「嘘が付けないサラリーマン」 第196話~第205話
✦ 第196話
「秋川、家族と話す」
✦ ① 扉が閉まったあと、秋川がゆっくり振り返る
玄関の扉が
カチリと閉まる。
秋川は、
しばらくその扉を見つめたまま
小さく息を吐く。
「……ふぅ……」
緊張と嬉しさが混ざった、
今日一日の余韻。
そのままリビングへ戻ると──
父と母が、
まるで何事もなかったかのように
いつもの場所に座っている。
✦ ② 母が最初に口を開く──優しい声で
母は、
秋川の顔を見て
ふっと微笑む。
「麗奈。
……いい一日だったわね」
その声は、
“お疲れさま”
“よかったね”
そんな気持ちが全部詰まっている。
秋川は照れながら頷く。
「……うん。
北見さん、すごく頑張ってくれて……
私も、嬉しかった」
母は優しく頷く。
✦ ③ 父は新聞をめくるふりをしながら、ぶっきらぼうに
父は、
新聞をめくるふりをしながら
ぼそっと言う。
「……あいつ、悪くねぇ」
秋川は思わず笑う。
「お父さん、さっきも言ってたよ」
父はそっぽを向く。
「……言ってねぇ」
でも耳が赤い。
母がくすっと笑う。
✦ ④ 母が“娘の恋”をそっと確かめる
母は、
湯呑みを手にしながら
少しだけ真面目な声で言う。
「麗奈。
……北見さんのこと、
本当に大切に思ってるのね」
秋川は、
その言葉に少しだけ目を伏せる。
そして、
小さく、でもはっきりと答える。
「……うん。
大切だよ」
その声は、
迷いのない声。
母は優しく微笑む。
✦ ⑤ 父の“照れた承認”が入る
父は新聞を畳み、
ぶっきらぼうに言う。
「……まあ、
あいつなら……
悪くねぇだろ」
秋川は笑いながら言う。
「お父さん、
それ褒めてるんだよね?」
父はそっぽを向く。
「……知らん」
でも、
口元がわずかに緩んでいる。
✦ ⑥ 秋川の胸に広がる“家族に受け入れられた安心”
秋川は、
父と母の表情を見て
胸の奥がじんわりと温かくなる。
“……よかった……
北見さん、ちゃんと受け入れられた……”
その安心が、
静かに広がっていく。
母は優しく言う。
「麗奈。
……また一緒に来なさいね」
秋川は微笑む。
「うん。
また連れてくる」
その声は、
今日一番の明るさだった。
✦ 第197話
「秋川、自室で今日を思い返す」
✦ ① 部屋に戻った瞬間、ふっと息が漏れる
秋川は自室のドアを閉め、
ベッドの端に腰を下ろす。
そして、
小さく息を吐いた。
「……はぁ……」
緊張がほどけた息。
でも、疲れではなく、
胸の奥が温かく満たされていくような息。
部屋の静けさが、
今日の余韻をそっと包む。
✦ ② スマホを見つめながら、北見の言葉を思い返す
秋川はスマホを手に取り、
ロック画面を見つめる。
そこには何も通知はない。
でも──
頭の中には、
玄関での北見の言葉が
何度もよみがえる。
「……今日は、本当にありがとう」
「……また会いたいです」
その声の震え、
目の揺れ、
全部が胸の奥に残っている。
秋川は、
思わずスマホを胸に抱きしめる。
「……ずるいなぁ……」
嬉しさが、
静かに広がっていく。
✦ ③ 家族の反応も思い返す──“受け入れられた安心”
秋川は、
父のぶっきらぼうな言葉を思い出す。
「……あいつ、悪くねぇ」
そして母の優しい声。
「麗奈、本当に嬉しそうだったわね」
その全部が、
胸の奥にじんわりと染みていく。
“……よかった……
北見さん、ちゃんと受け入れられた……”
その安心が、
今日一番の温かさになる。
✦ ④ ベッドに横になり、天井を見つめる
秋川はベッドに横になり、
天井を見つめる。
部屋の灯りは柔らかく、
静かな夜の空気が流れている。
「……次の土曜日……
また来てくれるんだ……」
その言葉を口にした瞬間、
胸がふわっと熱くなる。
頬が自然に緩む。
✦ ⑤ “恋人としての実感”が静かに深まる
秋川は、
玄関での北見の表情を思い返す。
・少し照れた笑顔
・迷いながらも伝えた言葉
・帰り際の「行ってきます」
その全部が、
胸の奥で静かに重なっていく。
「……好きだな……」
声に出した瞬間、
自分で驚いて
枕に顔を埋める。
でも、
その言葉は嘘じゃない。
✦ ⑥ 最後に、そっと目を閉じる
秋川は目を閉じ、
今日の温度を胸に抱いたまま
静かに息を整える。
“また会いたい”
その気持ちが、
静かに、確かに、
胸の奥で灯り続けている。
✦ 第198話
「北見、帰り道の余韻」
✦ ① 夜風が頬に触れ、胸の奥がふっと熱くなる
家を出た瞬間、
夜風が北見の頬を撫でる。
でも、
その冷たさよりも
胸の奥の温かさのほうが強い。
「……行ってきます、なんて……
俺、何言ってんだろ……」
思い返すと恥ずかしい。
でも、後悔はない。
むしろ──
言えてよかった。
✦ ② 歩きながら、秋川の表情が何度も浮かぶ
街灯の下を歩くたび、
秋川の表情がふっと浮かぶ。
・玄関での柔らかい笑顔
・「また来てくださいね」と言ったときの目
・「私も……会いたいです」と答えた声
その全部が、
胸の奥で静かに響き続けている。
北見は、
思わず小さく笑ってしまう。
「……ずるいな……
あんな顔されたら……」
言葉にならない気持ちが、
胸の奥でじんわり広がる。
✦ ③ 家族の言葉も思い返す──“受け入れられた実感”
歩きながら、
秋川の父の言葉がよみがえる。
「……あいつは、見た目よりずっと繊細だ」
「……なら、頼んだぞ」
ぶっきらぼうなのに、
あれは確かに“父親の本音”だった。
そして母の言葉。
「麗奈が……本当に嬉しそうだったわ」
その全部が、
北見の胸に深く残っている。
「……受け入れてもらえたんだな……」
その実感が、
歩く足を軽くする。
✦ ④ ふと立ち止まり、夜空を見上げる
交差点の手前で、
北見はふと立ち止まる。
夜空は静かで、
街灯の光が淡く滲んでいる。
「……また会いたいです」
自分が言った言葉が
頭の中で静かに響く。
そして、
秋川の返事。
「私も……会いたいです」
その一言が、
胸の奥で何度も反芻される。
北見は、
思わず空を見上げて
小さく息を吐く。
「……幸せだな……」
誰に聞かせるでもない、
独り言。
✦ ⑤ 歩き出す足取りは、来たときよりずっと軽い
家に向かって歩き出す足取りは、
来たときよりずっと軽い。
緊張も、
不安も、
全部今日の温度が溶かしてくれた。
“また土曜日に会える”
その約束が、
胸の奥で静かに灯り続けている。
北見は、
ポケットの中のスマホをそっと握る。
「……連絡、したいな……」
でも、
すぐには送らない。
秋川も、
きっと今、
今日のことを思い返しているだろうから。
✦ 第199話
「秋川、布団の中で連絡を待つ」
✦ ① ベッドに横になっても、胸の奥が落ち着かない
秋川は、
部屋の灯りを落とし、
布団に潜り込む。
でも──
眠気はまったく来ない。
胸の奥が、
ふわふわと温かくて、
落ち着かない。
「……どうしよう……
全然眠れない……」
そんな独り言が漏れる。
✦ ② スマホを手に取り、画面をつけたり消したり
枕元のスマホを手に取り、
画面をつける。
通知はない。
画面を消す。
でもすぐに、
またつけてしまう。
「……まだ帰り着いてないよね……
でも……もしかしたら……」
期待と不安が、
静かに胸の中で揺れる。
✦ ③ 玄関での北見の言葉が、何度もよみがえる
布団の中で目を閉じると、
北見の声がよみがえる。
「……また……会いたいです」
その言葉を思い出すたび、
胸がじんわり熱くなる。
「……私も……会いたいです」
自分が返した言葉も、
耳の奥で静かに響く。
思い出すだけで、
頬が熱くなる。
✦ ④ “連絡が来るかもしれない”という期待が、眠気を遠ざける
秋川は、
スマホを胸の上に置いて
天井を見つめる。
「……帰り着いたら……
連絡くれるかな……」
その期待が、
眠気を完全に追い払ってしまう。
でも、
焦っているわけじゃない。
ただ──
北見の声が、もう一度聞きたい。
それだけ。
✦ ⑤ スマホを握りしめ、そっと微笑む
秋川は、
スマホをそっと握りしめる。
「……北見さん……
今、何してるんだろ……」
帰り道を歩いているのか、
家に着いたのか、
まだ電車の中なのか。
どれでもいい。
ただ、
今日のことを思い返していてくれたら──
それだけで嬉しい。
✦ ⑥ ふっと目を閉じる──“待つ時間も幸せ”
秋川は、
スマホを胸に抱いたまま
そっと目を閉じる。
“待つ時間も……
こんなに幸せなんだ……”
その気づきが、
胸の奥で静かに灯る。
連絡が来ても来なくても、
今日の温度は消えない。
秋川は、
その温度に包まれながら
静かに息を整える。
✦ 第200話
「北見、家に着いてメッセージを送る」
✦ ① 部屋に戻った瞬間、今日の温度が一気に押し寄せる
玄関の扉を閉めた瞬間、
北見は壁にもたれかかる。
「……はぁ……」
緊張がほどけた息。
でも、疲れではなく、
胸の奥が温かく満たされていく息。
秋川の笑顔、
父の言葉、
母の優しさ。
全部が一気に押し寄せてくる。
✦ ② スマホを手に取り、メッセージ画面を開く
北見は、
迷いながらもスマホを開き、
秋川とのトーク画面を開く。
入力欄に指を置く。
でも、すぐには打てない。
「……何て送ればいいんだ……」
言いたいことはたくさんある。
でも、
どれも長すぎる気がする。
短く、
でも気持ちが伝わる言葉。
それを探す。
✦ ③ 何度も書いては消し、ようやく一行に落ち着く
「今日はありがとうございました」
→ 消す。
「ご家族の皆さん、優しかったです」
→ 消す。
「また会いたいです」
→ 玄関で言ったし……と消す。
そして──
ようやく、
胸の奥から自然に出てきた言葉が
一行にまとまる。
北見は、
その一行を見つめて
小さく息を吸う。
✦ ④ 送ったメッセージは、短くて、まっすぐ
北見が送信ボタンを押す。
画面には、
たった一行。
「無事に帰りました。
今日は本当に楽しかったです。」
短い。
でも、
嘘のない言葉。
秋川に伝えたい気持ちが
ぎゅっと詰まった一行。
✦ ⑤ 送ったあと、胸の奥がじんわり熱くなる
メッセージを送った瞬間、
北見はスマホを胸に当てて
小さく息を吐く。
「……送っちゃった……」
恥ずかしさと、
安心と、
期待が混ざった息。
でも、
後悔はない。
むしろ──
返事が来るのが楽しみで仕方ない。
✦ 第201話
「秋川、北見のメッセージを受け取る」
✦ ① 画面が光った瞬間、心臓が跳ねる
暗い部屋の中で、
スマホの画面がふっと光る。
秋川は、
反射的に息を呑む。
「……っ」
手が勝手に伸びる。
胸の奥が一気に熱くなる。
画面には──
北見の名前。
それだけで、
視界が少し滲む。
✦ ② メッセージを開く手が震える
秋川は、
スマホを胸の前に持ち上げ、
そっと画面を開く。
そこには、
たった一行。
「無事に帰りました。
今日は本当に楽しかったです。」
短い。
でも、
その短さの中に
北見の不器用さと、
まっすぐな気持ちが全部詰まっている。
秋川は、
思わず布団の中で小さく笑う。
「……よかった……
無事に帰れたんだ……」
安心が、
胸の奥にじんわり広がる。
✦ ③ “楽しかった”という言葉が胸に刺さる
秋川は、
その一行を何度も読み返す。
「……楽しかった……」
その言葉が、
胸の奥に静かに落ちていく。
玄関での表情、
帰り際の声、
全部が思い出される。
「……私も……
本当に楽しかったよ……」
声に出すと、
頬が熱くなる。
✦ ④ スマホを胸に抱きしめ、目を閉じる
秋川は、
スマホを胸にぎゅっと抱きしめる。
布団の中で、
小さく丸くなる。
「……北見さん……
今日、すごく頑張ってた……」
父の言葉にも、
母の優しさにも、
ちゃんと向き合ってくれた。
その姿が、
胸の奥で静かに光り続けている。
✦ ⑤ 返信を考える前に、ただ“嬉しさ”を味わう
すぐに返信したい。
でも──
今はまだ送らない。
この一行を受け取った嬉しさを
もう少しだけ味わいたい。
秋川は、
そっと目を閉じる。
「……また会いたい……」
その気持ちが、
胸の奥で静かに灯り続ける。
✦ 第202話
「秋川、眠る前の独り言」
✦ ① スマホを胸に置いたまま、静かに息を吐く
布団の中で、
秋川はスマホを胸の上に置き、
ふぅ……と小さく息を吐く。
今日の出来事が、
波のように胸の奥で揺れている。
北見の声、
表情、
家族の反応。
全部が、
静かに、優しく残っている。
✦ ② 目を閉じると、玄関での北見の顔が浮かぶ
秋川はそっと目を閉じる。
すると、
玄関での北見の表情が
ふわりと浮かぶ。
「……また会いたいです」
その声の震え。
その目の真剣さ。
思い出すだけで、
胸がきゅっとなる。
秋川は、
布団の中で小さく微笑む。
✦ ③ 誰にも聞こえない声で、そっと呟く
そして──
誰にも聞こえないほどの声で
ぽつりと呟く。
「……私も……会いたいよ……」
その言葉は、
北見に向けたものでもあり、
自分自身の気持ちを確かめる言葉でもある。
呟いた瞬間、
胸の奥がふわっと温かくなる。
✦ ④ 今日の北見を思い返し、頬が熱くなる
秋川は、
父と話す北見の姿を思い返す。
不器用で、
でも誠実で、
一生懸命で。
「……かっこよかったな……」
その一言を呟いた瞬間、
自分で恥ずかしくなって
枕に顔を埋める。
でも、
その恥ずかしささえ
心地よい。
✦ ⑤ スマホをそっと握りしめる
秋川は、
胸の上のスマホをそっと握りしめる。
北見のメッセージが
まだ画面に残っている。
「……また……会えるんだよね……」
その言葉に、
胸がじんわりと熱くなる。
✦ ⑥ 最後の独り言は、眠りに落ちる直前に
まぶたが重くなり、
意識がゆっくり沈んでいく。
その直前、
秋川は
ほんの小さな声で呟く。
「……好き……」
その一言は、
誰にも届かない。
でも、
確かに胸の奥に灯った
“恋人未満から恋人へ向かう気持ち”の証。
秋川は、
その温度に包まれながら
静かに眠りへ落ちていく。
✦ 第203話
「秋川、翌朝 母と話す」
✦ ① 朝の光の中で、昨日の言葉がふっとよみがえる
カーテン越しの柔らかい光が
部屋に差し込む。
秋川は布団の中で
ゆっくり目を開ける。
そして、
胸の奥にふわっと温かさが広がる。
「……また会いたいです」
「……私も……会いたいです」
玄関で交わした言葉が、
朝の静けさの中で
もう一度響く。
頬が自然に緩む。
✦ ② リビングへ向かうと、母が朝食を準備している
階段を降りると、
キッチンから味噌汁の香りが漂う。
母がエプロン姿で
朝食を並べている。
秋川の姿を見ると、
ふっと優しく微笑む。
「おはよう、麗奈」
秋川も小さく微笑む。
「……おはよう、お母さん」
✦ ③ 母は何も聞かず、ただ“様子”を見る
母は、
秋川の表情を見て
すぐに気づく。
“ああ、この子……
昨日の余韻が残ってるな”
でも、
すぐには何も聞かない。
味噌汁をよそいながら
穏やかな声で言う。
「よく眠れた?」
秋川は、
少し照れながら頷く。
「……うん。
なんか……あったかい気持ちのまま寝ちゃった」
母は、
その言葉にふっと微笑む。
✦ ④ 母がそっと切り出す──“昨日の北見のこと”
食卓に座り、
二人で味噌汁を飲んだあと。
母は、
湯呑みを手にしながら
自然な声で言う。
「北見さん……
帰ってから連絡くれた?」
秋川は、
一瞬だけ驚いて、
すぐに頬を赤くする。
「……うん。
無事に帰ったって……
楽しかったって……」
母は優しく頷く。
「そう。
よかったわね」
その“よかったわね”には、
いろんな意味が含まれている。
・安心した
・嬉しい
・ちゃんと向き合ってくれている
・あなたの気持ちも伝わってる
全部。
✦ ⑤ 母の言葉は短いけれど、深い
母は、
味噌汁を一口飲んでから
静かに言う。
「麗奈。
……大切にしなさいね」
秋川は、
その言葉に胸がじんわり熱くなる。
「……うん。
大切にする」
その声は、
迷いのない声。
母は、
その答えに満足したように微笑む。
✦ ⑥ 最後に、母がそっと背中を押す
食器を片づけながら、
母はふっと言う。
「次の土曜日……
また来るんでしょ?」
秋川は照れながら頷く。
「……うん。
来てくれるって」
母は優しく微笑む。
「じゃあ、また何か作っておくわ」
その言葉は、
“家族として迎える準備”
そのもの。
秋川は、
胸の奥がふわっと温かくなる。
「……ありがとう、お母さん」
✦ 第204話
「二人、朝のメッセージ」
✦ ① 北見は、送るか迷いながらスマホを手に取る
朝の光が差し込む部屋で、
北見はコーヒーを飲みながら
スマホを手に取る。
昨日の温度がまだ胸に残っている。
「……朝に送るのって、どうなんだろ……」
迷う。
でも、
送りたい気持ちが勝つ。
短く、
負担にならない言葉を探す。
そして──
指が自然に動く。
✦ ② 北見からの朝のメッセージ
北見が送ったのは、
たった一行。
「おはようございます。
昨日は本当にありがとうございました。」
丁寧で、
少し固い。
でも、
北見らしい“誠実さ”がにじむ一行。
送信ボタンを押したあと、
胸の奥がふっと熱くなる。
✦ ③ その頃、秋川は母と話し終えて部屋に戻る
秋川は、
母との会話を終えて
自室に戻る。
スマホを手に取った瞬間──
画面が光る。
北見の名前。
胸がきゅっとなる。
✦ ④ 秋川、メッセージを開く
秋川は、
息を整えてから
そっとメッセージを開く。
「おはようございます。
昨日は本当にありがとうございました。」
その丁寧さが、
逆に愛おしい。
秋川は、
思わず小さく笑う。
「……北見さんらしいな……」
胸の奥がじんわり温かくなる。
✦ ⑤ 秋川の返信は、少し柔らかい
秋川は、
スマホを両手で持ちながら
ゆっくり文字を打つ。
「おはようございます。
こちらこそ……
昨日は本当に嬉しかったです。」
“嬉しかった”
その一言を入れるか迷った。
でも、
入れた。
それが今の気持ちだから。
送信ボタンを押すと、
胸がふわっと軽くなる。
✦ ⑥ 北見、すぐに画面を見てしまう
北見は、
コーヒーを飲んでいた手を止めて
画面を見つめる。
秋川の返信。
「……嬉しかった……」
その一言が、
胸の奥に静かに落ちる。
北見は、
思わず小さく笑う。
「……よかった……」
声に出してしまうほど。
✦ ⑦ 二人の朝は、静かに、でも確かに近づく
短いメッセージ。
たった数行。
でも──
その数行が、
二人の距離を
昨日より少しだけ近づける。
朝の光の中で、
二人の胸には同じ温度が灯っている。
✦ 第205話
「秋川、通勤途中で北見を思い出す」
✦ ① 朝の光の中、胸の奥がふわっと温かい
家を出て、
朝の光を浴びた瞬間。
秋川は、
胸の奥がふわっと温かくなるのを感じる。
「……昨日のこと、
まだ夢みたい……」
歩きながら、
自然と頬が緩む。
✦ ② 交差点で立ち止まると、北見のメッセージが浮かぶ
信号待ちの間、
ふとスマホを取り出す。
画面には、
今朝の北見のメッセージ。
「おはようございます。
昨日は本当にありがとうございました。」
その丁寧さが、
胸の奥にじんわり染みる。
秋川は、
小さく笑ってしまう。
「……ほんと、北見さんらしい……」
✦ ③ 歩きながら、昨日の玄関のシーンがよみがえる
横断歩道を渡りながら、
昨日の玄関の光景がふっと浮かぶ。
・「また会いたいです」と言った北見
・それに答えた自分
・帰り際の「行ってきます」
・「行ってらっしゃい」と返した自分
思い出すだけで、
胸がきゅっとなる。
「……あんな顔で言われたら……
好きになっちゃうよ……」
誰にも聞こえない声で呟く。
✦ ④ 電車の窓に映る自分の顔が、少しだけ柔らかい
電車に乗り、
窓に映る自分の顔を見る。
いつもより、
少しだけ柔らかい表情。
「……なんか、変だな……
でも……悪くない……」
昨日の温度が、
まだ頬に残っている。
✦ ⑤ ふと、次の土曜日のことを考えてしまう
電車が揺れるたび、
次の土曜日のことが頭に浮かぶ。
「……また来てくれるんだよね……」
その言葉を思い出すだけで、
胸がふわっと熱くなる。
・何を着よう
・どんな話をしよう
・家族はどう思うだろう
・北見はどんな顔で来るんだろう
考えることが増えていく。
でも、
その全部が嬉しい。
✦ ⑥ 最後に、小さく呟く
電車が目的地に近づいたころ。
秋川は、
窓の外を見ながら
小さく呟く。
「……早く会いたいな……」
その一言は、
誰にも届かない。
でも、
確かに胸の奥に灯った
“恋人へ向かう気持ち”の証。
秋川の朝は、
静かに、
でも確かに
昨日より少しだけ明るい。
2026/05/30 00:10