第二章 揺れる朝

朝の光は、いつもより少しだけ薄かった。
零奈はその違いに気づきながらも、
それが何を意味するのか分からなかった。
部屋の隅に落ちる影が、
ほんのわずかに濃く見える。
影は本来、光の形を写すだけのはずなのに、
その黒さは“光の量”とは関係がないように思えた。
零奈は胸の奥に、
言葉にならないざわつきを抱えたまま、
いつもの朝を過ごす。
けれど、
影は静かに変わり始めていた。
影の中心に、
小さな黒点が生まれた。
それは最初、
ただの濃い影の一部に見えた。
しかし、
零奈が動いても、
光が揺れても、
その黒点だけは揺れなかった。
まるで、
影の中に“別の重さ”が落ちているようだった。
零奈は気づかない。
影が、
彼女の動きとは無関係に
わずかに呼吸していることに。
光が薄くなるたび、
影の黒が深くなる。
影の黒が深くなるたび、
部屋の空気が静かに沈む。
零奈はその変化を、
“疲れ”のせいだと思い込む。
けれど、
世界はすでに変わり始めていた。
光が薄くなり、
影が深くなる。
その境界で、
九尾の世界の“呼吸”が
ひっそりと目を覚ましていた。
第二章は、世界が静かに変わり始める章だった。
まだ誰も気づかない。
影の奥で、
黒点がゆっくりと脈打っていることに。