【 TORQUE文学:イエローインパクト⑧ 】
【 TORQUE文学:イエローインパクト⑦ 】より続き。
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2日連続で俺が社内一の美人女子『秋川 零奈』と、昼食後の食堂で2人きりで向かい合って話していた事は、各部所でチョットした噂になっていたようだ。
12時からの昼休憩の後には、15時に10分間の休憩がある。
時間が短いためほとんどの人間は、自分の持ち場で過すことが多い。俺もそうだ。
その日の15時休憩。職場に用意されたベンチで自販機で買った紙コップの珈琲を飲んでいると、同じ製造部の若い男子二人が俺の前へ現れた。
「北見さん、ここ座りますね。」
そう言いなが、1人づつ俺を挟むように両脇の空いた場所に腰を下ろす。
(…?)
「北見さんって、今日も昨日も総務課の秋川さんさんと昼飯のあと喋ってましたよねっ!」
俺の左隣に座った者が、なんの前置きもなくいきなり本題に入る。
「いったい何の話しをしてたんですかっ?」
今度は右隣の者が、何の遠慮もなくズケズケと言い放つ。
右隣の者へ顔を向けたさいに、少し離れた場所で4・5人の者たちがかたまって、こちらの様子を眺めているのが見えた。
どうやら彼らを代表して、この二人が俺に【事情聴取】に来たようだ。
「あぁ、アレのことか。」
俺は作業着のポケットから自分のイエローの『TORQUE 5G』を取り出し二人に見せた。
「最近、俺のと同じこのスマホを秋川さんも買ったんで、その事を報告しに来てくれたんだよ。使ってる人が少ないスマホだから、ちょっとした仲間意識だろうね。」
実際にはシリーズは同じ『TORQUE』だが、彼女のG07と俺の5Gでは一世代分モデルをまたいでいる。
だが、パッと見では外観などほどんど変わらないし、モデルについての細かい事など、彼らが聞きたいことでは無いはずだ。
俺の説明を聞いた二人は、お互いの顔を見合わせて黙っている。
「…それだけですか…?」
何か納得行かないような感じで一人が俺にそう尋ねる。
「うん、そうだけど。別にそれ以外、彼女が俺と話すことなんて無いし。」
俺は『TORQUE SMILE』の事は言わずにおいた。
別に隠したわけではないが、聞かれもしなかったことを、コチラからあえて言う必要も無い。
「そうだったんですね。あっ、どうもお邪魔しました。」
二人は遠くから眺めている仲間たちのほうへ戻っていった。
なんだかチョッと安心したようにも、残念そうにも見える、微妙な表情をしながら。
(まぁ…しょうが無いよな…彼らは若いんだし…)
素直に俺はそう思った。
秋山さんは入社してから2・3年経っているはずが、入った当時から現在まで男子社員の中では「美人女子」として人気が高い。
そんな彼女を昼休みの時間中、俺一人が独占していたのだ。それも2日も連続で。
多少は何かしらの噂になってもおかしくない。
17時の終業時間になり、作業を終えてロッカールームで私服に着替えていた時にも、別のグループから秋川さんとの事を聞かれた。
15時に男子二人へ言ったのと同じことを、そのままもぅ一度彼らにも返答した。
(…どうやら俺が思ってるよりも、噂が大きく拡まってるのかも…秋川さんとのこと…)
帰宅途中の車の中で、俺は運転しながらそんな事を考えた。
一人きりで自分の愛車を運転していると、会社に居る時とは心の状態もまた違ってくるものだ。
30年間も務め、すっかり会社の全てに馴染んでいる自分だが、やはり勤務中はこんな俺でも「よそ行きの顔」なのだろう。
職場の連中に説明した秋川さんとの事だが…。
『TORQUE SMILE』の事を話さなかったのは「言いたくなかった」からだ。
今こうして1人、正直な気持ちになってみれば、そうハッキリと分かる。
まるで思いもかけずに訪れた「俺と彼女が関係できる場所」。
今の俺はその事を誰にも教えたく無いのだ。
【 TORQUE文学:イエローインパクト⑨ 】に続く。
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