「遠くへ ~幼馴染の二人遼と澪 二人がつぐむ愛の詩~」
第七部:無窮の章 — 永遠に響く風のうた
時は流れ、街の景色や人の装いが少しずつ形を変えても、二人が残した温かな物語は、この土地の空気の中に深く溶け込んでいた。
ある晴れた春の日。交流センターの庭に立つ大きなヤマザクラの下で、ひとりの若い女性がスケッチブックを広げていた。
彼女は、成長して家具職人となった紬の娘であり、遼と澪の孫にあたる少女だった。少女の傍らには、古びた、けれど丁寧に磨き込まれた小さな藍色の器が置かれている。
祖母である澪から「お守り」として譲り受けた大切な器だ。
「綺麗な桜ですね」
通りがかった町のお年寄りが足を止め、少女に声をかける。

「ええ。おじいちゃんとおばあちゃんが、昔ここに植えた木なんです。遠く離れていても、ずっと心がつながっているようにって」
少女が答えると、お年寄りは目を細めて頷いた。
「ああ、遼さんと澪さんの……。あの二人が作った建物も器も、この町のみんなの宝物だよ。見ているだけで、誰かを大切にしたくなるんだ」
風が吹き抜け、桜の花びらが舞い上がる。その舞い散る花びらは、まるでかつて二人で見上げたあの日の空や、遠く離れた場所で互いを想い続けた日々を祝福しているかのようだった。
遠くへ旅立ち、互いを高め合い、故郷で再び手を取り合って紡いできた「愛の詩」。
それは二人の生涯というひとつの章を終えてもなお、決して途切れることはない。子どもへ、孫へ、そしてこの町を訪れるすべての人々の心へと受け継がれ、新しい息吹を宿しながら響き続けていく。
旅立ちから始まった物語は、終わりなき永遠の愛となって、いつまでも、どこまでも、優しく世界を包み込んでいた。
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投稿を表示遼が東京の大学へと旅立ったのが数話前。そこから壮年期の二人まで、流れる歳月。
人の一生は、宇宙の時間に比べれば星の瞬きみたいなものかも知れない。
それが例え、一瞬の光だとしても、二人連れ添って生きた証は残り、孫の世代に受け継がれ、輝きを失わない‥
二人が亡くなった寂しさに、ホロリと来たけど、悲しくはない。
心には何か、暖かいものが残る‥そんな読後感でした。