TORQUEトーク

2026/05/03 16:02

「ここにいるよ」 第39話~第48話


校門で真帆を待っていると、
背後から声がした。

ゆかり「三男くん」
三男「……っ」

振り返ると、
ゆかりと姫が立っていた。
二人とも、妙に真剣な顔。

姫「話がある」
三男「……無理」
ゆかり「無理じゃない」

腕を掴まれ、
そのまま校舎裏へ連行される。

(……姉ちゃん、早く来て)

ゆかり「三男くん、単刀直入に言うね」
三男「……うん」
ゆかり「真帆のこと好きでしょ」
三男「……っ」

胸が跳ねる。
否定できない。

姫「反応速度が“肯定”」
三男「やめて」

ゆかりは腕を組む。

ゆかり「じゃあ、告白しなよ」
三男「……っ、できない」
ゆかり「なんで」
三男「……怖い」

その“怖い”には、
いろんな意味が混ざっていた。

(姉ちゃんが困るかもしれない。
嫌われるかもしれない。
壊れるかもしれない)

姫「三男くんは“名前がほしい”と思っている」
三男「……っ」
姫「真帆も同じ。
昨日“す”まで言った」
三男「……聞いてたの?」
姫「観察」
三男「観察するな」

ゆかりはため息をつく。

ゆかり「ねぇ三男くん。
真帆、あんたのこと好きだよ」

三男「……っ」

胸の奥が熱くなる。

ゆかり「真帆ね、昨日“好き”って言いかけたの」
三男「……知ってる」

その瞬間、
ゆかりと姫が同時に目を見開く。

姫「気づいていた?」
三男「……うん。
でも……言わせたくなかった」

ゆかり「なんで?」
三男「……姉ちゃんが言いたい時に言ってほしいから」

その言葉に、
ゆかりが一瞬だけ黙る。

姫は静かに言う。

姫「優しい。でも、それは“逃げ”でもある」

三男「……逃げてない」
姫「逃げてる」

三男「……俺、姉ちゃんのこと……
誰にも渡したくない」

ゆかり「……っ」

姫「それは“独占欲”」
三男「わかってる」

三男は拳を握る。

三男「でも……
姉ちゃんが困るなら、言えない」

その矛盾が、
胸の奥でずっと渦巻いていた。

ゆかり「三男くん」
三男「……なに」
ゆかり「真帆はね、
“名前がほしい”って顔してるよ」

三男「……っ」

姫「あなたが言わないなら、
真帆が言う。
でも、それは“本当はあなたが言うべき言葉”」

三男「……」

ゆかりは優しく笑う。

ゆかり「だからさ。
もう告白しなよ」

三男は息を吸う。

胸の奥が、
昨日よりずっと熱い。

(……言いたい)

でも、
まだ言えない。

真帆「三男?」

振り返ると、
真帆が立っていた。

夕陽が髪を照らし、
少し不安そうな顔。

真帆「……どうしたの?」
三男「……姉ちゃん」

言いかけた。
喉の奥まで出かかった。

(……言える。
今なら言える)

でも――

三男「……なんでもない」

真帆の目が揺れる。

ゆかり&姫(小声)
「(言えよ……)」
三男(心の声)
(……もうすぐ言う。
もうすぐ“名前”を言う)

その予感だけが、
胸の奥で静かに燃えていた。

デートから数日。
夕暮れの帰り道、
真帆は三男の横顔を見ながら歩いていた。

三男「……姉ちゃん、今日も一緒に帰れて嬉しい」
真帆「……うん」

その“うん”が、
自分でも驚くほど柔らかい。

真帆(心の声)
(……言いたい。
三男のこと、好きって)

胸の奥が、
もう隠せないほど熱くなっていた。

二人は自然と、
あのブランコのある公園へ向かった。

夕陽が沈み、
街灯が灯り始める。

三男「……姉ちゃん」
真帆「なに」

三男は少しだけ息を吸う。

三男「俺……姉ちゃんのこと、
もっと近くで呼びたい」

真帆「……っ」

胸が跳ねる。

真帆(心の声)
(……私もだよ)

真帆「三男、私……
三男のこと、す……」

“す”まで出た。
もう止まらない。

三男「……姉ちゃん」

二人の影が重なる。

真帆「す……き……」

その瞬間――

「真帆ーーー!!三男ーーー!!」

真帆「……は?」
三男「……っ」

振り返ると、
家族全員が公園の入口に立っていた。

父・母・長男、勢揃い。

父「第五次家族会議を開催する!!」
真帆「なんで今!!」
三男「……無理」

母は紙袋を抱えている。

母「お祝いのケーキ買ってきたのよ〜」
真帆「まだ何も言ってない!!」
長男「いや、今“好き”って言っただろ」
真帆「聞くな!!」

公園のベンチに全員が座らされる。
真帆と三男は並んで、
家族は向かい側。

父「議題は一つ。
“二人の関係に正式な名前をつけるかどうか”」
真帆「つけるかどうかじゃない!!」
三男「……帰りたい」
母「三男くん、逃げちゃダメよ〜」
長男「で、どうなんだ?」

真帆「どうって……」
三男「……姉ちゃんのこと、好き」

真帆「三男!!」

父「はい決定」
真帆「決定じゃない!!」

父は立ち上がり、
妙に厳かな声で宣言する。

父「二人の関係は――
“恋人”とする」

真帆「勝手に決めるな!!」
三男「……でも、そうなりたい」
真帆「三男!?!?」

母「きゃー!!」
長男「はい、正式にカップル」
真帆「正式じゃない!!」

でも、
胸の奥は否定しきれなかった。

家族が満足げに帰っていき、
公園に静けさが戻る。

真帆「……三男」
三男「なに」

真帆は胸に手を当てる。

真帆「私……さっき言ったよね」
三男「……うん。聞いた」

真帆「三男のこと……好きだよ」

三男は息をのむ。

三男「……俺も。
姉ちゃんのこと、好き」

その言葉は、
家族に言わされたものじゃない。
二人だけの、
静かな“名前”だった。

真帆「……じゃあ、私たち……」
三男「……うん。
恋人、でいい?」

真帆「……うん」

その瞬間、
二人の影が重なった。

家族より先に、
誰より先に、
二人自身の言葉で。

真帆が教室に入った瞬間、
ゆかりが机を叩いて立ち上がる。

ゆかり「真帆ーーー!!おめでとう!!」
真帆「な、なにが!?」
姫「“恋人成立”おめでとう」
真帆「言うな!!」

ゆかりは真帆の両手を掴んで揺らす。

ゆかり「ついに!ついに!三男くんと!!」
真帆「揺らすな!!」
姫「心拍数上昇。照れの反応」
真帆「測るな!!」

ゆかり「で、昨日の夜さ……
“好き”って言ったんでしょ?」
真帆「……っ」

胸が跳ねる。

姫「沈黙は“肯定”」
真帆「やめて!!」

ゆかりはニヤニヤしながら続ける。

ゆかり「三男くん、どんな顔してた?」
真帆「ど、どんなって……普通……」
姫「嘘。真帆の表情筋が“幸福度高め”」
真帆「表情筋で全部判断するな!!」

姫「真帆は昨日、“名前をつけた”」
真帆「名前って言わないで!!」
姫「“恋人”という名称」
真帆「言うな!!」

ゆかりは机に身を乗り出す。

ゆかり「ねぇ真帆。
三男くんのこと、好きなんでしょ」
真帆「……っ」

否定できない。
胸が熱くなる。

姫「反応速度が“肯定”」
真帆「やめて!!」

ゆかり「でもさ、ほんとよかったよ」
真帆「……え?」
ゆかり「真帆、ずっと三男くんのこと気にしてたじゃん」
姫「三男くんも“独占欲”が強かった」
真帆「独占欲って言うな!!」

ゆかりは優しく笑う。

ゆかり「お似合いだよ。
見てて安心するもん」

真帆「……っ」

胸の奥がじんわり温かくなる。

◆ 5. 放課後 ― 三男と合流した瞬間
校門で三男が待っている。
昨日より少し照れた顔。

三男「……姉ちゃん」
真帆「三男……」

ゆかり&姫は遠くから見ている。

ゆかり「ほら、あれ完全に恋人」
姫「“交際確定状態”」
真帆「聞こえてる!!」

三男は真帆の方を見て、
小さく言う。

三男「……今日も一緒に帰ろ」
真帆「……うん」

その“うん”が、
昨日よりずっと自然だった。

ゆかり「真帆、幸せそうでよかった」
姫「“恋人の顔”になっている」
真帆「やめて!!」

でも、
否定しながらも胸は温かい。

真帆(心の声)
(……私、本当に三男のこと好きなんだ)

その実感が、
ゆっくりと胸の奥に沈んでいく。

三男「……姉ちゃん」
真帆「なに」
三男「今日も……手、つないでいい?」
真帆「……うん」

ゆかり&姫(遠くから)
「(はいはいはいはい!!)」
真帆「聞こえてる!!」

でも、
手をつないだ瞬間、
真帆の胸は静かに満たされていた。

(……恋人、なんだよね)

その言葉が、
ようやく自然に胸に落ちた。

目が覚めた瞬間、
昨日の真帆の声が蘇る。

「三男のこと……好きだよ」

胸の奥が、
じんわり熱くなる。

三男(心の声)
(……姉ちゃんが、俺のこと好きって言った)

布団の中で顔を覆う。

(恋人……
俺と姉ちゃんが……恋人)

言葉にすると、
胸が跳ねて苦しくなるほど嬉しい。

真帆と待ち合わせるわけじゃない。
でも、
足が自然と真帆の家の前へ向かっていた。

真帆「……三男、おはよう」
三男「……っ、おはよう」

昨日より、
少しだけ距離が近い。

真帆の髪が朝日に透けて、
胸の奥がまた熱くなる。

(……恋人、なんだ)

その実感が、
歩くたびに押し寄せてくる。

信号待ちのとき、
真帆がふと三男の袖をつまんだ。

真帆「……今日も一緒に帰ろうね」
三男「……うん」

その“うん”が、
昨日よりずっと自然に出た。

三男(心の声)
(姉ちゃんが俺を選んでくれた)

その事実だけで、
胸がいっぱいになる。

校門で真帆が待っていた。

真帆「……三男」
三男「うん」

真帆がそっと手を差し出す。

三男(心の声)
(……恋人、だから)

三男はその手を取った。

温かい。
昨日より、
もっと深く。

真帆は少し照れたように笑う。

真帆「……なんか、変だね」
三男「……うん。
でも……嬉しい」

その言葉は、
三男の胸の奥から自然にこぼれた。

玄関を開けた瞬間、
三男は固まった。

リビングには
・クラッカー
・紙吹雪
・巨大な横断幕
『真帆&三男 正式交際おめでとう!!』

父「よく帰ったな」
母「おめでとう〜〜!!」
長男「祝賀会だぞ」
三男「……無理」

真帆「なんでこうなるの!!」

父「議題は一つ。
“二人の交際を盛大に祝う”だ」
真帆「議題にするな!!」
三男「……帰りたい」
母「三男くん、逃げちゃダメよ〜」
長男「で、初デートはいつだ?」

真帆「まだ決めてない!!」
三男「……行きたい」
真帆「三男!?!?」

父「はい決定」
真帆「決定じゃない!!」

家族が騒ぎ続ける中、
三男はふと真帆を見る。

真帆は頬を赤くして、
でもどこか嬉しそうに笑っていた。

三男(心の声)
(……姉ちゃんが、俺の恋人)

家族の声はうるさいのに、
胸の奥は静かに満たされていく。

(姉ちゃんを守りたい。
ずっと隣にいたい)

その気持ちは、
昨日よりずっと強かった。

家族が散っていき、
リビングに静けさが戻る。

真帆「……三男、疲れたね」
三男「……うん」

真帆はそっと三男の手を握る。

真帆「でも……嬉しいよ。
三男が恋人で」

三男「……っ」

胸が跳ねる。

三男「俺も。
姉ちゃんが……恋人でよかった」

その言葉は、
昨日よりずっと自然で、
昨日よりずっと深かった。

目が覚めた瞬間、
昨日の三男の声が蘇る。

「姉ちゃんが……恋人でよかった」

胸がじんわり熱くなる。

真帆(心の声)
(……恋人、なんだよね。
三男が、私の)

布団の中で顔を覆う。

(嬉しいのに、なんか落ち着かない)

昨日までと同じ朝なのに、
世界が少し違って見えた。

いつも通り歩いていたのに、
三男の家の前で自然と足が止まった。

真帆(心の声)
(……待ってるかな)

ドアが開く。

三男「……姉ちゃん、おはよう」
真帆「っ……おはよう」

昨日より、
少しだけ距離が近い。

三男「今日も一緒に行こ」
真帆「……うん」

その“うん”が、
自分でも驚くほど柔らかかった。

歩きながら、
三男がふと袖をつまんでくる。

三男「……昨日のこと、嬉しかった」
真帆「……私も」

言った瞬間、
胸が跳ねた。

(……恋人、なんだよね)

その言葉が、
まだ照れくさくて、
でも嬉しくて、
胸の奥がずっとざわついていた。

教室に入った瞬間、
ゆかりが立ち上がる。

ゆかり「真帆ーー!!恋人おめでとう!!」
真帆「言うな!!」
姫「“交際確定状態”おめでとう」
真帆「その言い方やめて!!」

ゆかりは真帆の両手を掴んで揺らす。

ゆかり「で、どうなの!?
恋人になった気分は!?」
真帆「揺らすな!!」
姫「表情筋が“幸福度高め”」
真帆「測るな!!」

ゆかり「昨日、三男くんと何話したの?」
真帆「な、なんでもないよ」
姫「嘘。真帆の反応速度が“照れ”」
真帆「やめて!!」

ゆかりは机に身を乗り出す。

ゆかり「三男くん、真帆のこと好きすぎでしょ」
真帆「……っ」

胸が跳ねる。

姫「三男くんの視線は“独占欲”」
真帆「独占欲って言うな!!」

校門で三男を捕まえる二人。

ゆかり「三男くん!!恋人おめでとう!!」
三男「……っ、ありがとう」
姫「“恋人の顔”になっている」
三男「やめて」

ゆかりは腕を組む。

ゆかり「真帆のこと、好きなんでしょ」
三男「……うん」
姫「即答。好意の強度が高い」
三男「分析しないで」

ゆかり「真帆のこと、ちゃんと大事にしなよ」
三男「……する。
ずっと」

その言葉に、
ゆかりと姫は同時に目を細めた。

姫「“本気”」
ゆかり「うん、本気だね」

校門で真帆と三男が合流する。

真帆「……三男」
三男「姉ちゃん」

ゆかり&姫(遠くから)
「(はいはいはいはい!!)」
真帆「聞こえてる!!」

三男はそっと手を差し出す。

三男「……帰ろ」
真帆「……うん」

手をつないだ瞬間、
胸の奥が静かに満たされる。

真帆(心の声)
(……恋人、なんだよね)

駅前のベンチ。
真帆は少し早く着いてしまった。

(……恋人としての初デート)

言葉にすると、
胸がじんわり熱くなる。

風が揺れた瞬間、
三男が歩いてくるのが見えた。

三男「……姉ちゃん」
真帆「三男……」

昨日より、
少しだけ近い距離で立つ。

三男「今日……楽しみにしてた」
真帆「……私も」

その“私も”が、
自分でも驚くほど自然だった。

二人が選んだのは、
静かな青春映画。

暗い館内。
席は自然と近い。

真帆(心の声)
(……昨日までと同じ距離なのに、
なんでこんなに意識するんだろ)

三男はスクリーンを見ているふりをしながら、
真帆の横顔をちらりと見る。

三男(心の声)
(姉ちゃん……綺麗)

映画の中で恋人たちが手をつなぐシーン。
真帆の指が、ほんの少し動いた。

三男(心の声)
(……つなぎたい)

でも、
触れたら戻れない気がして、
二人とも動けなかった。

映画のあと、
二人は小さなカフェに入った。

真帆「映画、どうだった?」
三男「……よかった」
真帆「語彙力」

でも、笑ってしまう。

三男はコーヒーを飲みながら、
真帆の指先を見てしまう。

(……触れたい)

昨日より、
もっと強く。

真帆もまた、
三男の視線に気づいていた。

真帆(心の声)
(……そんな目で見ないでよ。
胸が苦しくなる)

でも、嫌じゃない。

夕暮れの公園。
ブランコの鎖が金色に光る。

真帆「ここ、また来たね」
三男「……姉ちゃんが好きだから」

真帆「……っ」

胸が跳ねる。

二人は並んで座る。
沈黙。
でも、昨日までの沈黙とは違う。

真帆(心の声)
(……恋人の沈黙って、こんなに心地いいんだ)

三男はゆっくりと、
真帆の方へ向き直る。

三男「……姉ちゃん」
真帆「なに」

三男「手……つないでいい?」

真帆「……うん」

三男がそっと手を取る。

温かい。
昨日より、
もっと深く。

真帆(心の声)
(……恋人、なんだよね)

三男(心の声)
(姉ちゃんの手……離したくない)

二人の影が重なる。

家の近くまで来ても、
手はつないだまま。

真帆「……三男」
三男「うん」
真帆「今日……すごく楽しかった」
三男「俺も。
姉ちゃんといると……落ち着く」

真帆「……っ」

胸がまた熱くなる。

真帆(心の声)
(……名前で呼びたい)

でも、
まだ言えない。

玄関の灯りが二人を照らす。

三男「……姉ちゃん」
真帆「なに」
三男「また……行こうね」
真帆「……うん。何回でも」

その“何回でも”が、
胸の奥に深く落ちる。

真帆(心の声)
(……恋人としての初デート。
こんなに幸せなんだ)

三男(心の声)
(姉ちゃんと歩く未来がほしい)

二人の影は、
ゆっくりと重なったまま揺れていた。

(……呼びたいんだよね)

“姉ちゃん”じゃなくて。
“真帆”でもなくて。

三男の名前を。

でも、
呼ぼうとすると胸が跳ねて声が出ない。

ドアが開く。

三男「……姉ちゃん、おはよう」
真帆「おはよう……三……」

言いかけて、飲み込む。

三男「……?」
真帆「なんでもない!」

胸が熱くなる。

歩きながら、
真帆は心の中で何度も練習する。

(……三男。
三男、って呼ぶのは普通なのに)

でも、
恋人として呼ぶ“名前”は違う。

(……呼んだら、距離が変わる)

その変化が怖くて、
でも嬉しくて、
胸がざわつく。

三男「姉ちゃん、今日なんか変」
真帆「変じゃないよ」
三男「変」
真帆「変じゃないってば!」

でも、
変なのは自分でもわかっていた。

ゆかり「真帆、なんかソワソワしてない?」
真帆「してない!」
姫「“名前を呼びたいけど呼べない”顔」
真帆「なんでわかるの!!」

ゆかりは机に身を乗り出す。

ゆかり「呼べばいいじゃん、三男くんのこと」
真帆「む、無理……」
姫「“恋人の名前呼び”は距離を縮める行為」
真帆「分析しないで!!」

ゆかりは優しく笑う。

ゆかり「真帆、呼びたいんでしょ?」
真帆「……っ」

否定できなかった。

校門で三男が待っている。

三男「……姉ちゃん」
真帆「三……っ」

また言えない。

三男「……どうしたの?」
真帆「なんでもない!」

三男は少しだけ寂しそうに笑う。

三男「姉ちゃんが呼びたい時でいいよ」

その優しさが、
逆に胸を締めつけた。

真帆(心の声)
(……呼びたいよ。
呼びたいのに、言えない)

夕暮れの公園。
二人は並んで座る。

真帆「……三男」
三男「うん」

真帆「私ね……
三男のこと、名前で呼びたいの」

三男「……っ」

三男の目が大きく開く。

真帆「でも……
呼ぼうとすると、胸が苦しくなるんだよ」

三男「……嬉しい」

真帆「え?」
三男「姉ちゃんが……俺の名前呼びたいって思ってくれてるの、嬉しい」

真帆「……っ」

胸が跳ねる。

家の近くまで来ても、
真帆の胸はずっと熱かった。

真帆「……三男」
三男「うん」
真帆「もう少ししたら……呼ぶね」
三男「……うん。
待ってる」

その“待ってる”が、
胸の奥に深く落ちる。

真帆(心の声)
(……もうすぐ言える。
もうすぐ、名前で呼べる)

その予感だけで、
胸が静かに震えていた。

真帆は三男と並んで歩きながら、
胸の奥がずっとざわついていた。

真帆(心の声)
(……呼びたいのに、呼べない)

三男はいつも通り優しく歩幅を合わせてくれる。

三男「……姉ちゃん、今日も一緒に帰れて嬉しい」
真帆「……うん」

その“うん”の裏で、
喉の奥に“名前”が引っかかったままだった。


真帆「じゃあ、また明日――」

ガチャ、と玄関を開けた瞬間。

パンッ!!(クラッカー)

真帆「……は?」
三男「……っ」

紙吹雪が舞い、
リビングから家族全員が飛び出してくる。

父「第七次家族会議を開催する!!」
母「名前呼び記念〜〜!!」
長男「ついに来たな、この日が」

真帆「呼んでない!!まだ呼んでない!!」
三男「……無理」

父は腕を組んで頷く。

父「真帆が三男を名前で呼ぶ日が来た」
真帆「来てない!!」
母「でも呼びたいんでしょ〜?」
真帆「それは……っ」
長男「ほら、図星」

三男は真っ赤になって俯く。

三男「……姉ちゃんが呼びたい時でいい」
真帆「三男……」

父「はい、今“名前呼び”した」
真帆「違う!!それは普通の呼び方!!」

父「議題は一つ。
“真帆が三男を名前で呼ぶタイミングについて”」
真帆「議題にするな!!」
母「いつ呼ぶの〜?」
真帆「呼ばない!!」
長男「いや、呼ぶだろ」
真帆「呼ぶけど!!……まだ!!」

三男は静かに言う。

三男「……姉ちゃんが言える時でいいよ」

その優しさが、
真帆の胸をまた締めつける。

父「明日だな」
母「いや、今夜かも〜」
長男「公園で呼ぶに一票」
真帆「賭けるな!!」

三男は小さく呟く。

三男「……呼んでくれたら嬉しいけど」

真帆「……っ」

その一言で、
胸が一気に熱くなる。

真帆「……ごめんね、三男。家族が……」
三男「……いいよ。
姉ちゃんが呼びたいって思ってくれてるだけで、嬉しい」

真帆「……っ」

胸の奥が震える。

真帆(心の声)
(……呼びたい。
三男の名前を、恋人として)

でも、
まだ声にならない。

三男「……姉ちゃん」
真帆「なに」
三男「今日もありがとう。
また明日も……一緒に帰ろ」

真帆「……うん」

三男が帰ろうとした瞬間、
真帆の喉が震えた。

真帆「……み……」

三男「……?」

真帆「……っ、なんでもない!!」

三男は少し照れたように笑う。

三男「……待ってる」

その“待ってる”が、
真帆の胸に深く落ちた。

(……もうすぐ呼べる)

その予感だけで、
胸が静かに熱くなった。

三男「……姉ちゃん、今日も一緒に帰れて嬉しい」
真帆「……うん」

その“うん”の裏で、
喉の奥に“名前”がずっと引っかかっていた。

真帆(心の声)
(……呼びたい。
三男の名前を、恋人として)

でも、
声にすると胸が跳ねて苦しくなる。

いつものブランコに座る。
風が少し冷たい。

三男「……姉ちゃん、最近なんか変」
真帆「変じゃないよ」
三男「変」
真帆「変じゃないってば!」

でも、
変なのは自分でもわかっていた。

真帆「三男……」
三男「うん」

真帆「私ね……
ずっと呼びたかったんだよ。
三男のこと……名前で」

三男「……っ」

三男の目が揺れる。

真帆「でも……呼ぼうとすると、
胸が苦しくなるの」

三男「……呼んでほしい」

その一言が、
真帆の胸を決定的に揺らした。

真帆は深く息を吸う。

真帆「……み……」

三男「……っ」

真帆「……みな……」

声が震える。
でも、止まらない。

真帆「……みな……しょ」

三男の呼吸が止まった。

三男「……姉ちゃん……」

真帆「彰……」

今度ははっきりと。
恋人としての声で。

三男は顔を真っ赤にして俯く。

三男「……嬉しい」

その一言で、
真帆の胸が一気に熱くなった。

三男が帰り道で捕まる。

ゆかり「三男くん!!」
三男「……っ、なに」
姫「“名前呼び成立”おめでとう」
三男「なんで知ってるの」

ゆかりは腕を組む。

ゆかり「真帆、今日呼んだでしょ」
三男「……うん」
姫「反応速度が“幸福度最大値”」
三男「分析しないで」

ゆかりはニヤニヤしながら言う。

ゆかり「で、どうだった?」
三男「……嬉しかった」
姫「声が震えている。照れ」
三男「やめて」

教室に入った瞬間、
ゆかりが立ち上がる。

ゆかり「真帆ーー!!名前呼びおめでとう!!」
真帆「言うな!!」
姫「“恋人の名前呼び”は関係深化の証」
真帆「分析しないで!!」

ゆかりは真帆の両手を掴んで揺らす。

ゆかり「で、どんな声で呼んだの!?」
真帆「揺らすな!!」
姫「表情筋が“幸福度高め”」
真帆「測るな!!」

校門で三男が待っている。

三男「……姉ちゃん」
真帆「彰」

三男「……っ」

真帆「今日も一緒に帰ろ」
三男「……うん」

名前を呼ぶたびに、
胸の奥が静かに満たされていく。

真帆(心の声)
(……呼べてよかった)

三男(心の声)
(……姉ちゃんに名前呼ばれるの、
こんなに嬉しいんだ)

二人の影が、
ゆっくりと重なった。

「彰」

その響きが、
真帆の胸にまだ残っている。

真帆(心の声)
(……呼べたんだよね。
でも、まだ慣れてない)

三男の家の前で足が止まる。

ドアが開く。

三男「……姉ちゃん、おはよう」
真帆「おはよう……む、彰……」

言いかけて、飲み込む。

三男「……?」
真帆「なんでもない!」

胸が跳ねる。

歩きながら、
真帆は心の中で何度も練習する。

(……彰。
彰、って呼ぶのは普通なのに)

でも、
恋人として呼ぶ“名前”は違う。

(……呼んだら、距離がまた変わる)

その変化が怖くて、
でも嬉しくて、
胸がざわつく。

三男「姉ちゃん、今日もなんか変」
真帆「変じゃないよ」
三男「変」
真帆「変じゃないってば!」

でも、
変なのは自分でもわかっていた。

ゆかり「真帆、またソワソワしてる」
真帆「してない!」
姫「“名前呼び第二段階”の顔」
真帆「なんでわかるの!!」

ゆかりは机に身を乗り出す。

ゆかり「昨日“彰”って呼んだんでしょ?」
真帆「……っ」
姫「今日は“彰”に挑戦する日」
真帆「挑戦って言わないで!!」

ゆかりは優しく笑う。

ゆかり「呼びたいんでしょ?」
真帆「……うん」

否定できなかった。

校門で三男が待っている。

三男「……姉ちゃん」
真帆「……あ、あ……」

また言えない。

三男「……どうしたの?」
真帆「なんでもない!」

三男は少しだけ寂しそうに笑う。

三男「……姉ちゃんが呼びたい時でいいよ」

その優しさが、
真帆の胸をまた締めつけた。

真帆(心の声)
(……呼びたいよ。
呼びたいのに、言えない)

夕暮れの公園。
風が少し冷たい。

真帆「……ねぇ」
三男「うん?」

真帆は深く息を吸う。

真帆「……あきら」

三男「……っ」

真帆「彰……」

今度は自然に。
喉の奥から、
恋人としての声で。

三男は顔を真っ赤にして俯く。

三男「……嬉しい」

真帆「……よかった」

胸の奥が、
静かに満たされていく。

家の近くまで来ても、
真帆の胸はずっと温かかった。

真帆「……彰」
三男「うん」
真帆「今日も一緒に帰れて嬉しかった」
三男「……俺も」

名前を呼ぶたびに、
距離が自然に近づいていく。

真帆(心の声)
(……呼べるようになったんだ)

三男(心の声)
(……姉ちゃんに名前呼ばれるの、
こんなに嬉しいんだ)

二人の影が、
ゆっくりと重なった。

2件のコメント (新着順)
ユーザー画像
ユーザー画像
退会したユーザー
2026/05/04 15:28

遡っていきまーす💦💦
相関図が、未だ不明だな

貸枕考古 バッジ画像
2026/05/03 16:32

「……うん」




父ィ、母ァ、長男ーン、ゆかりィ、姫ェ、