TORQUEトーク

2026/04/10 21:11

朝の渓流。
あゆが水面でバシャバシャしながら言った。

「あっ!いわな!今日なんか空気が軽い!飛べそう!」

いわなは深場から顔を出し、
「君はまず落ち着くところから始めよう」と冷静。

そこへ、主がゆっくり浮かび上がった。

主「……若いの、今日は気をつけよ。
  “飛ぶ魚”が戻ってくる日かもしれん」

いわな「また主の昔話が始まったよ」
あゆ「来るの!? Wi-Fiのパスワード聞きに!?」
いわな「だからWi-Fiじゃないってば」

そのときだった。

上流で“ひゅんっ”という風切り音。
次の瞬間、銀色の影が空を横切った。

あゆ「えっ……飛んだ!?」
いわな「いやいやいや、今の絶対魚だったよね!?」

影はツバメのように滑空し、
渓流の上をくるりと旋回して戻ってきた。

主「……来たな。あれが“フライ”だ」

あゆ「名前がそのまんま!」
いわな「もっとひねってほしかった…」

フライは空中でピタッと止まり、
三匹の前にふわりと降りてきた。

フライ「主さん、お久しぶりです。
    あの……Wi-Fiのパスワード、変わりました?」

いわな「本当に聞くんだ!?」
あゆ「やっぱりWi-Fiあるんだ!」
いわな「ないよ!」

主は落ち着いた声で言った。

主「パスワードは変わらん。
  “流れに身を任せよ”じゃ」

フライ「入力が難しいんですよね、それ……」

あゆ「そりゃそうだよ!」
いわな「空飛んでるのにアナログすぎる…」

フライはヒレをぱたぱたさせながら空へ舞い上がった。

フライ「では、また電波が弱くなったら来ますね!」

いわな「電波じゃないってば!」
あゆ「また来てねー!」

フライが去ったあと、主がぽつりと言った。

主「若いの、世の中にはな……
  説明できんことが多いのだ」

いわな「主の話が説明できないだけでは…」
あゆ「でも楽しいからOK!」

主は深場へ沈みながら言った。

主「流れに逆らうなよ。
  空を飛ぶ時もな」

いわな「飛ばないよ!」
あゆ「私はワンチャン飛べる気がする!」

渓流には、今日も不思議と笑いが流れていた。

「あっ!いわな!今日、川の“電波”弱くない!?」

いわなは深場から顔を出し、
「川に電波はないよ。君の脳内だけだよ」と即ツッコミ。

そのとき、上流で“ぽうっ”と光が揺れた。
昨日より明らかに明るい。

あゆ「ほら!あれ絶対ルーターでしょ!」
いわな「違うよ。川にルーター沈める人いないよ」

光が近づいてきた瞬間、
水面がふっと凪ぎ、巨大な影がゆっくり浮かび上がった。

主「……おはよう。今日も元気だな、若いの」

あゆ「主だ!主が出た!ログイン成功!」
いわな「だからWi-Fiじゃないってば!」

主はゆったりとヒレを動かしながら言った。

主「さっきの光か? あれはな……季節外れの桜が、ちょっと迷っただけだ」

いわな「迷ってあんな光り方します?」
主「する。たまに“やる気のある花びら”がいる」

あゆ「やる気のある花びら!? それ欲しい!」
いわな「食べ物じゃないよ」

主はふっと笑い、
水面に一枚の桜の花びらを浮かべた。

主「ほれ。今日のは特に元気だぞ」

花びらは、なぜか逆流する方向へスーッと流れていく。

あゆ「うわ!逆走してる!強い!」
いわな「いや、強いって何……」

主「では、わしは昼寝の時間だ。若いの、流れに逆らうなよ」

そう言って主は深場へ沈んでいった。

あゆ「……ねえいわな、主ってさ」
いわな「うん」
あゆ「絶対、Wi-Fiの概念わかってないよね」
いわな「君もわかってないよ」

二匹は逆走する花びらを眺めながら、
今日も渓流の不思議に振り回されるのだった。


1件のコメント (新着順)
FēiFēi バッジ画像
2026/04/10 23:02

今日もイワナさんに振り回されるのだった。🤷