 ちゃんと気づいてくれて……
 そばにいてくれました」

北見は、
その言葉に胸が熱くなる。

秋川は続ける。

「……私が、
 この人と一緒にいたいと思ったのは……
 優しいからだけじゃなくて……
 ちゃんと向き合ってくれる人だからです」

その言葉は、
北見を守るためであり、
両親に伝えるためであり、
そして自分の気持ちを確かめるためでもあった。

✦ ④ 母の表情が柔らかくなり、父の腕が少しだけほどける
秋川の言葉を聞いた母は、
静かに微笑んだ。

――この子……
 本当にこの人を大切に思っているのね……

その微笑みは、
北見の胸を静かに温める。

一方で父は、
腕を組んだまま
ほんの少しだけ肩の力を抜いた。

その変化は小さい。
でも、確かだった。

“娘がここまで言うなら……
 この男を信じてみてもいいかもしれない”

そんな気配が、
父の表情にわずかに滲む。

✦ ⑤ 秋川の最後の一言──北見の緊張をほどく
秋川は、
北見の方へそっと視線を向けた。

そして、
誰にも聞こえないほどの小さな声で囁く。

「……大丈夫です。
 北見さん……ちゃんと伝わってます」

その言葉に、
北見の胸の奥で
張りつめていた糸が
静かにほどけていった。

✦ 第170話
「秋川の父、柔らかくなる」
✦ ① 北見の返答を聞いたあと、父の肩の力がわずかに抜ける
北見が震える声で
「幸せにしたい」と言い切ったあと──

秋川の父は、
しばらく沈黙していた。

その沈黙は、
怒りでも、疑いでもない。

“言葉を受け止めている沈黙”。

そして、
ゆっくりと肩の力が抜けた。

ほんの少し。
でも確かに。

秋川は、
その変化を敏感に感じ取った。

✦ ② 父の視線が、厳しさから“人としての目”に変わる
父は、
北見を見つめたまま
ふっと視線を和らげた。

それは、
試す目でも、
見極める目でもなく。

“一人の男として向き合う目”。

その変化は小さい。
でも、空気を確かに変えた。

北見は、
その視線の変化に気づき、
胸の奥が少しだけ軽くなる。

✦ ③ 父の言葉──短いけれど、温度が違う
父は、
湯呑みを手に取り、
一口だけ飲んだ。

そして、
静かに口を開いた。

「……まあ……
 人間、完璧なやつなんていない」

その言葉は、
これまでの厳しさとは違う温度を持っていた。

「大事なのは……
 逃げずに向き合うことだ」

その一言に、
北見の胸が強く震える。

秋川は、
父の声の柔らかさに
そっと目を細めた。

✦ ④ 秋川の母が微笑む──“あの人、やっと本音を出したわね”
母は、
父の言葉を聞いて
静かに微笑んだ。

――あなた……
 やっと本音を出したのね……

その微笑みは、
長年連れ添った妻だからこそ分かる
“夫の変化”への理解。

北見は、
その微笑みに救われるように
小さく頭を下げた。

✦ ⑤ 父の最後の一言──それは“受け入れのサイン”
父は、
湯呑みを置き、
少しだけ照れたように言った。

「……まあ……
 これから、ゆっくり話せばいい」

その言葉は短い。

でも、
その短さの中に
“もう敵ではない”
という温度があった。

秋川は、
その父の表情を見て
胸の奥がふっと温かくなる。

北見は、
深く息を吐き、
小さく微笑んだ。

✦ 第171話
「北見、緊張が解ける」
✦ ① 父の表情が柔らかくなった瞬間、北見の胸がふっと軽くなる
父が
「……まあ、人間、完璧なやつなんていない」
と、少し照れたように言ったあと──

北見の胸の奥で、
張りつめていた何かが
ふっと緩んだ。

肩がわずかに落ちる。
呼吸が少し深くなる。

“……受け入れてもらえた……のかもしれない……”

その実感が、
胸の奥に静かに広がる。

✦ ② 秋川の指先の温度が、緊張を溶かしていく
秋川は、
父の言葉を聞いた北見の変化に気づき、
そっと北見の手に触れた。

ほんの一瞬。
でも、確かな温度。

“大丈夫ですよ”
その温度がそう伝えていた。

北見は、
その指先の温度に支えられ、
胸の奥がさらに軽くなる。

✦ ③ 北見の表情が、初めて“自然な笑み”に変わる
北見は、
深く息を吐いたあと、
ゆっくりと顔を上げた。

そして──
ほんの少しだけ、
自然な笑みがこぼれた。

緊張で固まっていた頬が緩み、
目元が柔らかくなる。

秋川の母は、
その変化を見て静かに微笑んだ。

「……よかったわね、北見さん」

その声は、
まるで家族に向けるような優しさだった。

✦ ④ 父も気づく──“この男は本気で向き合っている”
父は、
北見の表情の変化を見て
わずかに目を細めた。

厳しさではなく、
“人としての理解”が滲む目。

「……緊張してたんだな」

その一言は、
からかいでも、
責めでもない。

“もう敵じゃない”
という、
父なりの優しさだった。

北見は、
少し照れたように頭を下げた。

「……はい……
 正直……とても……」

その不器用な正直さに、
父はふっと笑った。

✦ ⑤ 北見の胸に広がる“安心”──初めて呼吸が楽になる
父の笑み。
母の優しさ。
秋川の支え。

その全部が重なって、
北見の胸の奥に
静かな“安心”が広がっていく。

“……ここにいていいんだ……”

その感覚が、
北見の呼吸をゆっくりと楽にした。

秋川は、
その横顔を見つめながら
胸の奥でそっと呟く。

「……北見さん……よかった……」

✦ 第172話
「秋川の母、場を和ませる話題」
✦ ① 母がふっと微笑み、空気がゆるむ
父の言葉で緊張がほどけ、
北見が小さく笑みを見せたのを見て──

秋川の母は、
ふっと柔らかく微笑んだ。

その微笑みは、
“もう大丈夫よ”
と空気にそっと触れるような優しさ。

そして、
自然な流れで口を開く。

「そういえば……北見さん」

声は、
さっきまでの“質問”の声ではない。

家庭の会話に戻すための、
やわらかい声。

✦ ② 母の話題は“趣味”──一番安全で、温かい話題
母は、
湯呑みを両手で包みながら言った。

「麗奈から……
 北見さん、釣りが好きだって聞きましたよ」

その瞬間、
北見の表情がわずかに変わる。

驚きと、
少しの照れと、
そして“好きなことを話せる安心”。

秋川は、
その変化に気づいて
そっと微笑んだ。

母は続ける。

「うちの父も昔はよく川に行ってね。
 イワナを釣ってきては……
 自慢げに見せてくれたものよ」

その言葉に、
父が少しだけ照れたように咳払いをする。

「……まあ、昔の話だ」

その照れが、
さらに空気を柔らかくする。

✦ ③ 北見の表情が自然にほころぶ
北見は、
少しだけ肩の力を抜きながら言った。

「……はい。
 釣りは……昔から好きで……
 川に行くと……落ち着くんです」

その声は、
さっきまでの震えた声とは違う。

自然で、
穏やかで、
“自分の話をしている声”。

秋川の母は、
その変化を見て静かに頷いた。

「そうなのね。
 麗奈も……
 あなたの釣りの話をするとき、
 とても楽しそうにしていましたよ」

その一言に、
秋川の頬が赤くなる。

北見は、
思わず目を伏せて照れたように笑った。

✦ ④ 父も少し乗ってくる──“家族の会話”が始まる
父は、
腕を組んだまま
わざとらしく咳払いをして言う。

「……釣りか。
 最近は行ってないが……
 まあ、悪くない趣味だ」

その言葉は、
父なりの“歩み寄り”。

北見は、
すぐに頭を下げた。

「……ありがとうございます」

父は、
その素直さに
ふっと目を細めた。

✦ ⑤ 空気が完全に“家族の温度”へと変わる
母は、
その空気の変化を感じ取り、
さらに柔らかく微笑んだ。

「今度……
 うちの父にも釣りの話、
 聞かせてあげてくださいね」

その言葉は、
ただの社交辞令ではない。

“あなたを家族として迎え入れますよ”
という、
母としての静かなサイン。

秋川は、
その言葉を聞いて
胸の奥がふっと温かくなる。

北見は、
深く息を吸い、
自然な笑みを浮かべた。

「……はい。
 ぜひ……」

✦ 第173話
「北見、自分の話をする」
✦ ① 緊張がほどけた北見の声が、少しだけ柔らかくなる
父の表情が和らぎ、
母が釣りの話題を出し、
秋川がそっと支えてくれたあと──

北見は、
胸の奥にあった重さが
ゆっくりと溶けていくのを感じていた。

そして、
自然と口が開く。

「……あの……
 僕は……普段は本当に……
 仕事と家の往復ばかりで……」

その声は、
さっきまでの震えた声とは違う。

少し照れながら、
でも自然な声。

秋川は、
その変化に気づいて
そっと微笑んだ。

✦ ② 北見の“日常”が語られる──不器用で、誠実な生活
北見は、
ゆっくりと言葉を続けた。

「……休みの日は……
 釣りに行ったり……
 道具を整備したり……
 そんな……地味な生活です」

父は、
腕を組んだまま頷く。

「地味でいい。
 続けられることの方が大事だ」

その言葉に、
北見は少し照れたように笑った。

「……ありがとうございます」

母も微笑む。

「麗奈も、そういう落ち着いた人が好きなのよ」

秋川は、
その言葉に頬を赤くした。

✦ ③ 北見が“自分の弱さ”を少しだけ話す
空気が柔らかくなったことで、
北見はふっと息を吸い、
少しだけ踏み込んだ話をした。

「……僕は……
 あまり器用な人間ではなくて……
 人付き合いも得意じゃなくて……
 会社でも……
 あまり目立つ方ではありません」

その言葉に、
父は静かに頷く。

母は、
優しく微笑む。

秋川は、
その横顔を見つめながら
胸の奥が温かくなる。

北見は続ける。

「……でも……
 秋川さんと話すようになって……
 少しずつ……
 自分の世界が広がった気がして……」

その言葉に、
秋川の胸が強く震えた。

✦ ④ 秋川の両親が“北見の素直さ”を受け止める
母は、
北見の言葉を聞いて
静かに微笑んだ。

「素直に話してくださって……
 ありがとうございます」

父も、
わずかに目を細めて言う。

「……不器用でもいい。
 大事なのは……
 誠実であることだ」

その言葉は、
父なりの“受け入れ”だった。

北見は、
深く頭を下げた。

「……はい……
 ありがとうございます」

✦ ⑤ 秋川がそっとフォロー──“この人はこういう人なんです”
秋川は、
北見の横で小さく微笑みながら言った。

「北見さんは……
 本当に真面目で……
 優しい人なんです」

その言葉に、
北見は照れたように目を伏せた。

父は、
その様子を見て
ふっと笑う。

「……まあ、見ていれば分かる」

母も微笑む。

「ええ。
 とても……いい方だと思いますよ」

その言葉に、
北見の胸の奥が
静かに温かく満たされていった。

✦ 第174話
「秋川、北見の良さを伝える」
✦ ① 北見の照れた笑みに、秋川の胸がふっと温かくなる
北見が
「……地味な生活です」
と照れながら話したあと──

秋川は、
その横顔を見つめて
胸の奥がふっと温かくなった。

“この人の良さは……
 こんな言葉だけじゃ伝わらない”

そう思った。

だから、
自然と口が開く。

✦ ② 秋川の声は、両親に向けているようでいて
いちばん近くの北見に向けている
秋川は、
両親の方へ向き直りながら
静かに言った。

「……お父さん、お母さん。
 北見さんは……
 本当に、優しい人なんです」

その声は、
落ち着いていて、
でもどこか震えている。

北見は、
その声を聞いた瞬間、
胸の奥が熱くなった。

✦ ③ 秋川が語る“北見の良さ”──
それは、誰より近くで見てきた人だけが知っているもの
秋川は、
ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「北見さんは……
 私が落ち込んでいるとき、
 何も言わずにそばにいてくれます」

父と母が静かに耳を傾ける。

「無理に励ましたり、
 答えを押しつけたりしないで……
 ただ、私が落ち着くまで
 待っていてくれるんです」

その言葉に、
北見の胸が強く震えた。

秋川は続ける。

「……私が、
 “自分のままでいていい”って
 思えるのは……
 北見さんといるときなんです」

その一言は、
恋人としての本音そのもの。

✦ ④ 母の目が柔らかくなり、父の表情がわずかに変わる
秋川の言葉を聞いた母は、
静かに微笑んだ。

――麗奈……
 そんな顔をするようになったのね……

父は、
腕を組んだまま
わずかに視線を落とした。

厳しさではなく、
“娘の幸せを理解した父の目”。

「……そうか」

その短い言葉に、
いろんな感情が詰まっていた。

✦ ⑤ 秋川の最後の一言──
北見の胸に深く届く“支えの言葉”
秋川は、
そっと北見の方へ視線を向けた。

そして、
誰にも聞こえないほどの小さな声で囁く。

「……北見さんは……
 本当に、素敵な人ですよ」

その言葉は、
北見の胸の奥に
静かに、深く落ちていった。

北見は、
照れながらも
自然な笑みを浮かべた。

✦ 第175話
「秋川の父、軽い冗談」
✦ ① 父が湯呑みを置き、わざとらしく咳払いする
北見の話が終わり、
秋川がその良さを伝え、
母が微笑んだあと──

秋川の父は、
湯呑みをコトリと置き、
わざとらしく咳払いをした。

「……ふん」

その“照れ隠し”の音に、
秋川は思わず目を細める。

北見は、
緊張が解けたばかりで
少しだけ身構える。

✦ ② 父の表情はまだ固いのに、言葉だけが柔らかい
父は、
腕を組んだまま
北見をちらりと見た。

そして──
少しだけ口元を緩めて言う。

「……まあ……
 麗奈が選んだ男だ。
 変なやつではないだろうとは思っていたが……」

一拍置いて。

「……思っていたより……
 ずっと“まとも”だな」

その言葉は、
冗談めかしているのに、
どこか照れくさそうで、
そして優しい。

北見は、
驚いたように目を瞬かせたあと
小さく笑った。

「……ありがとうございます」

✦ ③ 秋川が思わず吹き出す──父の“らしさ”が出た瞬間
秋川は、
父のその言い方に
思わず吹き出した。

「お父さん……
 “まとも”って……
 言い方が失礼だよ」

父は、
わざとらしくそっぽを向く。

「……事実を言っただけだ」

その不器用な照れ隠しが、
逆に温かい。

母は、
そのやり取りを見て
静かに笑った。

「あなた……
 本当は最初から気に入ってたんでしょう?」

父は、
さらにそっぽを向く。

「……知らん」

その“知らん”が、
どう聞いても“認めている”の意味。

✦ ④ 北見の胸に広がる“家族に迎えられた”感覚
北見は、
父の冗談めいた言葉を聞きながら
胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。

“……受け入れてもらえたんだ……”

その実感が、
静かに、深く落ちていく。

秋川は、
その横顔を見つめながら
そっと微笑んだ。

✦ ⑤ 父の最後の一言──
不器用だけど、確かな“歓迎”
父は、
照れ隠しのまま
湯呑みを手に取りながら言った。

「……まあ……
 これからも……
 麗奈のこと、頼むぞ」

その言葉は、
冗談のようでいて、
冗談ではない。

父としての“正式な受け入れ”。

北見は、
深く頭を下げた。

「……はい。
 大切にします」

その声は、
もう震えていなかった。

3件のコメント (新着順)
貸枕考古 バッジ画像
2026/05/24 07:58

おはようございます⛅️
第166話~第175話も緊張して拝読させていただきました。

ー 感想 ー
今回のラストで、父親からのお言葉をいただけたようで、がんばったね主人公👍️ (でも主人公、帰宅するまでが遠足です、気を抜くな。と思う私)

ところで、登場の父親は昭和の人ですか❓️ (気になりました😅)
────────────
ありがとうございましたm(_ _)m  またお世話になると思います

イワナ
2026/05/23 21:50

逃げずに向き合う。
さすれば道は拓ける。
大事なことやね。

心から釣りを愛する男に、悪い奴はいません。
‥特に渓流イワナ釣りはなー😺


イワナ
2026/05/23 22:42

ほ‥ほんとだモン💦
ツリじゃなくて釣りだモン🙀

Fēi's D
2026/05/23 21:19

🦊私は北見さんにはなれない。
🌏この娘、自分が幸せにしてもらう自信はあるんだけどな。


mw_me
2026/05/23 21:23

🌏🤗🦊😊🐰😁