「ここにいるよ」 第29話~第38話
■ 第29話「長男の乱入、母の誤解、父の暴走、そして第四次家族会議」
真帆と三男が玄関で靴を脱いでいると、
長男が廊下の影から飛び出してきた。
長男「お前ら、ちょっと待て」
真帆「うわっ、なに!?」
三男「……兄ちゃん、怖い」
長男は腕を組み、
妙に真剣な顔で二人を見つめる。
長男「お前ら、最近距離近くね?」
真帆「近くない!」
三男「近い……かも」
真帆「三男!!」
長男はさらに踏み込む。
長男「お前らさ、付き合う気あるの?」
真帆「な、なに言ってんの!?」
三男「……っ」
その瞬間――
廊下の奥から母の声が聞こえた。
母「えっ、付き合うの!?」
真帆「聞いてたの!?」
母「小耳に挟んじゃった〜」
母はそのままリビングへ走り、
父に向かって叫ぶ。
母「あなた!!真帆ちゃんと三男くん、付き合うって!!」
真帆「言ってない!!」
三男「言ってない……けど……」
真帆「けど、じゃない!!」
父は新聞をバサッと閉じる。
父「よし、家族会議だ」
真帆「なんでそうなるの!!」
長男「第四次だな」
三男「……やめて」
リビングのテーブルに家族全員が揃う。
真帆と三男は並んで座らされる。
父「議題は一つ。
“真帆と三男の関係性について”だ」
真帆「議題にするな!!」
三男「……帰りたい」
母「三男くん、逃げちゃダメよ〜」
長男「で、どうなの?」
真帆「どうもこうもないよ!」
三男「……俺は、姉ちゃんと一緒にいたい」
真帆「三男!!」
家族「(聞こえてるぞ)」
父「真帆。お前はどうなんだ」
真帆「ど、どうって……」
母「三男くんのこと、好き?」
真帆「……っ」
長男「顔が“好き”だな」
真帆「表情筋で判断するな!!」
三男は真っ赤になって俯く。
三男「……姉ちゃんが嫌じゃなければ……
もっと近くにいたい」
真帆「……っ」
母「きゃー!!」
長男「はい、決まり」
父「正式デートだな」
真帆「決めるな!!」
父は立ち上がり、
妙に厳かな声で言う。
父「第四次家族会議の結論を発表する」
真帆「やめて!!」
三男「……無理」
母「ドキドキする〜」
長男「発表しろ」
父「結論――
“真帆と三男は正式にデートをすること”」
真帆「なんでそうなるの!!」
三男「……っ、いや……その……行きたい」
真帆「三男!?!?」
家族「(聞こえてるぞ)」
真帆「聞くな!!」
家族が散っていき、
リビングに二人だけが残る。
真帆「……三男、本当に行きたいの?」
三男「行きたい。
姉ちゃんと一緒にいたい」
真帆「……っ」
胸が、
またじんわり熱くなる。
真帆「……じゃあ、考える」
三男「……うん」
第四次家族会議は、
騒がしくて、
勝手で、
でもどこか温かかった。
そして――
二人の距離はまた一歩、
確かに前へ進んだ。
■ 第30話
リビングが静かになった。
父も母も兄ちゃんも、満足げに散っていった。
残されたのは、
テーブルの上の紙コップと、
まだ温かい空気と、
真帆と俺だけ。
真帆「……三男、本当に行きたいの?」
三男「行きたい。姉ちゃんと一緒にいたい」
言った瞬間、
胸の奥が熱くなった。
(……やっと言えた)
でも、
その熱は“嬉しさ”だけじゃなかった。
真帆は少しだけ俯いて、
でもどこか嬉しそうに笑った。
真帆「……じゃあ、考える」
三男「……うん」
その笑顔を見た瞬間、
胸がぎゅっと締まった。
(……誰にも見せたくない)
自分でも驚くほど、
強い感情だった。
部屋に戻ってドアを閉めた瞬間、
息を吐いた。
三男(心の声)
(……姉ちゃん、誰かに取られたくない)
昨日より、
今日の方がずっと強い。
佐伯くんのことを思い出す。
真帆の前で優しく笑っていた顔。
真帆が少しだけ困ったように笑っていた顔。
(……嫌だ)
胸の奥が、
静かに、でも確かに熱くなる。
廊下の向こうで、
父と母が話している声が聞こえた。
母「三男くん、ほんとに真帆ちゃんのこと好きなのね〜」
父「まあ、あれはもう確定だな」
長男「真帆もまんざらじゃないし」
三男(心の声)
(……確定、か)
家族の言葉は騒がしいのに、
胸の奥は妙に静かだった。
(姉ちゃんが誰かに笑うの、嫌だ)
その気持ちだけが、
はっきりしていた。
水を飲もうと廊下に出たとき、
真帆の部屋の前で足が止まった。
ドアの向こうから、
小さなため息が聞こえる。
真帆「……どうしよう」
三男(心の声)
(……俺のこと、考えてる?)
胸が跳ねた。
でも同時に、
胸の奥の熱がさらに強くなる。
(姉ちゃんが誰かのことで悩むのは嫌だ。
俺のことで悩むなら……いい)
自分でも驚くほど、
独占欲に近い感情だった。
布団に入っても眠れない。
三男(心の声)
(姉ちゃんとデート……したい)
でもそれ以上に――
(姉ちゃんの隣にいるのは、俺がいい)
その言葉が、
静かに胸の奥で形になっていく。
昨日より、
今日の方が強い。
今日より、
明日の方がもっと強くなる気がした。
三男(心の声)
(……姉ちゃんを、誰にも渡したくない)
声にはしない。
言葉にもできない。
でも、
確かにそう思った。
そしてその夜、
三男の中で“静かな独占欲”が
ゆっくりと、確かに育ち始めた。
■ 第31話「前夜の静けさ、当日の大騒ぎ」
布団に入っても、
胸の奥がずっとざわついていた。
(……明日、三男とデート)
“デート”と言われるとまだ照れる。
でも、嫌じゃない。
むしろ――
(楽しみ、なんだよね……)
その気持ちに気づいた瞬間、
胸がじんわり熱くなる。
枕に顔を埋める。
真帆「……どうしよう」
その声は、
誰にも聞こえないはずだった。
三男もまた、布団の中で目を開けていた。
三男(心の声)
(……姉ちゃんとデート)
胸が熱くて、
息が少しだけ速くなる。
(姉ちゃんが誰かに笑うの、嫌だ。
でも……俺に笑ってくれるのは嬉しい)
独占欲に近い感情が、
静かに胸の奥で膨らんでいく。
三男(心の声)
(明日……ちゃんと隣にいたい)
その想いが、
眠気を完全に奪っていた。
リビングでは、
父・母・長男が“作戦会議”をしていた。
父「明日は二人のデートだ」
母「真帆ちゃん、絶対可愛い服着せなきゃ〜」
長男「三男には男らしいアドバイスをしよう」
父「よし、明日は早起きだ」
母「お弁当作るわね〜」
長男「俺は二人を尾行する」
父母「やめろ」
家族のテンションは、
すでに当日レベルだった。
階段を降りた瞬間、
真帆は固まった。
テーブルの上には
・母の手作り弁当
・父の“デート心得メモ”
・長男の“兄からのアドバイス”
・花束(誰が用意したのか不明)
真帆「……何これ」
母「真帆ちゃん、今日デートでしょ〜」
真帆「言うな!!」
父「心得を読め」
真帆「読まない!!」
長男「花束持ってけ」
真帆「持たない!!」
三男はすでに座っていて、
真っ赤になって俯いている。
三男「……やめて」
母「照れてる〜かわいい〜」
父「男なら堂々としろ」
三男「無理……」
長男は三男の肩を叩く。
長男「三男、今日が勝負だぞ」
三男「勝負じゃない……」
父「真帆を守れ」
三男「守る……」
母「手、つないであげなさいね〜」
三男「……っ」
真帆「母さん!!」
家族の暴走は止まらない。
家族に背中を押されるようにして、
真帆と三男は玄関へ向かう。
真帆「……ごめんね、三男。家族が……」
三男「……いい。
姉ちゃんと行けるなら……なんでもいい」
真帆「……っ」
その言葉に、
胸がまた熱くなる。
家族「(聞こえてるぞ)」
真帆「聞くな!!」
玄関を出た瞬間、
家族全員が並んでいた。
父「行ってこい」
母「楽しんでね〜」
長男「三男、失敗すんなよ」
真帆「失敗って何!!」
三男は真っ赤になりながら、
小さく言った。
三男「……姉ちゃん、行こ」
真帆「……うん」
二人は並んで歩き出す。
家族「(見守ってるぞ)」
真帆「見守るな!!」
でも――
その騒がしさの中で、
二人の距離は確かに近づいていた。
■ 第32話「はじめてのデート、名前のつかない時間」
駅前のベンチ。
三男は10分前に着いていた。
落ち着かない手元。
何度もスマホの時間を見る。
三男(心の声)
(……姉ちゃん、来るかな)
その瞬間――
ふわりと風が揺れ、
真帆が歩いてきた。
真帆「三男」
三男「……っ」
いつもより少しだけ整えた髪。
いつもより少しだけ柔らかい表情。
三男(心の声)
(……誰にも見せたくない)
胸の奥が静かに熱くなる。
真帆「待った?」
三男「……ちょっとだけ」
真帆「早く来すぎなんだよ」
でも、真帆は少し嬉しそうだった。
二人が選んだのは、
静かな恋愛映画。
暗い館内。
席は自然と近い。
真帆(心の声)
(……なんでこんなに緊張するの)
三男はスクリーンを見ているふりをしながら、
真帆の横顔をちらりと見てしまう。
三男(心の声)
(姉ちゃん……綺麗)
映画の中の恋人たちが手をつなぐシーン。
真帆の指が、ほんの少し動いた。
三男(心の声)
(……つなぎたい)
でも、
触れられない。
触れたら戻れない気がして。
映画のあと、
二人は小さなカフェに入った。
真帆「映画、どうだった?」
三男「……よかった」
真帆「語彙力」
でも、笑ってくれる。
三男はコーヒーを飲みながら、
真帆の指先を見てしまう。
(……触れたい)
その気持ちが、
昨日よりずっと強い。
真帆もまた、
三男の視線に気づいていた。
真帆(心の声)
(……三男、なんでそんな目で見るの)
胸が熱くなる。
夕暮れの公園。
ブランコの鎖が金色に光る。
真帆「ここ、また来たね」
三男「……姉ちゃんが好きだから」
真帆「……っ」
沈黙。
でも、昨日よりずっと近い沈黙。
三男はゆっくりと、
真帆の方へ向き直る。
三男「……姉ちゃん」
真帆「なに」
三男「今日……すごく嬉しい」
真帆「……私もだよ」
風が吹き、
二人の影が重なる。
真帆がそっと、
三男の袖をつまんだ。
真帆「……ねぇ三男」
三男「……うん」
真帆「手……つないでいい?」
三男の呼吸が止まる。
三男「……いいの?」
真帆「うん。
今日くらい……いいでしょ」
三男はゆっくり、
真帆の手を取った。
温かい。
昨日より、
もっと深く。
三男(心の声)
(……姉ちゃんを、誰にも渡したくない)
真帆(心の声)
(……三男の手、こんなに安心するんだ)
二人の手は、
離れなかった。
家の近くまで来ても、
手はつないだまま。
真帆「……三男」
三男「なに」
真帆「今日、楽しかったよ」
三男「俺も」
真帆「また行こうね」
三男「……うん。何回でも」
その言葉は、
“デート未満”を
“デート”に変えるには十分だった。
家の前に着くと――
カーテンの隙間から、
家族全員の影が見えた。
真帆「……見てる」
三男「……うん」
真帆「帰りたくない」
三男「俺も」
でも、
二人は手を離さずに家へ向かった。
家族「(聞こえてるぞ)」
真帆「聞くな!!」
それでも、
二人の距離はもう戻らなかった。
■ 第33話「逃げ場なしの追及、そして地獄の報告会」
教室に入った瞬間、
ゆかりが机を叩いて立ち上がる。
ゆかり「真帆!!昨日のデート!!報告!!」
真帆「まだ座ってもないんだけど!?」
姫「心拍数、平常時より高い。つまり“進展あり”」
真帆「測るな!!」
ゆかりは真帆の腕を掴んで席に座らせる。
ゆかり「で、どこ行ったの?」
真帆「映画……」
ゆかり「ジャンルは?」
真帆「恋愛……」
姫「恋愛映画で隣に座るのは“距離を縮める行為”」
真帆「分析するな!!」
ゆかりはさらに身を乗り出す。
ゆかり「で、手は!?つないだ!?」
真帆「……っ」
姫「沈黙は“肯定”」
真帆「やめて!!」
ゆかり「三男くん、どんな顔してた?」
真帆「どんなって……普通……」
姫「嘘。真帆の表情筋が“照れ”」
真帆「表情筋で全部判断するな!!」
ゆかりは机を叩く。
ゆかり「真帆、三男くんのこと好きでしょ」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
否定しようとしたのに、
言葉が出てこない。
姫「反応速度が“図星”」
真帆「やめて!!」
校門で三男が待っている。
三男「……姉ちゃん」
真帆「三男……」
ゆかり&姫は遠くから見ている。
ゆかり「ほら見て、距離近い」
姫「三男くんの視線が“独占欲”」
真帆「聞こえてる!!」
三男は真っ赤になって俯く。
三男「……姉ちゃん、帰ろ」
真帆「うん」
二人が歩き出すと、
ゆかり&姫は満足げにうなずいた。
玄関を開けた瞬間、
真帆は固まった。
リビングのテーブルには
・クラッカー
・紙吹雪
・“デート報告会”の文字
・父の司会メモ
・母のケーキ
・長男のカメラ(録画準備)
真帆「……何これ」
父「デート報告会だ」
真帆「やめて!!」
母「真帆ちゃん、座って〜」
長男「三男、こっち来い」
三男「……無理」
父「まずは映画だな。どんな内容だ」
真帆「普通の恋愛映画だよ」
母「手はつないだ?」
真帆「なんでそこ聞くの!!」
長男「三男、どうだった?」
三男「……嬉しかった」
真帆「三男!!」
家族「(聞こえてるぞ)」
真帆「聞くな!!」
父は満足げにうなずく。
父「よし、次はカフェだ」
真帆「なんで全部知ってるの!?」
長男「尾行した」
父母「やめろと言っただろう!!」
母「真帆ちゃん」
真帆「なに」
母「三男くんのこと、好き?」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
言葉が出ない。
三男は息をのむ。
長男「顔が“好き”だな」
真帆「表情筋で判断するな!!」
でも、
否定できなかった。
父「よし、結論を発表する」
真帆「やめて!!」
三男「……無理」
母「ドキドキする〜」
長男「発表しろ」
父「結論――
“二人は次のデートも行くこと”」
真帆「決めるな!!」
三男「……行きたい」
真帆「三男!?!?」
家族「(聞こえてるぞ)」
真帆「聞くな!!」
でも――
胸の奥は、
ほんの少しだけ嬉しかった。
■ 第34話「名前になる前の名前」
デートの翌日。
真帆と三男は、いつもよりゆっくり歩いていた。
三男「……姉ちゃん、昨日……楽しかった」
真帆「うん。私も」
その“私も”が、
昨日より柔らかい。
沈黙が続く。
でも、重くない。
むしろ心地いい。
真帆(心の声)
(……この沈黙、好きだな)
三男(心の声)
(……姉ちゃんと歩くの、ずっと続けばいい)
二人の距離は、
もう“家族”の距離ではなかった。
真帆はふと、昨日のゆかりの言葉を思い出す。
「真帆、三男くんのこと好きでしょ」
胸が跳ねる。
真帆(心の声)
(……好き、なのかな)
三男の横顔を見る。
夕陽が頬を照らしている。
(……嫌いなわけない)
でも、
“好き”と言うにはまだ怖い。
三男もまた、
昨日の家族会議で言われた言葉が頭に残っていた。
「真帆を守れ」
三男(心の声)
(……守りたい)
それは“家族だから”ではなく、
もっと深いところから湧いてくる感情。
(姉ちゃんが誰かに笑うの、嫌だ)
その気持ちは、
もう隠せないほど大きくなっていた。
デートで来た公園に、
自然と足が向いた。
真帆「……また来ちゃったね」
三男「姉ちゃんが好きだから」
真帆「……っ」
胸が熱くなる。
昨日と同じ言葉なのに、
今日はもっと深く刺さる。
二人は並んでブランコに座る。
風が吹き、
影が重なる。
真帆「三男」
三男「なに」
真帆は少しだけ息を吸う。
真帆「私たちって……何なんだろうね」
三男は一瞬固まる。
三男「……姉ちゃんが嫌じゃなければ……
もっと近くにいたい」
真帆「……嫌じゃないよ」
沈黙。
でも、昨日よりずっと近い沈黙。
真帆(心の声)
(……これって、何て呼べばいいんだろう)
三男(心の声)
(……名前がほしい)
でも、
まだ言葉にはできない。
家の近くまで来ても、
手はつながない。
でも、距離は近い。
真帆「……三男」
三男「なに」
真帆「また……行こうね」
三男「……うん。何回でも」
その“何回でも”が、
胸の奥に深く落ちる。
真帆(心の声)
(……好き、なのかな)
三男(心の声)
(……姉ちゃんを、誰にも渡したくない)
二人の関係は、
まだ名前を持っていない。
でも――
もうすぐ名前になる。
そんな予感だけが、
静かに、確かに揺れていた。
■ 第35話「もう付き合ってるでしょ、の圧」
真帆が教室に入った瞬間、
ゆかりと姫が同時に立ち上がった。
ゆかり「真帆、話がある」
真帆「え、ちょっと待って、まだ座って――」
姫「座らなくていい。立ったまま“尋問”」
真帆「尋問って言った!?」
ゆかりは腕を組み、
姫はタブレットを構え、
完全に“逃がさない”体勢。
ゆかり「昨日のデート、どうだった」
真帆「普通に楽しかったよ」
ゆかり「“普通に”は嘘の時の言い方」
姫「表情筋が“幸福度高め”」
真帆「表情筋で判断するな!!」
ゆかりは机を叩く。
ゆかり「で、手つないだんでしょ」
真帆「……っ」
姫「沈黙は“肯定”」
真帆「やめて!!」
姫「真帆は三男くんといる時、心拍数が安定している」
真帆「なんで知ってるの!?」
姫「観察」
真帆「観察するな!!」
姫は淡々と続ける。
姫「佐伯くんと話す時は“緊張”。
三男くんといる時は“安心”。
これは“恋愛対象の選別”」
真帆「分析しないで!!」
ゆかり「真帆、正直に言いなよ。
もう付き合ってるでしょ」
真帆「つ、付き合ってない!!」
ゆかり「じゃあ何なの」
真帆「……っ」
言葉が出ない。
ゆかり「ほら、言えないってことは――」
姫「“ほぼ交際”」
真帆「ほぼって何!!」
真帆(心の声)
(……付き合ってる、とは言えない。
でも、家族でもない。
じゃあ、何?)
昨日の三男の手の温度が蘇る。
(……嫌じゃなかった。
むしろ……嬉しかった)
胸が熱くなる。
ゆかり「真帆、三男くんのこと好きなんでしょ」
真帆「……っ」
姫「反応速度が“肯定”」
真帆「やめて!!」
ゆかりは優しく笑う。
ゆかり「いいじゃん。
好きなら好きって言っても」
真帆「……まだ、言えないよ」
姫「でも、もう“名前のない関係”ではない」
真帆「……っ」
胸の奥が、
静かに、でも確かに揺れた。
校門で三男が待っている。
真帆を見ると、
少し照れたように笑う。
三男「……姉ちゃん」
真帆「三男……」
ゆかり&姫は遠くから見ている。
ゆかり「ほら、あれもう付き合ってるでしょ」
姫「“交際未申告状態”」
真帆「聞こえてる!!」
でも――
真帆の胸は、
否定しながらも温かかった。
(……付き合ってる、のかな)
その言葉が、
静かに形になり始めていた。
■ 第36話「名前になる前の、決定的な夜」
デートから数日。
放課後の帰り道、
三男と並んで歩く時間が、
以前よりずっと自然になっていた。
三男「……姉ちゃん、今日も一緒に帰ろ」
真帆「うん」
その“うん”が、
自分でも驚くほど柔らかい。
真帆(心の声)
(……なんでこんなに安心するんだろ)
三男の歩幅に合わせて歩くと、
胸の奥がじんわり温かくなる。
(……好き、なのかな)
その言葉が、
昨日よりもはっきり形になり始めていた。
二人は自然と、
あの公園へ向かっていた。
夕陽が沈みかけ、
ブランコの鎖が金色に光る。
三男「……姉ちゃん、座る?」
真帆「うん」
並んで座ると、
風が頬を撫でた。
真帆(心の声)
(……この時間、ずっと続けばいいのに)
三男がふと、
真帆の方を向く。
三男「姉ちゃん、最近……俺のこと避けてない?」
真帆「避けてないよ」
三男「じゃあ……なんでそんな顔してるの」
真帆「……っ」
胸が跳ねた。
真帆(心の声)
(……三男、気づいてるんだ)
三男の目は真っ直ぐで、
逃げ場がなかった。
真帆「……三男のこと考えると、
胸が苦しくなるんだよ」
三男「……え」
真帆「苦しいけど……嫌じゃない。
むしろ……嬉しい」
その瞬間、
自分の気持ちが“決定的に深まった”と気づいた。
(……私、三男のことが好きなんだ)
三男は真帆の言葉を聞きながら、
胸の奥が熱くなるのを感じていた。
三男(心の声)
(……姉ちゃん、俺のこと考えてくれてた)
嬉しさと、
それ以上の感情が混ざる。
(名前がほしい)
“姉ちゃん”でも“家族”でもない。
もっと近い、
もっと深い名前。
(……恋人、って言いたい)
でも、
言った瞬間に壊れそうで怖い。
三男「……姉ちゃん」
真帆「なに」
三男「俺……姉ちゃんのこと、
もっと近くで呼びたい」
真帆「……っ」
その言葉は、
告白ではない。
でも、
“名前をつけたい”気持ちが溢れていた。
夕暮れの光の中で、
真帆はそっと三男の袖をつまんだ。
真帆「……三男」
三男「うん」
真帆「私も……三男のこと、
もっと近くで呼びたいよ」
三男の呼吸が止まる。
三男(心の声)
(……姉ちゃん)
胸の奥の熱が、
昨日よりずっと強い。
(名前がほしい。
姉ちゃんの隣の“名前”が)
真帆もまた、
胸の奥で同じ言葉が形になりかけていた。
(……恋人、って呼びたい)
でも、
まだ言えない。
家の近くまで来ても、
二人は手をつながない。
でも、距離は昨日より近い。
真帆「……三男」
三男「なに」
真帆「また……公園行こうね」
三男「……うん。何回でも」
その“何回でも”が、
胸の奥に深く落ちる。
真帆(心の声)
(……好きだよ、三男)
三男(心の声)
(……姉ちゃんを、俺の名前で呼びたい)
二人の関係は、
まだ名前を持っていない。
でも――
もうすぐ名前になる。
その予感だけが、
静かに、確かに重なっていた。
第37話「言いかけた名前、飲み込んだ鼓動」
教室に入った瞬間、
ゆかりが机を叩いて立ち上がる。
ゆかり「真帆、もう告白しなよ」
真帆「は!?なんでそうなるの!?」
姫「“名前のない関係”は長く続かない。
どちらかが名前をつける必要がある」
真帆「名前って言わないで!!」
ゆかりは真帆の肩を掴む。
ゆかり「だってさ、デートして、手つないで、
毎日一緒に帰って、
お互いの顔見て赤くなって……」
真帆「やめて!!」
姫「それは“交際未申告状態”」
真帆「その言い方やめて!!」
ゆかり「真帆、三男くんのこと好きなんでしょ」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
否定しようとしたのに、
言葉が出てこない。
姫「反応速度が“肯定”」
真帆「やめて!!」
ゆかりは優しく言う。
ゆかり「だったらさ、
もう告白しちゃえばいいじゃん」
真帆「……できないよ」
ゆかり「なんで?」
真帆「……怖いから」
その“怖い”には、
いろんな意味が混ざっていた。
校門で三男が待っている。
三男「……姉ちゃん」
真帆「三男……」
ゆかり&姫は遠くから見ている。
ゆかり「ほら、あれもう付き合ってるでしょ」
姫「“告白前の安定期”」
真帆「聞こえてる!!」
でも、
三男の横に立つと胸が苦しくなる。
真帆(心の声)
(……言いたいのに、言えない)
三男の歩幅に合わせて歩くと、
胸の奥がじんわり熱くなる。
夕暮れの公園。
二人はいつものようにブランコに座る。
三男「……姉ちゃん、今日なんか変」
真帆「変じゃないよ」
三男「変」
真帆「変じゃないってば」
でも、
胸の奥はずっとざわついていた。
真帆「三男」
三男「なに」
真帆は息を吸う。
真帆「私……三男のこと……」
言いかけた瞬間、
心臓が跳ねた。
(……言えない)
喉の奥で言葉が止まる。
真帆「……なんでもない」
三男「……っ」
三男の目が、
少しだけ寂しそうに揺れた。
真帆(心の声)
(言いたいのに……言えない)
三男は静かに言う。
三男「姉ちゃん。
俺……姉ちゃんのこと、
もっと近くで呼びたい」
真帆「……っ」
その言葉は、
告白ではない。
でも、
“名前をつけたい”気持ちが溢れていた。
真帆(心の声)
(……私もだよ)
でも、
言葉にはできない。
家の近くまで来ても、
二人は手をつながない。
でも、距離は昨日より近い。
真帆「……三男」
三男「なに」
真帆「また……公園行こうね」
三男「……うん。何回でも」
その“何回でも”が、
胸の奥に深く落ちる。
真帆(心の声)
(……言いたかったのに)
“好き”
“恋人になりたい”
“名前をつけたい”
全部、
喉の奥で止まったまま。
でも――
確かに形になり始めていた。
三男と並んで歩く帰り道。
夕陽が二人の影を長く伸ばしている。
三男「……姉ちゃん、今日も一緒に帰れて嬉しい」
真帆「……うん」
その“うん”が、
自分でも驚くほど柔らかい。
真帆(心の声)
(……言いたい。
三男のこと、好きって)
でも、
喉の奥で言葉が止まる。
二人は自然と、
あのブランコのある公園へ向かった。
三男「……姉ちゃん、最近なんか変」
真帆「変じゃないよ」
三男「変」
真帆「変じゃないってば」
でも、
胸の奥はずっとざわついていた。
真帆「三男」
三男「なに」
真帆は息を吸う。
真帆「私……三男のこと……す……」
“す”まで出た。
その瞬間、心臓が跳ねる。
(……言える。
言えるはずだったのに)
真帆「……っ、なんでもない」
三男「……姉ちゃん」
三男の目が、
少しだけ寂しそうに揺れた。
三男「俺……姉ちゃんのこと、
もっと近くで呼びたい」
真帆「……っ」
その言葉は、
告白ではない。
でも、
“名前をつけたい”気持ちが溢れていた。
真帆(心の声)
(……私もだよ)
でも、
言葉にはできない。
関を開けた瞬間、
真帆は固まった。
リビングの壁には
巨大な横断幕。
『真帆&三男 交際おめでとう!!』
真帆「……は?」
三男「……っ」
父「よく帰ったな」
母「おめでとう〜」
長男「ついに付き合ったか」
真帆「付き合ってない!!」
三男「……まだ」
父「“まだ”と言ったな」
母「つまり“これから”ね〜」
長男「はい確定」
真帆「確定じゃない!!」
父は腕を組んで宣言する。
父「二人の関係は――
“恋人未満・ほぼ恋人”だ」
真帆「そんなカテゴリない!!」
三男「……でも、近い」
真帆「三男!?!?」
母はさらに追い打ちをかける。
母「もう“カップル”でいいじゃない」
真帆「よくない!!」
長男「いや、ほぼカップルだろ」
真帆「ほぼって何!!」
家族の暴走は止まらない。
家族が散っていき、
リビングに二人だけが残る。
真帆「……三男」
三男「なに」
真帆は胸に手を当てる。
真帆「私……三男のこと……
す、す……」
三男「……っ」
真帆「す……き……」
言いかけた。
ほんの一瞬、
確かに言いかけた。
でも――
真帆「……やっぱり、まだ言えない」
三男は小さく笑った。
三男「……いいよ。
姉ちゃんが言える時で」
その優しさが、
逆に胸を締めつけた。
真帆(心の声)
(……もうすぐ言える。
もうすぐ“名前”になる)
玄関の灯りが二人を照らす。
真帆「……三男」
三男「うん」
真帆「また……明日も一緒に帰ろ」
三男「……うん。何回でも」
その“何回でも”が、
胸の奥に深く落ちる。
二人の関係は、
まだ名前を持っていない。
でも――
家族はもう名前をつけてしまった。
そして真帆は、
その名前を自分の口で言う寸前まで来ていた。
2026/05/01 07:43