「ここにいるよ」第49話~第56話
第49話
昨日、初めて自然に呼べた。
「彰」
その響きがまだ胸に残っている。
三男の家の前で足が止まる。
ドアが開く。
三男「……姉ちゃん、おはよう」
真帆「おはよう、彰」
三男「……っ」
一瞬で顔が赤くなる。
真帆(心の声)
(……自然に言えた)
胸が静かに温かくなる。
教室に入った瞬間、
ゆかりが机を叩いて立ち上がる。
ゆかり「真帆ーー!!今“彰”って呼んだでしょ!!」
真帆「なんで聞こえてるの!!」
姫「“自然呼び”おめでとう」
真帆「言うな!!」
ゆかりは真帆の両手を掴んで揺らす。
ゆかり「で!?どんな声で呼んだの!?
どんな顔してた!?彰くん!!」
真帆「揺らすな!!」
姫「表情筋が“幸福度最大値”」
真帆「測るな!!」
ゆかり「真帆、もう完全に恋人の呼び方じゃん」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
姫「“名前呼び”は距離の縮小を意味する」
真帆「分析しないで!!」
ゆかりは優しく笑う。
ゆかり「でもさ、よかったよ。
真帆、ずっと呼びたかったんでしょ?」
真帆「……うん」
その“うん”が、
自分でも驚くほど自然だった。
校門で三男が捕まる。
ゆかり「彰くん!!」
三男「……っ、なに」
姫「“自然呼び”おめでとう」
三男「なんで知ってるの」
ゆかりは腕を組む。
ゆかり「真帆、今日“彰”って呼んだよね?」
三男「……うん」
姫「反応速度が“幸福度最大値”」
三男「やめて」
ゆかりはニヤニヤしながら言う。
ゆかり「で、どうだった?」
三男「……嬉しかった」
姫「声が震えている。照れ」
三男「やめて」
校門で真帆と三男が合流する。
真帆「……彰」
三男「……っ、うん」
名前を呼ばれるたびに、
三男の胸が跳ねるのがわかる。
真帆「今日も一緒に帰ろ」
三男「……うん」
歩きながら、
真帆はふと三男の袖をつまむ。
真帆「ねぇ、彰」
三男「……なに」
真帆「名前で呼ぶの……好きだよ」
三男「……っ」
三男は立ち止まり、
真帆の方を向く。
三男「俺も……姉ちゃんに名前呼ばれるの、
すごく嬉しい」
その声は、
昨日よりずっと深かった。
夕暮れの公園。
二人は並んで座る。
真帆「彰」
三男「うん」
真帆「……手、つないでいい?」
三男「……っ、うん」
真帆がそっと手を伸ばす。
三男の手が震える。
真帆(心の声)
(……名前を呼ぶだけで、
こんなに距離が近くなるんだ)
三男(心の声)
(……姉ちゃんが“彰”って呼ぶたびに、
胸が苦しくなるほど嬉しい)
二人の影が重なる。
家の近くまで来ても、
手はつないだまま。
真帆「……彰」
三男「うん」
真帆「今日ね……
すごく幸せだった」
三男「……俺も」
真帆「これからも……呼ぶね」
三男「……うん。
何回でも呼んで」
その“何回でも”が、
胸の奥に深く落ちる。
真帆(心の声)
(……自然に呼べるようになったんだ)
三男(心の声)
(……姉ちゃんに名前呼ばれる未来がほしい)
二人の距離は、
またひとつ深まった。
第50話
家の前で待っていると、
真帆が小さく息を整えて歩いてきた。
真帆「……おはよう、彰」
三男「……っ」
胸の奥が、
一瞬で熱くなる。
(……今、俺の名前を……)
昨日より自然で、
昨日より近い声。
三男「……おはよう」
声が震えたのが自分でもわかった。
(嬉しい。
嬉しいのに、苦しいくらいだ)
歩きながら、
真帆がふと袖をつまむ。
真帆「ねぇ、彰」
三男「……っ、なに」
呼ばれるたびに、
胸が跳ねる。
(名前って……こんなに破壊力あるんだ)
真帆は気づいていない。
自分がどれだけ三男を揺らしているか。
真帆「今日、帰り……一緒に帰ろうね」
三男「……うん」
その“うん”は、
昨日よりずっと深かった。
真帆(心の声)
(……彰って呼ぶと、
なんでこんなに胸が温かくなるんだろ)
歩幅を合わせてくれる横顔が、
昨日より近く見える。
真帆「彰」
三男「……うん」
呼ぶたびに、
三男の目が少し揺れる。
(……もっと呼びたい)
その気持ちが、
静かに胸の奥で膨らんでいく。
ゆかり「彰くん!!」
三男「……っ、なに」
姫「“自然呼び”継続おめでとう」
三男「なんで知ってるの」
ゆかりは腕を組む。
ゆかり「真帆、今日も“彰”って呼んだでしょ?」
三男「……うん」
姫「反応速度が“幸福度最大値”」
三男「やめて」
ゆかり「で、どうなの?」
三男「……嬉しい」
姫「声が震えている」
三男「やめて」
校門で真帆が待っている。
真帆「……彰」
三男「……うん」
名前を呼ばれるだけで、
胸が苦しくなるほど嬉しい。
真帆「今日ね……
ずっと言いたかったんだ」
三男「……なに」
真帆は少しだけ顔を赤くして言う。
真帆「彰の隣……もっと近くにいたい」
三男「……っ」
胸が一気に熱くなる。
(姉ちゃん……
そんなこと言われたら……)
三男「……俺も。
もっと近くにいたい」
夕暮れの公園。
二人は並んで座る。
真帆「彰」
三男「うん」
真帆「……手、つないでいい?」
三男「……っ、うん」
真帆がそっと手を伸ばす。
三男の手が震える。
真帆(心の声)
(……もっと近づきたい)
三男(心の声)
(……名前呼ばれるだけで、
こんなに嬉しいのに)
二人の影が重なる。
家の近くまで来ても、
手はつないだまま。
真帆「……彰」
三男「うん」
真帆「今日ね……
すごく幸せだった」
三男「……俺も」
真帆「これからも……呼ぶね」
三男「……うん。
何回でも呼んで」
真帆は小さく笑う。
真帆「……彰の隣、好きだよ」
三男「……っ」
胸の奥が、
静かに、でも確かに震えた。
(姉ちゃん……
もっと近くに来ていいよ)
二人の距離は、
またひとつ深まった。
第51話
教室に入った瞬間、
ゆかりが机を叩いて立ち上がる。
ゆかり「真帆ーー!!昨日“彰”って自然に呼んだでしょ!!」
真帆「なんで知ってるの!!」
姫「“名前呼び第二段階”完了」
真帆「段階って言わないで!!」
ゆかりはニヤニヤしながら言う。
ゆかり「で、次はキスでしょ」
真帆「言うな!!」
姫「恋人関係の進行速度として妥当」
真帆「分析しないで!!」
ゆかり「真帆、彰くんのこと好きなんでしょ」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
姫「反応速度が“肯定”」
真帆「やめて!!」
ゆかりは机に身を乗り出す。
ゆかり「じゃあさ、
キスしたいって思った?」
真帆「っ……!!」
真帆の顔が一気に赤くなる。
姫「表情筋が“動揺”」
真帆「測るな!!」
校門で三男が捕まる。
ゆかり「彰くん!!」
三男「……っ、なに」
姫「“次はキス”の段階」
三男「やめて」
ゆかりは腕を組む。
ゆかり「真帆のこと、好きなんでしょ」
三男「……うん」
姫「即答。好意の強度が高い」
三男「分析しないで」
ゆかり「じゃあ、キスしたいって思った?」
三男「……っ!!」
顔が真っ赤になる。
姫「反応速度が“肯定”」
三男「やめて!!」
校門で合流した瞬間、
二人とも妙にぎこちない。
真帆「……彰」
三男「……うん」
名前を呼ぶだけで、
胸が跳ねる。
歩きながら、
二人とも無意識に距離を詰めてしまう。
真帆(心の声)
(……キスなんて、まだ早いよね)
でも、
(……でも、彰の顔が近いと……)
三男(心の声)
(……姉ちゃんの横顔、近い)
(……触れたいって思ってしまう)
夕暮れの公園。
二人は並んで座る。
真帆「……彰」
三男「うん」
沈黙。
でも、昨日までの沈黙とは違う。
真帆(心の声)
(……もっと近づきたい)
三男(心の声)
(……触れたい。でも、触れたら戻れない)
真帆はそっと、
三男の袖をつまむ。
真帆「ねぇ、彰」
三男「……なに」
真帆「……顔、近いね」
三男「……姉ちゃんが近いんだよ」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
風が止まり、
二人の影が重なる。
真帆はゆっくりと顔を上げる。
三男も、真帆を見る。
距離は――
指一本分。
触れない。
でも、触れたら終わり。
真帆(心の声)
(……こんな距離、初めて)
三男(心の声)
(……キスしたい。でも、姉ちゃんが困るなら……)
真帆は小さく息を吸う。
真帆「……彰」
三男「……うん」
真帆「……もう少し近づいてもいい?」
三男「……っ、いいよ」
二人の額が、
そっと触れた。
キスじゃない。
でも、
キスよりも胸が震える距離。
家の近くまで来ても、
二人の手はつないだまま。
真帆「……彰」
三男「うん」
真帆「今日ね……
もっと近づきたいって思った」
三男「……俺も」
真帆「……また、あの距離になりたい」
三男「……うん。
何回でも」
その“何回でも”が、
胸の奥に深く落ちる。
二人の距離は、
またひとつ深まった。
第52話
昨日の夜。
額が触れた瞬間の温度が、まだ残っている。
真帆(心の声)
(……あれ、キスみたいだった)
思い出すだけで胸が跳ねる。
三男の家の前で足が止まる。
ドアが開く。
三男「……姉ちゃん、おはよう」
真帆「おはよう、彰」
三男の耳が赤くなる。
(……近づきたい)
その気持ちが、昨日より強い。
真帆「おはよう、彰」
三男(心の声)
(……名前呼ばれるだけで、胸が苦しい)
昨日の“額が触れた距離”が蘇る。
(……触れたい。でも、触れたら戻れない)
真帆の横顔が近い。
歩幅を合わせるだけで胸が熱くなる。
教室に入った瞬間。
ゆかり「真帆ーー!!昨日、額くっつけたでしょ!!」
真帆「なんで知ってるの!!」
姫「“キス未満距離”達成」
真帆「言わないで!!」
ゆかりは机に身を乗り出す。
ゆかり「で?キスしたいって思った?」
真帆「っ……!!」
胸が跳ねる。
姫「表情筋が“肯定”」
真帆「測るな!!」
でも、
否定できなかった。
(……思ったよ)
門で捕まる。
ゆかり「彰くん!!昨日、額くっつけたでしょ!!」
三男「……っ」
姫「“キス未満距離”達成」
三男「やめて」
ゆかりは腕を組む。
ゆかり「で?キスしたいって思った?」
三男「……っ!!」
顔が真っ赤になる。
姫「反応速度が“肯定”」
三男「やめて!!」
でも、
胸の奥では否定できなかった。
(……思ったよ)
校門で合流した瞬間、
二人ともぎこちない。
真帆「……彰」
三男「……うん」
名前を呼ぶだけで、
昨日の距離が蘇る。
歩きながら、
二人の手が何度も触れそうになる。
真帆(心の声)
(……触れたい)
三男(心の声)
(……触れたい。でも、触れたら……)
夕暮れの公園。
昨日と同じ場所。
同じ風。
真帆「……彰」
三男「うん」
真帆はそっと三男の袖をつまむ。
真帆「昨日の……あれ、覚えてる?」
三男「……うん」
二人はゆっくりと向き合う。
距離は――
指一本分。
真帆(心の声)
(……キスしたい)
三男(心の声)
(……姉ちゃんが困るなら、しない。でも……)
真帆は小さく息を吸う。
真帆「……彰」
三男「……うん」
真帆「……もう少し近づいてもいい?」
三男「……っ、いいよ」
二人の額が、
またそっと触れた。
昨日より長く。
昨日より深く。
キスじゃない。
でも、
キスより胸が震える距離。
家の近くまで来ても、
二人の手はつないだまま。
真帆「……彰」
三男「うん」
真帆「今日ね……
キスのこと、考えちゃった」
三男「……っ」
真帆「でも……
焦らなくていいよね」
三男「……うん。
姉ちゃんが言える時でいい」
真帆は小さく笑う。
真帆「……でも、またあの距離になりたい」
三男「……俺も」
二人の影が重なり、
触れなかった唇が、
静かに未来を照らしていた。
第53話
夕暮れの公園。
昨日と同じベンチ。
同じ風。
真帆「……彰」
三男「うん」
二人はゆっくりと向き合う。
距離は――指一本分。
真帆(心の声)
(……また、額を合わせたい)
三男(心の声)
(……触れたい。でも、姉ちゃんが困るなら)
真帆は小さく息を吸う。
真帆「……彰、もう少し――」
三男「……うん」
二人の額が触れようとした、その瞬間。
長男「おーい真帆ーー!!彰ーー!!」
真帆「……は?」
三男「……っ」
長男が全力疾走で近づいてくる。
長男「お前ら、今キスしようとしただろ!!」
真帆「してない!!」
三男「……してない」
長男はニヤニヤしながら指をさす。
長男「いや、してた。
あれはもう“キス未遂パート2”だな」
真帆「言うな!!」
三男「……帰りたい」
長男はスマホを取り出し、
その場で家族LINEに送る。
長男「“二人、キス未遂パート2発生”っと」
真帆「送るな!!」
三男「……無理」
送信音が鳴った瞬間――
母《すぐ帰ってきなさーい♡》
父《第八次家族会議を開催する!!》
真帆「やめてぇぇぇ!!」
玄関を開けた瞬間、
クラッカーが炸裂する。
パンッ!!
母「キス未遂パート2おめでとう〜〜!!」
父「よくやったな、彰!!」
三男「やってない!!」
真帆「やってないってば!!」
長男はドヤ顔。
長男「いや、あれはもうキスだろ」
真帆「違う!!」
三男「……違う」
父「議題は一つ。
“二人が正式にキスする日はいつか”」
真帆「議題にするな!!」
三男「……帰りたい」
母「でもね〜、もう時間の問題よね〜」
長男「明日だな」
真帆「賭けるな!!」
父は真面目な顔で言う。
父「真帆、彰。
キスはな、タイミングが大事だ」
真帆「父に言われたくない!!」
三男「……ほんとに帰りたい」
家族が満足げに去り、
リビングに静けさが戻る。
真帆「……ごめんね、彰。家族が……」
三男「……いいよ。
姉ちゃんが困ってる方が嫌だ」
真帆「……っ」
胸がまた熱くなる。
真帆「さっき……
ほんとに、近づきたかったんだよ」
三男「……俺も」
二人はそっと手をつなぐ。
三男「……姉ちゃん」
真帆「なに」
三男「また……あの距離になりたい」
真帆「……うん。
私も」
長男の乱入で壊されたはずなのに、
二人の距離は昨日より深い。
真帆(心の声)
(……次は、きっと)
三男(心の声)
(……姉ちゃんが望むなら)
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
第54話
昨日の夜。
額が触れた瞬間の温度が、まだ残っている。
真帆(心の声)
(……あれ、キスみたいだった)
胸がじんわり熱くなる。
三男の家の前で足が止まる。
ドアが開く。
彰「……姉ちゃん、おはよう」
真帆「おはよう、彰」
彰の耳が赤くなる。
(……近づきたい)
その気持ちが、昨日より強い。
教室に入った瞬間、
ゆかりが机を叩いて立ち上がる。
ゆかり「真帆ーー!!昨日また“額くっつけた”でしょ!!」
真帆「なんで知ってるの!!」
姫「“キス未遂パート2”確認済み」
真帆「言わないで!!」
ゆかりはニヤニヤしながら言う。
ゆかり「で、次はキスでしょ」
真帆「言うな!!」
姫「恋人関係の進行速度として妥当」
真帆「分析しないで!!」
ゆかり「真帆、彰くんのこと好きなんでしょ」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
姫「反応速度が“肯定”」
真帆「やめて!!」
ゆかりは机に身を乗り出す。
ゆかり「じゃあさ、
キスしたいって思った?」
真帆「っ……!!」
真帆の顔が一気に赤くなる。
姫「表情筋が“動揺”」
真帆「測るな!!」
でも、
否定できなかった。
(……思ったよ)
校門で彰が捕まる。
ゆかり「彰くん!!昨日また額くっつけたでしょ!!」
彰「……っ」
姫「“キス未遂パート2”達成」
彰「やめて」
ゆかりは腕を組む。
ゆかり「で?キスしたいって思った?」
彰「……っ!!」
顔が真っ赤になる。
姫「反応速度が“肯定”」
彰「やめて!!」
でも、
胸の奥では否定できなかった。
(……思ったよ)
校門で合流した瞬間、
二人ともぎこちない。
真帆「……彰」
彰「……うん」
名前を呼ぶだけで、
昨日の距離が蘇る。
歩きながら、
二人の手が何度も触れそうになる。
真帆(心の声)
(……触れたい)
彰(心の声)
(……触れたい。でも、触れたら……)
夕暮れの公園。
昨日と同じ場所。
同じ風。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆はそっと彰の袖をつまむ。
真帆「昨日の……あれ、覚えてる?」
彰「……うん」
二人はゆっくりと向き合う。
距離は――
指一本分。
真帆(心の声)
(……キスしたい)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが困るなら、しない。でも……)
真帆は小さく息を吸う。
真帆「……彰」
彰「……うん」
真帆「……もう少し近づいてもいい?」
彰「……っ、いいよ」
二人の額が、
またそっと触れた。
昨日より長く。
昨日より深く。
キスじゃない。
でも、
キスより胸が震える距離。
ゆかり「(あれ完全にキス寸前)」
姫「(“キス未遂パート3”確定)」
ゆかり「(もうキスしろ)」
姫「(同意)」
真帆「聞こえてる!!」
家の近くまで来ても、
二人の手はつないだまま。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆「今日ね……
キスのこと、考えちゃった」
彰「……っ」
真帆「でも……
焦らなくていいよね」
彰「……うん。
姉ちゃんが言える時でいい」
真帆は小さく笑う。
真帆「……でも、またあの距離になりたい」
彰「……俺も」
二人の影が重なり、
触れなかった唇が、
静かに未来を照らしていた。
第55話
家へ向かう道。
街灯の光が二人の影を重ねたり離したりする。
真帆(心の声)
(……彰の横顔、近い)
歩幅が自然と揃って、
肩が触れそうで触れない。
彰「……姉ちゃん」
真帆「なに」
彰「今日……一緒に帰れて嬉しい」
その声が、
胸の奥に静かに落ちる。
(……もっと近づきたい)
彰(心の声)
(……姉ちゃんの歩き方が、いつもよりゆっくりだ)
まるで、
“まだ帰りたくない”と
言っているみたいで。
彰「……寄ってく?」
真帆「……うん」
二人は自然と、
あのブランコのある公園へ向かった。
夕暮れの残り香が漂う公園。
二人は並んで座る。
真帆「……彰」
彰「うん」
沈黙。
でも、昨日までの沈黙とは違う。
真帆(心の声)
(……息が近い)
彰の呼吸が、
自分の胸の奥に触れるように感じる。
真帆「ねぇ……彰」
彰「……なに」
真帆「……顔、近いね」
彰「……姉ちゃんが近いんだよ」
胸が跳ねる。
彰(心の声)
(……触れたい。
でも、姉ちゃんが困るなら……)
真帆の目が揺れている。
逃げていない。
むしろ――近づいている。
彰「……姉ちゃん」
真帆「なに」
彰「……もう少し、近づいてもいい?」
真帆は小さく頷いた。
真帆(心の声)
(……こんな距離、初めて)
彰の顔が近づく。
自分も、自然と近づいてしまう。
距離は――
指一本分。
息が触れる。
まつげが触れそう。
真帆「……彰」
彰「……うん」
真帆「……こわくないよ」
彰「……俺も」
二人の額が触れ、
そのまま――
ほんの少しだけ、
唇の距離が縮まる。
触れない。
でも、触れたみたいに胸が震える。
彰(心の声)
(……キスしたい。
でも、姉ちゃんが“自分から”来てくれるまで待ちたい)
真帆の目が揺れている。
逃げていない。
むしろ――求めている。
彰「……姉ちゃん」
真帆「……うん」
彰「……無理しなくていいよ」
真帆「無理してないよ」
その声が、
胸の奥を決定的に揺らした。
二人の距離は、
もう後戻りできないほど近い。
真帆(心の声)
(……あと少し)
彰(心の声)
(……あと少しで触れてしまう)
その瞬間――
風がふっと吹いて、
真帆の髪が彰の頬に触れた。
二人は同時に息を呑む。
触れていない。
でも、触れたみたいに胸が震えた。
家の近くまで来ても、
二人の手はつないだまま。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆「今日ね……
こわくなかったよ」
彰「……俺も」
真帆は小さく笑う。
真帆「……また、あの距離になりたい」
彰「……俺も」
触れなかった唇が、
静かに未来を照らしていた。
第56話
昨日の夜。
唇が触れそうで触れなかった、あの距離。
真帆(心の声)
(……あと少しだった)
思い出すだけで胸が熱くなる。
三男の家の前で足が止まる。
ドアが開く。
彰「……姉ちゃん、おはよう」
真帆「おはよう、彰」
彰の耳が赤くなる。
(……私から近づきたい)
その気持ちが、昨日より強い。
教室に入った瞬間、
ゆかりが机を叩いて立ち上がる。
ゆかり「真帆ーー!!昨日キス直前まで行ったでしょ!!」
真帆「なんで知ってるの!!」
姫「“キス未遂パート3”確認済み」
真帆「言わないで!!」
ゆかりは真帆の肩を掴む。
ゆかり「もうキスしろ」
真帆「言うな!!」
姫「“次の段階”に進むべき」
真帆「分析しないで!!」
ゆかり「真帆、彰くんのこと好きなんでしょ」
真帆「……っ」
胸が跳ねる。
姫「反応速度が“肯定”」
真帆「やめて!!」
ゆかりは机に身を乗り出す。
ゆかり「じゃあさ、
昨日、自分から近づきたいって思った?」
真帆「っ……!!」
真帆の顔が一気に赤くなる。
姫「表情筋が“肯定”」
真帆「測るな!!」
でも、
否定できなかった。
(……思ったよ)
校門で彰が捕まる。
ゆかり「彰くん!!昨日キス直前だったでしょ!!」
彰「……っ」
姫「“キス未遂パート3”達成」
彰「やめて」
ゆかりは腕を組む。
ゆかり「で?真帆のこと、好きなんでしょ」
彰「……うん」
姫「即答。好意の強度が高い」
彰「分析しないで」
ゆかり「じゃあ、昨日“自分から近づきたい”って思った?」
彰「……っ!!」
顔が真っ赤になる。
姫「反応速度が“肯定”」
彰「やめて!!」
校門で合流した瞬間、
二人ともぎこちない。
真帆「……彰」
彰「……うん」
名前を呼ぶだけで、
昨日の距離が蘇る。
歩きながら、
真帆はそっと彰の袖をつまむ。
真帆「ねぇ、彰」
彰「……なに」
真帆「……今日、ちょっと寄っていかない?」
彰「……っ、うん」
(……私から言った)
胸が静かに震える。
夕暮れの公園。
昨日と同じ場所。
同じ風。
真帆(心の声)
(……今日は、私から近づきたい)
真帆はゆっくりと彰の方へ向き直る。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆「昨日の……続き、したい」
彰「……っ」
彰の呼吸が止まる。
真帆はそっと、
自分から距離を詰める。
額が触れる。
昨日より深く。
昨日より長く。
真帆(心の声)
(……キスじゃない。でも、近い)
彰(心の声)
(……姉ちゃんが自分から……)
二人の息が重なる。
ゆかり「(あれ完全にキス寸前)」
姫「(“キス未遂パート4”確定)」
ゆかり「(もうキスしろ。本気で)」
姫「(同意)」
真帆「聞こえてる!!」
家の近くまで来ても、
二人の手はつないだまま。
真帆「……彰」
彰「うん」
真帆「今日ね……
自分から近づきたいって思ったの」
彰「……っ」
真帆「こわくなかったよ」
彰「……俺も」
真帆は小さく笑う。
真帆「……また、あの距離になりたい」
彰「……俺も」
二人の影が重なり、
静かに揺れた。
2026/05/03 18:36
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