「ここにいるよ」 第57話~エンド
第57話
家へ向かう道。
街灯の光が二人の影を重ねたり離したりする。
真帆(心の声)
(……今日は、私から近づきたい)
彰の横顔が、
昨日より近く見える。
真帆「……彰」
彰「うん」
名前を呼ぶだけで、
胸が静かに震える。
彰(心の声)
(……姉ちゃんの歩幅が、いつもよりゆっくりだ)
まるで、
“まだ帰りたくない”と
言っているみたいで。
彰「……寄ってく?」
真帆「……うん」
二人は自然と、
あの公園へ向かった。
夕暮れの残り香が漂う公園。
二人は並んで座る。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆はそっと、
彰の袖をつまむ。
真帆「昨日の……続き、したい」
彰「……っ」
彰の呼吸が止まる。
二人はゆっくりと向き合う。
距離は――
指一本分。
息が触れる。
まつげが触れそう。
真帆(心の声)
(……あと少し)
彰(心の声)
(……触れたい。でも、姉ちゃんが困るなら)
真帆「……彰」
彰「……うん」
二人の額が触れ、
そのまま――
唇の距離が、
ほんのわずかに縮まる。
触れない。
でも、触れたみたいに胸が震える。
長男「おーい真帆ーー!!彰ーー!!」
真帆「……は?」
彰「……っ」
長男が全力疾走で近づいてくる。
長男「お前ら、今キスしようとしただろ!!」
真帆「してない!!」
彰「……してない」
長男はニヤニヤしながら指をさす。
長男「いや、してた。
“キス未遂パート4”だな」
真帆「言うな!!」
彰「……帰りたい」
長男はスマホを取り出し、
その場で家族LINEに送る。
長男「“キス未遂パート4発生”っと」
真帆「送るな!!」
彰「……無理」
送信音が鳴った瞬間――
母《すぐ帰ってきなさーい♡》
父《第九次家族会議を開催する!!》
真帆「やめてぇぇぇ!!」
玄関を開けた瞬間、
クラッカーが炸裂する。
パンッ!!
母「キス未遂パート4おめでとう〜〜!!」
父「よくやったな、彰!!」
彰「やってない!!」
真帆「やってないってば!!」
長男はドヤ顔。
長男「いや、あれはもうキスだろ」
真帆「違う!!」
彰「……違う」
父「議題は一つ。
“二人が正式にキスする日はいつか”」
真帆「議題にするな!!」
彰「……帰りたい」
母「でもね〜、もう時間の問題よね〜」
長男「明日だな」
真帆「賭けるな!!」
父は真面目な顔で言う。
父「真帆、彰。
キスはな、タイミングが大事だ」
真帆「父に言われたくない!!」
彰「……ほんとに帰りたい」
家族が満足げに去り、
リビングに静けさが戻る。
真帆「……ごめんね、彰。家族が……」
彰「……いいよ。
姉ちゃんが困ってる方が嫌だ」
真帆「……っ」
胸がまた熱くなる。
真帆「さっき……
ほんとに、近づきたかったんだよ」
彰「……俺も」
二人はそっと手をつなぐ。
彰「……姉ちゃん」
真帆「なに」
彰「また……あの距離になりたい」
真帆「……うん。
私も」
長男に壊されたはずなのに、
二人の距離は昨日より深い。
真帆(心の声)
(……次は、きっと)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら)
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
第58話
家へ向かう道。
街灯の光が二人の影を重ねたり離したりする。
真帆(心の声)
(……今日は、私から近づきたい)
彰の横顔が、
昨日より近く見える。
真帆「……彰」
彰「うん」
名前を呼ぶだけで、
胸が静かに震える。
彰(心の声)
(……姉ちゃんの歩幅が、いつもよりゆっくりだ)
まるで、
“まだ帰りたくない”と
言っているみたいで。
彰「……寄ってく?」
真帆「……うん」
二人は自然と、
あの公園へ向かった。
夕暮れの残り香が漂う公園。
二人は並んで座る。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆はそっと、
彰の袖をつまむ。
真帆「昨日の……続き、したい」
彰「……っ」
彰の呼吸が止まる。
二人はゆっくりと向き合う。
距離は――
指一本分。
息が触れる。
まつげが触れそう。
真帆(心の声)
(……あと少し)
彰(心の声)
(……触れたい。でも、姉ちゃんが困るなら)
真帆は小さく息を吸う。
真帆「……彰」
彰「……うん」
二人の額が触れ、
そのまま――
唇の距離が、
ほんのわずかに縮まる。
触れない。
でも、触れたみたいに胸が震える。
真帆(心の声)
(……こわくない)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが来てくれるなら)
二人の呼吸が、
ひとつに重なる。
あと一呼吸。
その一呼吸が、
永遠みたいに長く感じられた。
風がふっと吹いて、
真帆の髪が彰の頬に触れた。
二人は同時に息を呑む。
触れていない。
でも、触れたみたいに胸が震えた。
真帆(心の声)
(……次は、きっと)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら)
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
家の近くまで来ても、
二人の手はつないだまま。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆「今日ね……
こわくなかったよ」
彰「……俺も」
真帆は小さく笑う。
真帆「……また、あの距離になりたい」
彰「……俺も」
触れなかった唇が、静かに未来を照らしていた。
第59話
昨日の夜。
唇が触れそうで触れなかった、あの一呼吸。
真帆(心の声)
(……あと少しだった)
思い出すだけで胸が熱くなる。
三男の家の前で足が止まる。
ドアが開く。
彰「……姉ちゃん、おはよう」
真帆「おはよう、彰」
彰の耳が赤くなる。
(……また近づきたい)
教室に入った瞬間、
ゆかりが机を叩いて立ち上がる。
ゆかり「真帆ーー!!昨日キス直前まで行ったでしょ!!」
真帆「なんで知ってるの!!」
姫「“キス未遂パート5”確認済み」
真帆「言わないで!!」
ゆかりは真帆の肩を掴む。
ゆかり「もうキスしろ。本気で」
真帆「言うな!!」
姫「“次の段階”に進むべき」
真帆「分析しないで!!」
ゆかり「真帆、彰くんのこと好きなんでしょ」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
姫「反応速度が“肯定”」
真帆「やめて!!」
ゆかりは机に身を乗り出す。
ゆかり「じゃあさ、
昨日、自分から近づきたいって思った?」
真帆「っ……!!」
真帆の顔が一気に赤くなる。
姫「表情筋が“肯定”」
真帆「測るな!!」
でも、
否定できなかった。
(……思ったよ)
校門で彰が捕まる。
ゆかり「彰くん!!昨日キス直前だったでしょ!!」
彰「……っ」
姫「“キス未遂パート5”達成」
彰「やめて」
ゆかりは腕を組む。
ゆかり「で?真帆のこと、好きなんでしょ」
彰「……うん」
姫「即答。好意の強度が高い」
彰「分析しないで」
ゆかり「じゃあ、昨日“自分から近づきたい”って思った?」
彰「……っ!!」
顔が真っ赤になる。
姫「反応速度が“肯定”」
彰「やめて!!」
校門で合流した瞬間、
二人ともぎこちない。
真帆「……彰」
彰「……うん」
名前を呼ぶだけで、
昨日の“一呼吸”が蘇る。
歩きながら、
二人の手が何度も触れそうになる。
真帆(心の声)
(……触れたい)
彰(心の声)
(……触れたい。でも、焦らせたくない)
夕暮れの公園。
昨日と同じ場所。
同じ風。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆はそっと、
彰の袖をつまむ。
真帆「昨日の……続き、したい」
彰「……っ」
二人はゆっくりと向き合う。
距離は――
指一本分。
息が触れる。
まつげが触れそう。
真帆(心の声)
(……あと少し)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが来てくれるなら)
二人の呼吸が重なる。
あと一呼吸。
長男「おーい真帆ーー!!彰ーー!!」
真帆「……は?」
彰「……っ」
長男が全力疾走で近づいてくる。
長男「お前ら、今キスしようとしただろ!!」
真帆「してない!!」
彰「……してない」
長男はニヤニヤしながら指をさす。
長男「いや、してた。
“キス未遂パート5”だな」
真帆「言うな!!」
彰「……帰りたい」
長男はスマホを取り出し、
その場で家族LINEに送る。
長男「“キス未遂パート5発生”っと」
真帆「送るな!!」
彰「……無理」
送信音が鳴った瞬間――
母《すぐ帰ってきなさーい♡》
父《第十次家族会議を開催する!!》
真帆「やめてぇぇぇ!!」
玄関を開けた瞬間、
クラッカーが炸裂する。
パンッ!!
母「キス未遂パート5おめでとう〜〜!!」
父「よくやったな、彰!!」
彰「やってない!!」
真帆「やってないってば!!」
長男はドヤ顔。
長男「いや、あれはもうキスだろ」
真帆「違う!!」
彰「……違う」
父「議題は一つ。
“二人が正式にキスする日はいつか”」
真帆「議題にするな!!」
彰「……帰りたい」
母「でもね〜、もう時間の問題よね〜」
長男「明日だな」
真帆「賭けるな!!」
父は真面目な顔で言う。
父「真帆、彰。
キスはな、タイミングが大事だ」
真帆「父に言われたくない!!」
彰「……ほんとに帰りたい」
家族が満足げに去り、
リビングに静けさが戻る。
真帆「……ごめんね、彰。家族が……」
彰「……いいよ。
姉ちゃんが困ってる方が嫌だ」
真帆「……っ」
胸がまた熱くなる。
真帆「さっき……
ほんとに、近づきたかったんだよ」
彰「……俺も」
二人はそっと手をつなぐ。
彰「……姉ちゃん」
真帆「なに」
彰「また……あの距離になりたい」
真帆「……うん。
私も」
長男に壊されたはずなのに、
二人の距離は昨日より深い。
真帆(心の声)
(……次は、きっと)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら)
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
第60話
家へ向かう道。
街灯の光が二人の影を重ねたり離したりする。
真帆(心の声)
(……今日は、邪魔されないといいな)
彰の横顔が、
昨日より近く見える。
真帆「……彰」
彰「うん」
名前を呼ぶだけで、
胸が静かに震える。
彰(心の声)
(……姉ちゃんの歩幅が、またゆっくりだ)
まるで、
“まだ帰りたくない”と
言っているみたいで。
彰「……寄ってく?」
真帆「……うん」
二人は自然と、
あの公園へ向かった。
今日は風が弱い。
昨日よりも、
二人の呼吸がよく聞こえる。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆はそっと、
彰の袖をつまむ。
真帆「昨日の……続き、したい」
彰「……っ」
彰の呼吸が止まる。
二人はゆっくりと向き合う。
距離は――
指一本分。
息が触れる。
まつげが触れそう。
真帆(心の声)
(……あと少し)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが来てくれるなら)
真帆は小さく息を吸う。
真帆「……彰」
彰「……うん」
二人の額が触れ、
そのまま――
唇の距離が、
昨日よりも近い。
触れない。
でも、触れたみたいに胸が震える。
真帆(心の声)
(……こわくない)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら)
二人の呼吸が、
ひとつに重なる。
あと半呼吸。
その半呼吸が、
永遠みたいに長く感じられた。
真帆はそっと、
自分から距離を詰める。
彰も、
逃げずに受け止める。
触れそう。
触れない。
でも、触れた。
そんな錯覚が胸を満たす。
風がふっと吹いて、
真帆の髪が彰の頬に触れた。
二人は同時に息を呑む。
触れていない。
でも、触れたみたいに胸が震えた。
真帆(心の声)
(……次は、きっと)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら)
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
家の近くまで来ても、
二人の手はつないだまま。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆「今日ね……
こわくなかったよ」
彰「……俺も」
真帆は小さく笑う。
真帆「……また、あの距離になりたい」
彰「……俺も」
触れなかった唇が、
静かに未来を照らしていた。
第61話
家へ向かう道。
街灯の光が二人の影を重ねたり離したりする。
真帆「……彰」
彰「うん」
昨日よりも、
二人の歩幅は自然に揃っていた。
真帆(心の声)
(……今日は、邪魔されませんように)
夕暮れの残り香が漂う公園。
二人は向き合う。
距離は――
指一本分。
真帆「……彰」
彰「……姉ちゃん」
息が触れる。
まつげが触れそう。
真帆(心の声)
(……あと少し)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが来てくれるなら)
二人の呼吸が重なる。
あと半呼吸。
父「真帆ァァァァァァァァァ!!!!!」
真帆「……は?」
彰「……っ」
父が全力疾走で公園に突入してくる。
父「お前らァァァ!!
またキスしようとしてただろうがァァァ!!」
真帆「してない!!」
彰「……してない」
父は地面を指差して叫ぶ。
父「してた!!
あれはもうキス未遂パート6だ!!」
真帆「言うな!!」
彰「……帰りたい」
父「真帆!!
お前は何回キス未遂を繰り返すんだ!!」
真帆「知らないよ!!」
彰「……俺のせい?」
父「彰!!
お前はもっと男らしく――」
真帆「父に言われたくない!!」
父「ぐっ……!」
母と長男が後ろから追いつく。
母「あなた、落ち着いて!」
長男「父さん、声デカい」
父「落ち着けるかァァァ!!
第十一回家族会議を開催する!!」
真帆「やめてぇぇぇ!!」
玄関を開けた瞬間、
クラッカーが炸裂する。
パンッ!!
母「キス未遂パート6おめでとう〜〜!!」
父「よくやったな、彰!!」
彰「やってない!!」
真帆「やってないってば!!」
長男はドヤ顔。
長男「いや、あれはもうキスだろ」
真帆「違う!!」
彰「……違う」
父「議題は一つ。
“二人が正式にキスする日はいつか”」
真帆「議題にするな!!」
彰「……帰りたい」
母「でもね〜、もう時間の問題よね〜」
長男「明日だな」
真帆「賭けるな!!」
父は真面目な顔で言う。
父「真帆、彰。
キスはな、タイミングが大事だ」
真帆「父に言われたくない!!」
彰「……ほんとに帰りたい」
家族が満足げに去り、
リビングに静けさが戻る。
真帆「……ごめんね、彰。家族が……」
彰「……いいよ。
姉ちゃんが困ってる方が嫌だ」
真帆「……っ」
胸がまた熱くなる。
真帆「さっき……
ほんとに、近づきたかったんだよ」
彰「……俺も」
二人はそっと手をつなぐ。
彰「……姉ちゃん」
真帆「なに」
彰「また……あの距離になりたい」
真帆「……うん。
私も」
父に壊されたはずなのに、
二人の距離は昨日より深い。
真帆(心の声)
(……次こそは)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら)
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
第62話
家へ向かう道。
街灯の光が、二人の影をゆっくり重ねていく。
真帆(心の声)
(……今日は、怖くない)
彰の横顔が、
昨日よりも柔らかく見える。
彰「……姉ちゃん」
真帆「なに」
彰「今日……一緒に帰れて嬉しい」
その声が、
胸の奥に静かに落ちる。
真帆(心の声)
(……私もだよ)
夕暮れの残り香が漂う公園。
風が止まり、
世界が二人だけになったような静けさ。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆はそっと、
彰の袖をつまむ。
真帆「昨日の……続き、したい」
彰「……っ」
彰の呼吸が止まる。
二人はゆっくりと向き合う。
距離は――
指一本分。
息が触れる。
まつげが触れそう。
真帆(心の声)
(……夢みたい)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが来てくれるなら)
真帆は小さく息を吸う。
真帆「……彰」
彰「……うん」
二人の額が触れ、
そのまま――
唇の距離が、
昨日よりも近い。
触れない。
でも、触れたみたいに胸が震える。
真帆(心の声)
(……このまま、夢になってしまえばいい)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら、どこまでも)
二人の呼吸が重なる。
あと半呼吸。
その半呼吸が、
永遠みたいに長く感じられた。
世界が静かに溶けていく。
現実と夢の境界が曖昧になる。
二人の想いは、
そっと夢とかす。
風がふっと吹いて、
真帆の髪が彰の頬に触れた。
二人は同時に息を呑む。
触れていない。
でも、触れたみたいに胸が震えた。
真帆(心の声)
(……次は、きっと)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら)
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
家の近くまで来ても、
二人の手はつないだまま。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆「今日ね……
夢みたいだった」
彰「……俺も」
真帆は小さく笑う。
真帆「……また、あの距離になりたい」
彰「……俺も」
触れなかった唇が、
静かに未来を照らしていた。
第63話
真帆と彰は、
“触れそうで触れない一瞬”を胸に抱えたまま歩いていた。
真帆(心の声)
(……今日は、邪魔されなかった)
彰(心の声)
(……姉ちゃんの横顔、まだ赤い)
二人の間に流れる静けさは、
昨日までとは違う温度を持っていた。
玄関の灯りの下、
父と長男が腕を組んで立っていた。
真帆「……なんで待ってるの」
長男「話がある」
父「彰。こっちへ来い」
彰「……はい」
真帆は不安そうに彰を見る。
彰は小さく頷いた。
家の外、少し離れた場所。
父は深く息を吸い、
いつもの大声ではなく、静かに言った。
父「彰。
お前が真帆を大事に思ってるのは、もうわかってる」
彰「……はい」
父「だからこそ、焦るな。
真帆は強いけど、繊細だ。
お前が急いだら、真帆は自分を責める」
彰「……わかってます」
長男が横から口を挟む。
長男「でもな、彰。
逃げるなよ。
真帆は、お前が思ってるよりずっと、お前を見てる」
彰「……っ」
父は続ける。
父「真帆を守りたいなら、
“真帆の歩幅”で進め。
それが一番の近道だ」
彰はゆっくりと頭を下げた。
彰「……はい」
家の中。
母は真帆をそっと抱き寄せた。
母「真帆。
あなた、昨日からずっと顔が赤いわよ」
真帆「……うるさいよ」
母は笑わず、優しく言った。
母「怖かった?」
真帆「……怖くないよ」
母「じゃあ、苦しかった?」
真帆「……ちょっと」
母は真帆の背中をゆっくり撫でる。
母「真帆。
あなたは優しい子だから、
“自分の気持ち”より“相手の気持ち”を先に考えちゃう」
真帆「……そんなことない」
母「あるわよ。
だからね、
“自分がどうしたいか”を大事にしていいの」
真帆の目が揺れる。
母「彰くんはね、
あなたが怖がることを一番嫌がる子よ。
だから、あなたが望む歩幅で進めばいいの」
真帆「……うん」
母はもう一度、
ゆっくりと真帆を抱きしめた。
父と長男に“さとされた”彰が戻ってくる。
母に抱きしめられた真帆も、
少しだけ表情が柔らかい。
彰「……姉ちゃん」
真帆「……なに」
二人は自然と手を伸ばし、
そっと指先を触れ合わせる。
真帆「……大丈夫?」
彰「うん。
姉ちゃんは?」
真帆「……大丈夫」
二人の影が、
玄関の灯りの下で静かに重なる。
真帆(心の声)
(……“自分の歩幅でいい”
母さん、そう言ってくれた)
彰(心の声)
(……“真帆の歩幅で進め”
父さんの言葉、忘れない)
二人の想いは、
家族の手と声に支えられながら、
ゆっくりと同じ方向へ流れていく。
第64話
昨日、父と長男に“歩幅”を教えられ、
母に抱きしめられた夜。
その余韻が、
今日の二人の歩き方に静かに残っていた。
真帆(心の声)
(……なんか、変わった気がする)
彰(心の声)
(……姉ちゃんの歩幅が、自然に合う)
昨日までのぎこちなさが、
少しだけ薄れていた。
朝食の席。
いつもなら騒がしい家族が、
今日は妙に静かで優しい。
父「……おはよう」
母「真帆、よく眠れた?」
長男「彰、今日も歩幅合わせろよ」
真帆「……うるさい」
彰「……はい」
でも、
その“うるさい”も“はい”も、
どこか柔らかい。
家族は何も言わない。
でも、
“見守る”という空気だけがそこにあった。
家を出て歩き出すと、
自然と手が触れた。
真帆「……あ」
彰「……ごめん」
真帆「……いいよ」
昨日までなら、
ここで二人とも慌てて離れていた。
でも今日は――
離れない。
真帆(心の声)
(……自然だ)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが離れない)
二人の距離は、
誰に言われたわけでもなく、
自然に近づいていた。
教室に入ると、
ゆかりと姫がこちらを見た。
ゆかり「……おはよ」
姫「……おはよう」
真帆「……なに?」
ゆかり「いや、今日は言わない」
姫「“自然な距離”確認」
真帆「言ってるじゃん」
ゆかり「でも今日は、邪魔しない」
姫は静かに微笑む。
姫「二人の距離が“自然”になった時は、
追及しなくていい」
真帆「……っ」
ゆかり「だから今日は、見守りモード」
二人の友人も、
家族と同じように“静かに背中を押す側”に回っていた。
校門を出ると、
自然と並んで歩き出す。
真帆「……彰」
彰「うん」
名前を呼ぶだけで、
昨日までの“緊張”ではなく、
“安心”が胸に落ちる。
真帆(心の声)
(……自然だ)
彰(心の声)
(……姉ちゃんの隣が、自然だ)
夕暮れの公園。
昨日までのように、
“キス未遂の緊張”はない。
ただ、
静かに隣に座る。
真帆「……ねぇ、彰」
彰「うん」
真帆「昨日ね……
家族に抱きしめられて、
なんか、安心した」
彰「……俺も。
父さんと兄ちゃんに言われて……
焦らなくていいんだって思った」
真帆「……うん」
二人は向き合わない。
でも、
自然と肩が触れる。
それだけで十分だった。
真帆(心の声)
(……家族が背中を押してくれたから、
私は怖くなくなった)
彰(心の声)
(……家族が教えてくれたから、
姉ちゃんの歩幅がわかった)
二人の距離は、
無理に縮めたものではなく、
家族の手と声が育てた“自然な距離”だった。
家の近くまで来た時、
真帆がそっと手を伸ばす。
真帆「……彰」
彰「うん」
二人の手が、
自然に重なる。
真帆「……自然だね」
彰「……うん。
姉ちゃんといるのが、自然」
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
終演
季節がいくつか巡り、
あの騒がしい日々は、
少しずつ柔らかい思い出へ変わっていった。
真帆と彰は、
もう“距離を測る”ことをしなくなった。
自然に並び、
自然に笑い、
自然に手を伸ばす。
それは、
家族がくれた“歩幅”が
二人の中に根づいたから。
父は相変わらず大声で、
長男は相変わらず茶化し、
母は相変わらず優しい。
でも、
そのどれもが
以前より少しだけ静かで、
少しだけ温かい。
真帆は気づいていた。
(……みんな、見守ってくれてる)
母が抱きしめてくれた夜の温度は、
今も胸の奥に残っている。
彰もまた、
父と長男の“さとし”を胸に刻んでいた。
焦らないこと。
逃げないこと。
真帆の歩幅で進むこと。
その教えは、
彰の中で静かに息づいている。
(……姉ちゃんを大事にしたい)
その想いは、
もう迷いではなく、
自然な願いになっていた。
ある日の帰り道。
夕暮れの光が二人の影を重ねる。
真帆「……彰」
彰「うん」
名前を呼ぶ声も、
返事の声も、
もう“緊張”ではなく“日常”だった。
真帆はそっと手を伸ばす。
彰も自然に握り返す。
それは、
誰に見せるでもなく、
誰に隠すでもなく、
ただ“自然”だった。
家族は騒がしく、
時に過保護で、
時に暴走する。
でもその全部が、
二人の背中を押してくれた。
真帆は思う。
(……家族がいたから、ここまで来られた)
彰も思う。
(……家族がいたから、姉ちゃんを守れる)
絆は、
騒がしさの中で育ち、
静けさの中で深まっていった。
夜。
家の前で、二人は立ち止まる。
真帆「……ありがとう」
彰「……うん」
それ以上の言葉はいらなかった。
二人の影が重なり、
静かに揺れる。
そして――
物語は、そっと幕を下ろす。
2026/05/04 21:39
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お疲れさまでした。ありがとう御座いました。
最後に、、、、
あの佐伯の行動は自分と重なるものがありました(T_T)