「遠くへ ~幼馴染の二人遼と澪 二人がつぐむ愛の詩~」
第五部:還還の章 — 永遠を編む波
紬がすくすくと育ち、自分の足で未来を選びとっていく年月のなかで、
遼と澪もまた、静かに人生の熟成期を迎えていた。
髪に白いものが交じるようになった遼は、都市部での大きな建築プロジェクトからは一線を画し、地域の古い民家を修繕する活動に力を注ぐようになっていた。先人が残した木の温もりに、澪の作る器や現代の手仕事を調和させ、次の世代へと受け継ぐ仕事だ。
一方、澪の作風も変化を遂げていた。かつて鮮烈な存在感を放っていた「藍の器」は、歳月とともに角が取れ、まるで長年連れ添った夫婦の佇まいのように、より優しく、使う人の日常にすっと馴染む素朴な風合いへと深化していた。
ある秋の夕暮れ、二人は久しぶりに二人だけで、幼い頃によく遊んだ裏山の丘へと登った。

木々の葉が赤や黄色に染まり、眼下には小さく整然と並ぶ町並みと、ゆったりと流れる川が見える。
「思えば、随分と遠くまで来たね」
遼が膝に置いた手にそっと自分の手を重ねながら、澪が呟いた。
「ああ。けれど、遠くへ行けば行くほど、ここがどれほど温かい場所だったかが分かったよ」
遼は微笑み、胸のポケットに手を当てた。そこには今も、あの東京へ発つ日に澪からもらった小さな藍色の陶片が入っている。
幾度となく指でなぞったそのカケラは、すっかり角が丸くなり、まるで最初から二人の運命の中に組み込まれていたかのように滑らかだった。
二人が紡いできた詩は、甘い言葉の連なりではない。
ときに離れ、ときに支え合い、土を捏ね、木を削り、日々の営みを丁寧に重ねてきた「生き方」そのものだった。
やがて空が濃い紫から茜色へと変わり、町にぽつりぽつりと灯りがともり始める。
「帰りましょうか、私たちの家に」
「ああ、帰ろう」
立ち上がった二人は、互いのぬくもりを確かめるようにしっかりと手を繋ぎ、夕暮れの小道をゆっくりと下り始めた。
離れても、近づいても、言葉があっても、なくても。
二人がつむぐ愛の詩は、終わりを迎えることなく、ただ静かに、永遠の波となってこの町と二人の心に響き続けていく。
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投稿を表示素敵な年の取り方です。
自分もこれから、こんな風に年を重ねて行きたいものですが‥
なにせ、ご存知の通りフザケた生き物なので😺💦
無理せず、時の流れに逆らわず、あるがままに生きて行くのだと思います。