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2026/09/01 02:47


『渓魚が誘う季節 〜源流の王者〜』イワナの章
  文︰mw_me 絵:mw_me

  加筆︰イワナ

深淵の底では、イワナが異変を感じ取っていた。そこに潜むのは、数多の針を見送ってきたであろう「ぬし」級の個体だ。釣り人は息を潜め、膝を泥に打ちつけながら岩越しにそっと淵を覗き込む。

日中の眩しさが消え、暗がりから這い出した老練なイワナは、流れの落ち込みで獲物を待ち受ける。

選んだのは、派手さを抑えた、地味なボトムノックスという深層用ルアー。深淵の底深く、イワナの鼻先へ沈めていく。

根掛かりと紙一重の攻防。

岩の縁ギリギリをラインが舐めるように添わせると、竿先が微かに張った。

ラインの小さな変化を捉えて、アワセを入れた瞬間、ドスンという重みとともに、ロッドが満月のようにしなった。

リールのドラグ音が鳴り響き、イワナが走り出す。

大岩の隙間へと潜ろうとする圧倒的なパワーを、釣り人はラインの張力ギリギリでいなす。

力と技のぶつかり合いの末、水面に姿を現したのは、傷だらけの顔をした、貫禄ある大イワナだった。

月日が流れた今でも、手元に残るイワナの感触、冷たい水の感触。そして夕闇の森が吐き出す濃密な草木の匂い‥